第28話_現実問題
優香は「用事があるの」と言って、自宅へと帰っていった。
彼女が帰ってくれて、正直ホッとした。
シャワーを浴びて身体中を洗い、口の中も歯ブラシで洗う。
そして静まり返ったジムの中で、白湯を飲んで深呼吸した。
まったく、何をやってんだか。
アルコールは絶対に口にしないように気をつけていたんだけどな。
初めての子が相手だったら結構大変だったと思う。
どんなに酔っていても、さすがに途中で酔いが覚めると思うんだけど。
全く記憶にないってヤバすぎないか。
俺はゴムを使わなかったようだから、マズイなと思った。
だから、帰ろうとする優香に向かって、再度しつこく「病院へ行こう」と言った。
そしたら、「わかったよ!恥ずかしいから一人で行く」と言っていた。
ほんとにちゃんと病院に行ったか、めちゃくちゃ心配だ。
なにかあったら、女のほうが大変なのに。
また会ったときに確かめておこう。
そもそも、山口優香がワームかどうか。
それを探りたくて俺は彼女とメシに行った。
でも彼女がワームかどうか、判断がつかない。
もはや、彼女がワームだったとしても、そうじゃなかったとしても、どうでもいい気がした。
彼女と付き合うことになった。
そっちのほうが「ワームかどうか」なんかよりも、よほど俺にとっては現実的で、心に重くのしかかってきていた。
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「光一!一緒に帰ろう」
部活の練習が終わると、優香が俺のほうに走り寄ってきた。
「今日はバイトがあるんだけど」
「分かってるって。駅まで一緒に帰ろうよ」
もう完全に、彼氏・彼女みたいになっているな。
遠くにいる葵ちゃんと目があって、背筋に冷たい汗が流れる。
俺は葵ちゃんのことだけが好きなんだー、と叫びたい気分になった。
葵ちゃんは、目が合うと、サッと視線をそらした。
(あぁ~、ぜったいヤバい)
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「優香。この間のことはホントに悪かったって思ってる。
だけど、俺は葵ちゃんのことが好きなんだ......」
腕にしがみついてくる優香に言った。
優香は俺のほうに顔をむけると
「......だんだんに好きになってくれれば良いから」
そんなことを言った。
「う~ん......」
葵ちゃんを思う気持ちは自分でもびっくりするほど強い。
だから心変わりすることなんて無いんだけどな。
「病院は行った?」
「行ったよ。ちゃんとしてきた」
優香は下を向いて言う。
「良かった。......その、身体は大丈夫?」
優香は口をとがらせると
「もうその話題は良いから!」
と怒ったような口調でいった。
「でも大事なことだし、心配なんだけど」
と言うと、優香は眉間にしわを寄せて、俺の顔をじっと見上げていた。




