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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
消えた彼女を見つけだして連れ帰るまで
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第92話_脅される

「命令でも何でも聞く!だからいますぐに、ここから出して欲しい」

俺は檜山礼子と名乗る女刑事に懇願した。


「あなた、ちょっと頭が弱いみたいだから、念押しするけど。

もしも、あなたが我々に逆らったり、命令に従わないようなことがあれば

この動画をネットに流す。......分かってる?」


俺は女の目を見てコクリとうなずいた。

「そんなもん、流せばいいよ」

俺がそう言うと、女は「はぁあ~」とため息を付いた。


「やっぱりあなた、頭が弱いわね」

「うるせーな。なんなんだよ」


「警官に歯向かったり、病院でポータルのことをべらべら喋ったり。

ほんとに後先考えない、お馬鹿さんなのねぇ」


檜山礼子は俺の頬を触り、アゴに手を滑らせた。

「ものすごくカッコいいのに、頭は弱い......」

女は俺のシャツの襟を引っ張って、自分の方に俺を引き寄せた。

檜山礼子の鼻と俺の鼻がいまにもくっつきそうなくらい接近した。


「俺とキスしたいの?俺はしたくないから、やめてくれよな」

「アハハハ!」

檜山はなぜか大笑いすると、すぐに真顔に戻った。


「頭は弱いけど、ポータル管理者。もちろんトラベラーでもある」

檜山は、椅子をガタッと言わせて立ち上がった。


「いい?回転寿司で無銭飲食した動画をネットに流されれば、あなたの人生は終わりよ?」

「どうしてだよ」

俺は首をかしげて檜山を見上げた。


「ネットの動画は永遠に残り続けるのよ。

就職のときも結婚のときも、ネットの動画があなたの足を引っ張り続けるわ。

あなたに子どもが出来ても、孫ができてもネットの動画は残り続け影響をあたえる」


「そうなんだ」

俺にはよく分からなかった。

ネットの動画はたしかに消しても、消しても、誰かが保存すれば残り続けるだろう。

だけど、そんなもの、すぐに忘れさられるんじゃないのか?

そんな風に思った。


檜山は再びため息をつくと、俺の方に向き直った。

「それじゃこれはどう?

この動画を証拠品として提出すれば、あなたは大学退学処分。

拘置所に送られ1年くらい出られない」

「それは困る!」

俺は焦った。

そんなに閉じ込められるなんて、思っても見なかった。


「それだけじゃないわよ。拘置所のあとは実刑がくだされて刑務所に送られる。

そこでも数年は閉じ込められることになる」


「数年!?そんなに?」

まさかそんな大事になってるとは思わなかった。


「あたしが圧力をかければ、いくらでも刑期は伸びる」

「圧力?」

「そうよ。それが嫌なら......そして、今すぐにでもここから出してほしければ、

我々の言うことを聞きなさい」


「だからさっきから聞くって言ってんだろ!何をすればいいか、早く言えよ」

俺は檜山にむかって必死に叫んだ。


--------------------


【葵】_軍服ヤロウの話


「穴がない!」

軍服ヤロウは、自分の故郷につながるポータルがあったはずの壁を、必死にさすっていた。


「ここに......たしかに穴が空いていたはずなのに!」


おそらく、般若がポータルを閉じたんだろう。

あいつはいったいどこに行ったんだ。

あたしはキョロキョロと視線をはしらせたが、般若の姿は見つからなかった。

もちろん光一の姿も。


あたしは、軍服ヤロウに、手足をひもで縛られていた。


「葵。どうして穴が無くなったのか......わかるか?」

あたしは首をぶんぶんと横に振った。

「知らない」


軍服ヤロウは「ふぅ」とため息をつくと、あたしのそばに座り込んだ。


「まぁ、いい。焦っても仕方ないよな。

もしかしたら、時間で穴が開いたり閉じたりするのかもしれないし。

俺はじっと待つのは得意なんだ」


軍服ヤロウはあたしの顔をじっと見た。

「葵。どうしておまえはそんなに可愛いんだよ」


あたしは、軍服ヤロウから目をそらす。

「かわいくない!バカなこと言うな」


「俺のこと、嫌ってるんだよな。

ちょうどいい。穴がふたたび開くまでのあいだ、俺のことをもっと知ってもらおう」

軍服ヤロウはそう言うと自分の過去を話し始めた。


「俺は親に軍隊に売られた。

よくあることだ。貧しい家庭では、栄養分になるために家族を施設に送り出すか。

それとも軍隊に入って民間人の統率や食糧の奪い合いをおさめる軍人になるか。

ふたつにひとつだからな」


「へぇ」

あたしは、軍服ヤロウから目をそらしたまま、相槌をうった。

ヤツはまだあたしをじっと見ている。

痛いほど視線を感じていた。


「悲惨な過去を話して同情してもらおうっていうんじゃないよ。

俺は人殺しだし、拷問もしてきたし、自分が生き残れれば他はどうだっていいて思ってた」


「お前の世界は......厳しい世界だからな」

あたしがそう言うと、軍服ヤロウは、うれしそうに目を細めた。


あたしは軍服ヤロウに同情したわけじゃない。

だけど、あの世界にいたら、そういう風に生きるしか無かったのかもしれない。

そんな風に思えた。


達治も......達治もそんな風になってしまうんだろうか。

だけど、それが運命なら、仕方ないんだろうか。


「だけど、葵。

葵をみたときから、変わったんだ。

自分以外にも大切なものがあるって。そう思えた。

出会ったばかりなのに、どうしてだろう......自分でもわからないけど」




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