第97話_テスト勉強と訓練
葵も俺も、長いこと大学を休んでしまったから、単位がヤバかった。
出席をとる授業では、当然だけど長いこと欠席扱いにされてしまっている。
それでも、テスト期間中にがんばれば、大きな問題にはならない......かもしれない。
そんな状態だった。
部活が終わって、葵に話しかけた。
「葵。今日バイト無いんだ。デートしようよ」
「だめだ!図書館で勉強しよう」
「えー?また図書館かぁ。俺はいつになったら葵とデートに行ける?」
「テストが終わって、春休みに入ったらね」
葵が俺に微笑む。
葵と一緒に図書館へむかう。
俺は、図書館の静寂が苦手だった。
勉強しだすと、急激に眠くなるんだよなぁ。
なにか勉強を頑張るためのモチベーションがほしい。
「休みになったら葵と一緒に旅行したい!」
「り、旅行?」
葵が目を大きく見開いて戸惑う。
「うん。長野とか山梨とかそっちのほう!よく分かんねーけど、自然豊かなところ」
「......それなら、うちの別荘が軽井沢にあるけど」
葵がぼそっと言う。
「えっ!?別荘!?さすがはお嬢様だな」
「山口先輩と豆治郎くんも一緒なら、光一も来てもいいぞ」
「なんだよ、俺はついでか」
図書館の建物に入った。
試験前だからか、けっこう席が埋まってる。
「ふぁあ~、もう眠くなってきた」
生ぬるい空気と書物の匂い。
それに生気のない目の学生たち。
気だるい時間の始まりだった。
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やがてテスト期間が終わった。
葵は余裕だったみたいだけど、俺は結構ボロボロだった。
(2年で、なんとか取り戻さないと、この先ヤバい.......)
必須科目では再履修が必要な科目もいくらかありそうだ。
(まぁ、いいや~!終わったんだ。羽根を伸ばそう)
大きく伸びをする。
「葵~!終わったな!とうとうデートできる」
葵はカフェテリアで珈琲を飲みながら俺を待っていてくれた。
「優香たちは?」
キョロキョロと見回したが、優香と豆治郎の姿はなかった。
「二人きりになりたいって。帰っちゃった」
葵が肩をすくめる。
俺にとっては好都合だった。
「やった!あいつらいないほうがいいよ。
葵、行こう!まずはなんか、食べよう」
葵の腕を引っ張る。
「光一!うちにこない?」
葵が俺をじっと見上げて、そう言った。
「えっ!?葵の家に!?」
ドキッとして葵の顔を見る。
(えっ?でも葵の家ってあの大きなお屋敷だよな~。
俺は葵の部屋に入ったこと無いんだよな。
葵の部屋で二人きりになれるかも?
てか、この誘い方は、そう言うことだよな。
二人きりになりたいって。
そう言ってるも同然。
うわ~~。やっべ。緊張してきた)
「なにをうろたえてる?」
葵が不思議そうに俺を見上げた。
「いやっ。なんか、うれしくて」
俺はあわてて頭をかいてごまかした。
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「葵......待って。無理。痛いって」
俺は、葵に腕の関節をキメられ畳の上に引き倒されていた。
葵は、自分の屋敷に俺を連れてくると、さっそく自宅道場に案内してくれた。
「すげーな。自宅に道場って」
「むかしは教室もやっていて、生徒さんなんかもいたんだが。
爺さんが亡くなってからは、教室は閉室したんだ」
「へー」
俺は道場をキョロキョロと見回す。
だだっ広い畳が広がっていて、奥には床の間。
床の間には甲冑と刀が飾られていた。
「さぁ。光一、戦いの訓練をするぞ」
「へっ!?く、訓練!?」
葵は、いきなり俺に向かって突進すると、腕をひねり上げ関節をキメたのだった。
「痛いって。ムリムリ」
葵は畳に引き倒された俺の背中に膝を立てて、手首をひねり上げてくる。
「馬鹿力は発揮しないのか?」
「あれは、葵がピンチにならないと発揮されないみたいなんだ」
必死に片手て畳を叩く。
勘弁してくれという合図だ。
だが葵には通じない。
(久しぶりだな。葵に暴力を振るわれるの)
痛みに耐えながらも、少し楽しんでいる自分がいた。




