第34話_ロシアンルーレット
「あんたは死を覚悟してるって言うけど。
2分の1のロシアンルーレットなんざ、あたしはごめんだよ」
ニセ葵はそう叫ぶとパーカーのフードを深く被り、葵ちゃんとは逆方向に走り出した。
2メートルはあろうかという大男が、優香をヒョイと抱えあげて、ニセ葵の後を付いていく。
「優香!......まてニセ葵!」
俺は追いかけようとしたが、男の一人にまた突き飛ばされた。
公園の入口には大きなバンが停められていた。
ニセ葵たちは車に乗り込もうとしている。
「くそっ!山口先輩!まちやがれ」
葵ちゃんも、ニセ葵のあとを追いかけようとダッシュするが、残りの男たちに囲まれてしまった。
俺も慌てて立ち上がると、葵ちゃんの背中に隠れながら、男たちの様子を観察した。
男は、5人いる。
どの男も筋肉隆々で目付きが悪い。
「優香をどこへ連れてった!今、彼女を返してくれれば警察に言わないでやるぞ!」
俺が叫ぶと、男の一人がニヤリと笑った。
「ほんとにソックリだな。あの女に。
警察に届けても、おまえの仕業だという証拠しか残ってないんじゃねえか。
指紋もDNAも、姿かたちもあの女と一緒なんだからなぁ」
金髪の男が葵ちゃんを指差すと、そう言った。
「チイィッ!!」
葵ちゃんは変な奇声を発すると、男の目に向かって、いつの間に握りしめていた砂を撒き散らした。
「クソっ」
男が怯んでるスキに、葵ちゃんは男の急所を蹴り上げた。
他の男達も一斉に葵ちゃんにむかってきた。
「やめろー!葵ちゃんに手を出すな」
俺は叫びながら、男の集団に突っ込んでいった。
だが顔面を一発殴られて、俺は気を失ったのだった。
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「う......ん......」
どれくらい経ったのだろう。
公園の地べたで気を失っていた俺は、意識を取り戻した。
「葵ちゃん!?」
キョロキョロと周囲を見回す。
すると少し離れたところに葵ちゃんが仰向けに倒れているのが見えた。
「葵ちゃん!!」
叫びながら彼女の方へと駆け寄る。
葵ちゃんは鼻や口から血を流し、ひどい状態で気を失っている。
「葵ちゃん、死なないで。嫌だよ。葵ちゃん」
俺は泣きそうになりながら彼女の肩をゆすった。
「お、俺が弱いばっかりに」
「ざ......雑魚......」
そのとき葵ちゃんが意識を取り戻して小さな声で俺を呼んだ。
「良かった!救急車呼ぶ!病院へ行こう」
スマホを取り出そうとすると、葵ちゃんが首を横に振った。
「だめだ。病院に行けば警察沙汰になる。
警察につかまれば、ムダな時間を取られるだけだ。
おまえのすみか......この近くだったよな」
「近いけど!ダメだよ、病院に行かないと!」
葵ちゃんはボロボロだった。
「うるさい。いいから、お前のすみかに連れていけ。
あたし専用の医者をそこに呼ぶから」




