第38話_突然のラブホ
「どこまで着いてくるつもりだ?」
「ニセ葵を探すんだよね?危険だ。俺も手伝う」
まだ痛々しい痣だらけの顔で、葵ちゃんは朝早くにジムを出発した。
俺も慌てて、葵ちゃんのあとに続く。
「あたしは大丈夫だ。おまえは大学に行け」
「だめだよ。ニセ葵と、もしも目があったら葵ちゃんは......」
葵ちゃんは死んでしまうかもしれない。
それを口にするのは恐ろしすぎて、思わず俺は黙り込んだ。
とにかく、どんなに嫌がられても、俺は葵ちゃんのあとを付け回すことにした。
「光一がいたほうが、うまくいくかもしれないな。まぁいいだろう」
葵ちゃんはため息を付いた。
「葵ちゃん!?今、なんて言った?」
「まぁいいだろうって......」
「俺のこと、光一って呼んでくれた。嬉しい!」
「ポータル管理者を雑魚呼ばわりできないだろう」
「葵。......俺も、葵ちゃんのこと呼び捨てにしちゃおう」
葵に手を差し伸べる。
「葵、一緒に行こう。地獄の果てまで。どこまでも一緒だ」
「図に乗るな、光一」
葵は、差し出した俺の手をペシッと叩いた。
「......で。どこに行くの?」
葵の目をのぞきこむ。
彼女は腫れてないほうの目で俺をジロッとみた。
「まずは、トラベラーが集まる施設で聞き込み調査だ」
「トラベラー?別の世界線から来たやつらのことか......」
-----------------------
「ここだ」
葵に連れてこられたのは、どぎつい紫色の壁に、黄色の看板が目立つ建物だった。
「ここって......」
黄色の看板には「ホテル・別世界」と書いてある。
どうみても、カップルが入るホテル......つまり「ラブホ」っぽい。
「葵......俺とこんなところに入りたがるなんて。
いや、すっごい嬉しいよ。俺はいつでも準備できてるし。
でも葵は傷だらけだし、もう少し回復してからのほうが良いと思う。
あっ!もしかして、ここでもう一眠りしたいとか?俺のベッド硬いもんな。
分かった!一緒に二度寝しよう」
ごくりとつばを飲み込んで、俺は葵の顔を見た。
「バカ!......なにか勘違いしてるな。ここがトラベラーの集まる施設なんだよ!」
葵はげんこつをつくると、俺の顔に向けた。
「なんだっ!そうなんだ......えぇ?ここが?」
ホテルの入口には「満室」の赤い文字が踊っている。
「ここは永久に満室のホテルだ。
光一は基本、だまってろよ。余計なことを言うな」
葵は小声でそういうと、ホテルの入口のブザーを押した。
モニターのライトが光り、インターフォンから声がする。
「ポータル開発者の名前は?」
「ゲリー・デ・ユルユル」
葵は質問に答えた。
たぶん、合言葉かなんかなんだろう。
ホテルの観音扉が自動でパッとひらいた。
俺たちは中に足を踏み入れた。




