第88話_侵入者
「た.....たすけてくれ」
廊下に倒れている男の一人が葵の方に手を伸ばした。
「大丈夫ですか?何があったんですか!?」
「とつぜん、やられたんだ」
「だれに!?」
俺も、倒れている男の方に駆け寄った。
「く、くるなっ」
男は俺の顔をみると、急にそう叫んだ。
「えっ?」
男は、四つん這いになって、俺から遠ざかろうと必死になっている。
「どういうことだ......」
「大変な騒ぎだな。全ては俺のせいだ」
後ろから般若の声が聞こえた。
「般若のせいって?どういうことだよ」
俺が驚いて聞くと、
「説明はあとだ。負傷者全員を1143H-Cに運ぶ。
光一、歩けないものを運ぶのを手伝ってくれ。
俺は1143H-Cの研究室に緊急医療カートを呼んでおく」
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俺はポータルを何往復もして負傷者を運んだ。
歩けないほどの負傷者はほんの数人だったので、なんとかなった。
般若は、1143H-Cに戻って、病院の手配をしているようだった。
葵は、残った怪我人の手当をしていた。
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「ふぅ。全ての負傷者を運び終わったな」
「運ぶとき、俺の顔を見て怯えるヤツが多かったんだけど。
どういうことだろう」
般若はうつむいた。
「俺のせいだ」
「どういうこと!?」
葵が般若に詰め寄る。
「1223H-Aへのポータルを閉じるのを忘れていた」
「えっ?1223H-Aって」
「そうだ......。氷河期の世界と繋がっているポータルだ」
「まさか」
葵が目を見開く。
俺はわけが分からなくて、葵と般若の顔をキョロキョロとみくらべた。
「まてよ。どういうことだか、俺にも説明しろ」
「氷河期の世界の光一が、あたしたちを追って、この世界にやってきてるのよ」
葵が叫んだ。
「えっ!?軍服ヤロウが?」
「そうか.......あたしも光一も大量に血を流していた。
アイツはその血のあとをたどって、洞窟の中のポータルを見つけたんだ。
ポータルを通って、この秘密基地にたどり着いた。
だけど秘密基地の血のあとはキレイに掃除されてるから、あたしたちを見失った。
アイツは怒り狂った。
あたしや偽物の光一がどこにいるのか?とキレて暴れたんだ」
「そういうことか」
達治や春樹さんと別れたあの洞窟。
あの洞窟内のポータルが開いたままだったのか。
「すまない。すぐにポータルを閉じるべきだった。俺のミスだ」
般若がふるえる声で言う。
「仕方ないよ。葵も俺も大怪我を負っていたんだし。あのときはパニクってたから」
「アイツ......軍人の光一は、今どこにいるんだろう。
まさか俺たちを追って、般若の世界に行ったってことはないか?」
「それは無いだろう。俺の世界へのポータルがある個室は、内側から鍵をかけておいたはずだ」
「そうだな。そういえば、鍵がかかってた」
「それじゃ、軍人の光一は、今どこに?」
葵が不安そうな声で聞く。
「この施設にはいないみたいだな。おそらく外に出たんだろう。
早く止めないと、この世界で犯罪でも起こされたら大変だ」
般若が立ち上がった。




