第77話_覚醒
葵が......。
葵が死んでしまう!?
背中から血が出てる。
血は地面にも、じわじわと広がっている。
そんな......。
やっと。
やっとのことで見つけ出したのに。
葵は一度、俺の目の前から文字通り「消えた」
今度は俺の目の前で血を流して死にそうになってる。
愛する人を失うのは一度だって、じゅうぶんツラいのに。
どうしてこんな目に、何度も合わなくちゃいけないんだ。
苦しそうにうめく葵の顔を見た。
そのとき、俺の中でなにかが切れた。
前にも感じた感覚。
あれは......たしか優香を探していたとき。
男たちに囲まれたときに、俺は......。
俺は今回、意識を失わなかった。
兵士が、俺に向かって剣を振り下ろす。
その動きが、なぜかスローモーションに見えた。
とっさに、女たちが投げたレンガを素早く拾い上げる。
俺は、振り下ろされた剣を、レンガで受け止めた。
そしてレンガを持っていない方の手で、兵士の横っ面を思い切り殴る。
兵士は遠くに吹っ飛んでいった。
背後から来る兵士にも気づいていた。
背後の兵士は、剣をまっすぐに持ち、俺に向かって突進してきた。
俺はわずかに肩を動かし、半身にすることで剣を数ミリの差でよける。
そして、勢い余って飛び込んできた兵士の後頭部をレンガで思い切り殴った。
殴られた兵士は足から崩れ落ち、すぐさま意識を失う。
「うぉおおおおお!!」
今度は別の兵士が、雄叫びをあげながら俺の方に飛び込んできた。
俺はそいつに向かって、レンガを投げつけた。
だがそいつは、俺の投げたレンガを避けやがった。
俺は兵士の振り下ろした剣を、腕の外側で受ける。
俺の腕から血が噴き出る。
皮膚は破けたが、骨が剣に当たるのを感じる。
ちっとも痛みを感じないのが不思議だった。
「許さない!!お前ら全員、許さない」
俺はそうさけぶと、兵士の剣を素手で掴んだ。
もちろん俺の手から血が吹き出た。
剣を強く握り、横方向へ力を加える。
俺にとって剣はまるで、針金のように柔らかく、ぐにゃりと曲がった。
「ひぃいいいい!!け、剣が!!」
兵士は叫ぶと、腰を抜かした。
俺は、腰を抜かして後ずさる兵士の顔を容赦なく蹴飛ばした。
残った兵士は、なにか分けのわからないことを口々に叫びながら逃げていった。
みんなやっつけた。
「葵......いま......いま、元の世界に連れ帰ってやるから」
俺は、気を失っている葵をそっと抱き上げた。
「ね......姉ちゃんが」
達治は泣きじゃくっている。
「達治、葵はお前を命がけで守った。
絶対に死ぬな」
俺は達治をにらんだ。
女たちは全員、壁の穴から外へ逃げたようだった。
残っているのは春樹さんと達治、それに葵と俺だけ。
俺たち四人も急いで、壁の穴を抜けて外の森へと逃げ出したのだった。




