第27話_抱き心地の良い抱きまくら
頭が重い。
土曜だから授業もないし。
たしか今日はバイトは午後からだし。
もう少し寝てても大丈夫かな......。
それにしても、妙に抱き心地が良い抱きまくらだなぁ.......。
あったかくて、柔らかくて、いい感じの凹凸があって。
それにいい香りまでする。
待てよ。
抱きまくらなんて持ってたっけ?
ぼんやりと目を開けると、目の前に人の頭が見えた。
「エッ!!」
勢いよく飛び起きた。
「......光一。やっと起きた」
山口優香も、俺のベッドから起き上がった。
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「山口さんがどうしてここに?」
「光一、おはよう」
山口さんはニコッと笑った。
彼女の着ているシャツがはだけていて、肩が出ている。
「あっ、ねえ。私のことも、優香って呼んでよ」
「優香......?うーん。分かった......。
そうだ、昨日、居酒屋に一緒に行ったよね?
そのあと......どうしたんだっけ。どうして覚えてないんだろう」
自分の頭を叩いてみた。
記憶がすっぽり抜けている。
「光一は間違ってアルコール入のお酒を飲んじゃったんだよ。
覚えてない?」
「全く覚えてない」
山口さんは......優香は首をかしげて、俺の顔をじっと見ている。
「覚えてないんだけど、俺、優香になんか変なことした?」
「......したよ」
優香は小さな声で恥ずかしそうに言った。
「えぇっ!?もしかして!?」
「......うん......。光一は、私にキスしてきた。
それに私の服を脱がせてきて、触ってきた。
あちこち、触られたわ。抵抗できなかった......」
「俺はそんなことを!?......その、最後まで!?」
「最後までしたよ」
床に土下座した。
「ごめん!!ほんとに。いや、あやまって済む問題じゃないけど」
床に頭を擦り付けたあと、おそるおそる、優香の顔を見上げた。
彼女は少し満足そうな、でも意地悪そうな表情を一瞬見せた。
俺は優香とエッチした!?
全くその痕跡がないのが謎だけど。
えっ!?
痕跡がないのってやばくないか。
避妊具が落ちてたり、ゴミが落ちてないかと思って、ベッドをめくったり、ゴミ箱の中を探って確かめた。
.....何もない!!
「優香!!病院に行こう。女の病院」
俺は優香の腕を引っ張った。
「病院?どうしてよ」
優香は目を丸くした。
「だって......」
「大丈夫。光一。病院は必要ない。なんともないもん」
「ほんとに?俺、一緒についていくから。一応、行っとこうよ?」
「ほんとに、大丈夫だから!」
優香が強い口調で言うので、それ以上、言えない雰囲気になった。
「光一。わたし、初めてだったの。すごく怖かった」
「はじめてぇ!?」
思わず声が裏返ってしまった。
「えっと、血......みたいなの、無いけど」
ベッドを見る。
「えっ?......ふ、拭いたのよ!」
「......優香、ごめん。ほんとに。痛かった......よね」
優香は黙って首を振った。
「すごく怖かったの。光一、責任取ってくれる?」
優香は俺に抱きついてきた。
「責任......?」
「そうよ。関係をもったのだから、私と付き合ってほしい」




