第81話_【葵】告白したことを思い出す
般若から話をいろいろと聞いた。
般若はこの世界のあたし......桜沢葵と出会って人生が一変したらしい。
それまでやる気がなく、ボンヤリと生きるだけだった自分に、葵は一筋の光を与えてくれた。
般若はそう言っていた。
この世界の葵と出会ってから、般若は脳に埋め込み手術をしてIQを高めたり、ポータルを操って別の世界線を調査したり......いろいろと活動してるそうだ。
「俺と葵はすべてにおいて相性が良いんだよ」
と言う。
なんでもこの世界の最新技術では相性の良い者同士を引き合わせてカップルにする制度があるらしい。
だから他の世界線の光一や葵のことも幸せにしたい。
二人を出会わせて、人生を良い方向にしてあげたい。
般若はそんなことを考えて実行していたようだ。
「そんな......勝手に他の世界線にまで、ちょっかい出さなくても良い気がするけど」
「それなら葵。光一に出会わなかったほうが良かったって思う?」
般若が片ほうの眉をあげながら、あたしの顔を覗き込んだ。
「......うっ」
あたしは言葉に詰まる。
「俺が光一と君を出会わせた......。
人為的なようだけど、これも実は運命の歯車の一つなんだよ。
結局のところ、すべで決められたことなのかもしれない」
般若はそうつぶやいた。
「あたしには、あんたの言ってることよくわからないけど。
だけど.......その......」
「なに?」
般若が首をかしげる。
「その......ありがとう。光一のことも、あたしのことも助けてくれて。
この世界の医療技術に助けられた。
ここに連れてきてもらえなかったら、光一は指を失ってた」
般若はあたしが頭を下げると、嬉しそうに笑っていた。
あたしはカフェオレを飲み干すと立ち上がった。
「あたし、光一が目を覚ますまであいつのそばにいる」
「そうか。俺はいったん研究室に戻る。
あまりここで、葵と話してると、俺の葵がヤキモチを焼くかもしれないし」
般若も立ち上がった。
「元の世界にもどるときにまた、俺の力が必要だろう。
また後で会おう」
あたしは、達治にもう一度会いたかった。
般若に頼めば、再びあの「氷河期の世界」に連れて行ってもらえるだろうか。
それを聞こうとしたけれど、般若は急ぎ足で立ち去ってしまった。
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カプセルの中で眠っている光一の顔を見る。
すやすやと眠っている。
「光一......」
カフェテリアから持ってきた白湯を小さなテーブルに置いた。
光一が目を覚ますのが待ち遠しいような、恥ずかしいような気がする。
あたしは消える直前に、光一に自分の気持ちを伝えた。
「あたしも光一のことが大好きだ」
たしかそう言ったんだっけ。
「最初から好きだった」
というようなことも伝えた気がする。
光一はバカだから、忘れてくれてると言いけど。
そんなことを考えながら、あたしはじっと光一の顔を眺めていた。




