表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掛け替えのない日常

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

震災でお亡くなりになられた方々、ご冥福をお祈り致します。

何があっても後悔が無いように生きようと思います。

私が過ごしている日常は、とても大切な事で、掛け替えの無いものなのだと、天災が起こる度に突きつけられる。

今日が安全でも、明日は? 明日は安全でも、明後日は? 何処にも保証なんてなくって、何時、物に殺されるかなんか分からなくて、怖くて布団に蹲った。大好きな場所も、人も、離れられない故郷だからこそ、考えたくない。考えたらもう、不安で眠れない。

その翌日、乗り換えをする為の通路を辿っていると、神社の表札が目に入った。真っ赤な金魚が釣り上げられていた。その夜は家が壊れてしまいそうな暴風雨で、またも胸を抱える様にして眠りに着いた。それが幾日も続いた。


「おっせぇ」

「……」

鳥居を潜ったその先、賽銭箱に腰掛ける、生ける修羅。飆靡様。御方は相変わらず鋭い目付きで此方を見据えていた。

呼ばれていると思ったのだ。呼び方は分かり易くも、乱暴な呼び方をするから。言うならば幼子が手足をバタつかせて、駄々を捏ねる様な。火がついた様な癇癪を起こす様な。でも行くと何時もこんな感じである。行って当たり前、来て当たり前、行かないと暴れる。そんな方だった。

「なにかご入用が?」

「お前は自分の心配だけしてろ。足りねぇ頭で他のこと考えんな」

それだけ仰ると、さっさと社の中へ戻って行った。恐らく定期的に私の様子をご覧になりたくて呼んだだけらしい。

まぁ、用が無いならさっさと帰ろう。そう思って道を歩いていたら、視界を遮る様に一枚の羽が。それが幾重にもぱらり、ぱらりと舞い落ちる。

「やぁ、久しぶり。思ったよりも元気そうだね」

整った顔に傾けられた天狗の面、髪を束ねる髪飾りは椿印。御方の名は耐冬花様。御方は伸ばされた羽を小さく折り畳むと、ずいっと顔をお近付けになる。

「何時も……元気ですよ」

何も無いところで転んだり、変な人に絡まれたり、そんな事は些細な事。些細な事なんだ。天災で、全てを奪われない限り。日常を歩める時点で。

でも……でも……そんな日常を一瞬にして奪われたら、大好きな場所が、人が失わされたら、一体何を恨めば良いんだろう。

「元気ないじゃない。君のその不安げな顔知って、真っ先に飆靡……様が飛び出して行ったんだよ。誰よりも早く、全てを牽制して」

「……怖いのです。大好きな場所が、人が、一瞬にして瓦礫の山になるのが……。何もかも飲み込まれてしまうのが……」

実際にそこまでの危機に晒された事は、幸運にもない。ないけれども、それはただ今まで運が良かっただけ。ただそれだけ。だからどれだけ言葉を重ねても、実際に全てを奪われた人達の気持ちを本当の意味で理解する事は出来ない。理解しようとしたら、多分、途中で折れてしまう。

「慰めにならないかも知れないけど、君が今日訪れた飆靡様の社は、終戦まで持ち堪えた。君が崩壊を不安がる五輪塔は、周り全てが瓦礫と化しても持ち堪えた。『君が心配しなくても、降り掛かる火の粉は全部自分で払う』。皆総じてそう言ってる。だから……」

「うぅ……」

「……泣かないでおくれよ……」

天災の嫌なところは誰も憎めないところ。

前回が大丈夫でも、今回が大丈夫とは限らない。

本当にただただ、やるせない。

ニュース見る度に、そう思います。

とりあえず、後悔しない生き方をしていきたいです。


そんな風に思ってフラフラしていたら、

終戦まで完全体で社が残りました。

震災が起きても、五輪塔は無事だった。

耐震設計を致します。

と言う張り紙や、画像を見ました。


「降り掛かる火の粉は自分で守る。だから案ずるな」

「お前が愛すべきこの場所は、何を持ってしても守り抜く」

と言われている気がしました。

結局、私はこの言葉に縋るしかないんです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ