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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
消えた彼女を見つけだして連れ帰るまで
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第80話_【葵】般若との会話

「葵の意識が戻ったって?」

コンクリートの壁が左右に別れて、今度は光一が部屋に入ってきた。


「光一......!」

光一は白いシャツに紺色のスラックスを履いていて、ビシッとしていた。

落ち着いた表情でこっちをじっと見ている。

表情があたしの世界の光一とは違う。

なんだか、頭が良さそうに見えた。


「あんたは、この世界の光一ね?......こっち見ないでよ」

あたしは慌てて布で身体を隠した。

「あぁ......ごめん。葵のハダカなら見慣れてるんだけど」

そんなことをブツブツとつぶやいてる。


「はやく服をよこせって言ってるのよ」

あたしは医療用ボットにむかって叫んだ。


---------------------


あたしは下着と白いワンピースを渡されて、それを身に着けた。

着替えてる間、「賢そうな光一」は壁のほうを向いてくれていた。


着替えが終わるとあたしは早速、ヤツに声をかける。

「ちょっとあんた!聞いてる?あたしは、あたしの世界の光一に会いたいの!」


「アハハ。あんた呼ばわりは嫌だな。でも名前がややこしいね。

俺のことは......そうだな。般若って呼べば良い。光一も俺をそう呼ぶし」


「般若.....。般若のお面の男......。光一から聞いたことがある。

あんたがそうだったんだ。......そんなことはどうでもいい!光一に会わせてよ」


「まだ治療が完全に終わってない。会うとショックを受けるかも」

般若はそう呟いた。


-------------------------


「光一......光一!!」


光一は、あたしの斜め前の個室にいた。

あたしと同じように、透明のカプセルに入れられている。


「こ、光一の指が」


彼の右手の指は親指、人差し指、中指の3本が異様に短かった。

それに腕には骨が見えるほどの深い傷を負っている。


「光一はどうなってるの?寝てるだけじゃない!治療してるの?

医者はいないの?」


「落ち着くんだ。葵」

般若はあたしの両肩に手をおいた。


「この医療カプセル内で、組織の再生が着々と行われている。

この世界では、医療行為はAI.....つまり人工知能がすべて行う。

人間の医者というのは、いないんだよ」


「組織の再生?」

あたしはわけが分からなくて、般若に聞き返した。


「そうだ。失われた3本の指も急ピッチで再生が進んでいる。

あと5時間もすれば、完全に彼の指は元通りになるよ。

君たちの世界の技術では不可能だったと思う」


「......っ......」

あたしの目から涙が流れ落ちた。

光一は、あたしを守るためにこんな傷を負っていたんだ。

バカだ。光一はバカだ。

あたしのことなんか捨てて、自分だけ逃げればよかったのに。


「素手で何か鋭利なものを掴んだんだろうね。スパッと切れている」

般若は医療用ボットのようにパネルを空中に表示させて、画像を見ている。

「切断面が鮮やかだ。

心配なのは、眠りが深いこと。意識レベルの低下が見られること」


「光一は、馬鹿力を発揮すると、しばらくは、ぐっすりと眠り込むんだ」

あたしは前に光一が馬鹿力を発揮したときのことを思い出していた。

あのときはウチの和室で数日間は眠り続けていた。


「馬鹿力?」

「そうだよ。異常な力だ。男を片腕で投げ飛ばし、壁に叩きつけるような力だよ」


「なるほどな」


--------------------


光一の身体が回復し、目覚めるまで、まだまだ時間がかかるという。

あたしと般若は、医療施設のカフェテリアのような場所で向かい合って座っていた。


氷河期が起きている世界線から、あたしを探すために、般若が協力をしてくれたことなど、聞き出した。



「光一の馬鹿力は非常に興味深い現象だ」

般若はそう言いながら、空中に浮かべたパネルに何かを入力している。

パネルには数式がたくさん書かれていた。


「なぜ、般若はそんなふうに賢いんだ?光一と同じDNAのはずなのに......」

あたしは疑問に思ったことを口にした。


「あぁ......」

般若は、あたしのほうをじっと見ながら、コンコンとこめかみを叩いた。

「メモリを増設してるんだ。脳に埋め込み手術をしてる。

それで、IQがあがっている」

「なにっ!そんなことが可能なのか」

あたしは息を呑む。


「この世界の金持ちはみんなやってる。運動能力を高めるやつもいるし、弱った臓器を交換する者もいる。法律である程度の制限はあるんだけどな」


「そうなのか」

あたしはこの世界の「カフェオレ」を飲んだ。

光一は「白湯」を飲みたがるんじゃないかな。

早く光一に白湯を飲ませてあげたかった。


「俺は、脳のメモリを増やしたせいだろう。

その原始的な馬鹿力を発揮する能力を失っている。

何かを得れば、何かを失うってことなんだろうな」

般若はそう言いながら、ひとりうなずいていた。


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