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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
消えた彼女を見つけだして連れ帰るまで
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第99話_プレゼント

誕生日パーティなんて生まれて初めてだった。

みんなに祝ってもらうことがこんなに嬉しいなんて、思ってなかった。


「こちら葵お嬢さまが直接、青山のフランス菓子職人にオーダーした特製の......」

松井さんがなにか言いながら、大きな箱をもって和室に入ってきた。


「松井!よけいなことは言わなくていいから」


松井さんは大きな箱をお膳の中央においた。

「これってもしかして」

「光一、箱を開けてみて」

葵に急かされて、俺は大きな箱の蓋をそっと持ち上げた。


「まじか!!すごい」


箱の中には丸いケーキが入っていた。

宝石みたいにツヤツヤと輝く真っ赤なイチゴに純白の生クリーム。

大きなプレートに「光一たんじょうびおめでとう」と書かれている。


「......ヤバいって。まじで泣けそう」


蝋燭の火を吹き消し、みんなの拍手を浴びる。

「今日のこと、わすれない」


優香からは学食でつかえるマネーカード。

豆次郎からは駅前カフェのドリンクチケットを誕生日プレゼントとしてもらった。


「ありがとう。こういうの、助かるわー」

みんな俺が貧乏だと分かっていて、こういうものをくれる。

嬉しい。


「光一はホントがんばったよ。葵を連れ帰ってくれたんだから」

優香が俺に向かってほほえんだ。


「般若のお陰でもあるんだけどね」

優香と豆次郎の二人には、葵をみつけてこの世界に連れ帰るまでの話しを、すでに聞かせていた。

般若が俺の分身だということも二人は知っている。



「光一。あたしからは、これだ」

葵が袋を俺に差し出す。


「ケーキや寿司だけで十分なのに」


葵の差し出した袋から中身を取り出した。

なかには、水色のシャツが入っていた。


「光一のシャツ、ボタンが外れてボロボロだ。気になっていたんだよ」

俺のシャツはニセ葵にボタンを壊されて、ボロボロだった。

上着を着てるから大丈夫かと思っていたんだけど、葵は気になっていたんだな。


「葵.......ありがとう!このシャツ、一生着る」

「い、一生は着なくていい!また買ってあげるから」


「わたしはこれで」

松井さんが部屋から出ていこうとするので、俺は引き止めた。

「松井さんも食べましょうよ。こんなに食べ切れないと思うし」

「いや、でも」


「松井も食べよう」

葵が言うと、松井さんは素直に席についた。

-------------------


みんなで寿司を食べながらいろいろと話した。

般若の世界のロボットの話とか、氷河期の世界で起きたこととか。


「豆次郎!それビール?」

俺は豆治郎が飲んでいる液体を指さした。

「豆次郎、まだ未成年じゃないの」

「豆くんは浪人してるから、もう20歳なのよ」

優香がすました声で言う。


「なんだよ。年上だったんだ」

そういえば俺は豆次郎のことを何も知らない。

出身地も、出身の高校も、どこに住んでるのかも。


「豆次郎って今、どこに住んでんだ?」

俺が聞くと豆次郎は目をそらした。

「豆くんは、妹さんと住んでるのよ。あたしも遊びに行ったこと無いんだけど......」

優香が豆次郎を上目づかいで見る。


「へえ。妹がいるのか?もともと都内出身?」


「まぁ......そうだよ。だけど引きこもってたから都内に詳しくないけど」

豆治郎がすこし緊張した声で答えた。

「ふぅん。都内のどのへんに住んでんだよ?」


「光一、飲め!」

豆治郎が急に俺にビールの入ったコップをよこした。

「えっ!俺は未成年だし無理だよ。それに異様に酒に弱いんだ」


「そんなことでどうする。練習しといたほうがいい」

「豆くんやめたほうがいいよ。光一はほんとに弱いんだから」


「光一。飲んでみて」

葵が急に言いだした。

「えっ......葵?」

「山口先輩の前で酔っ払ったんだよね。

あたしも見てみたい。光一の酔っ払った様子を」

「えっ!?なにそれ?どういうこと?」


「葵は嫉妬深いのよ。

光一の酔っ払った姿をあたしだけが知ってるというのが許せないの」

優香が葵の頭をなでながら言う。


「ち、ちがう。ちょっと興味があるだけだ。ほんとに記憶をなくすほど酔っ払うのかどうか」


「葵のお願いなら、俺はビールを飲む」

そういうと豆次郎のよこしたビールをぐいっと飲んだ。


------------------


「光一がおかしくなってる」


遠くに葵の声が聞こえた。

やっぱりだめだ......ビールなんか飲むんじゃなかった。

あれほど、「もう飲まない」って誓ったのに。


「葵......好きだ、愛してる」

俺は葵を抱きしめた。

「かわいい」


「か、樫谷さん......私です。松井です。しっかりしてください」


「驚いたわ。光一が松井さんに抱きついてる」


「もう......離さない」

ぎゅっと力強く抱きしめた。


「お、お嬢さま、助けてください」

「松井。悪いが光一は力が強いから、あたしにも引きはがせるかどうか自信がない」


「光一は酔うと、そばにいる人間が葵に見えるのね」

「この調子で山口先輩にも酔っ払って抱きついたんだな。

もう二度と飲ませないほうがいいってことが分かった」


「それで?訓練の方はどうだった?馬鹿力を発揮できた?」

「ダメだった。あたしがピンチにならないと、馬鹿力を発揮できないって......そう言ってた」


どうしてだろう。

遠くから葵の声が聞こえる。

葵は俺の腕の中にいるのに。

どうして声は遠くから聞こえるんだ?


葵、ちょっとゴツゴツしていて抱き心地が悪い。

だけどかわいい。


「酔うと誰彼かまわず葵だと思って抱きつくし、馬鹿力は葵のためだけに発揮する。

葵はほんとに、光一に愛されてるのねぇ」

優香の笑い声が遠くから聞こえてきた。

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