第23話_野蛮な女性を街に放った
裸の女たちは、それぞれ服を着て蛭間さんに連れられてどこかへ遊びに行った。
しばらくすると、蛭間さんが一人でジムに戻ってきた。
ちなみにポータルはまだひらいたまま。
蛭間さんが言うには、俺が壁から輪っかを剥がせば、ポータルは閉じるらしいけど。
「お客さんが戻るまで、そのままひらいとけ」ってことだった。
「あの野蛮な女性たちを街に放って大丈夫なんですか。
犯罪が起きる気がしますけど」
「大丈夫よ。彼女たちが夢中になる店に押し込んできた。
明日の朝、迎えに行けばいいと思う」
蛭間さんは、フフフと笑った。
「あたしも、たまに世話になってるんだけど。
男の人がサービスしてくれるのよ。頼めば、本番の行為も......」
「それ以上、言わなくていいです!聞きたくないですよ」
蛭間さんは駅前で買ってきたという、みたらし団子をムシャムシャ食べていた。
俺も一ついただく。
「彼女たちが生まれ育った世界......そこは、あたしも過去に住んでいた世界なの」
「蛭間さんが住んでいた世界!?」
「その世界では、発熱から3日以内に50%が死に至る重病が流行したの。
病は世界中にあっという間に広がっていったわ。
対策として、ワクチンが開発され、強制的に世界中の人が接種した。
後でわかったんだけど、そのワクチンには副作用があってね」
「副作用......ですか」
「男は性欲が減退し、女は性欲が増強されてしまった」
「えぇ~っ!どこでそんな事が起きてるんですか
そこの男は、悲惨すぎる......俺、想像しただけで無理です」
「あたしのいた世界......1145H-Bには欲求不満の女たちが溢れている。
子どもは人工的につくっているから、人口減少は起きていないんだけどね」
「無理だ~。葵ちゃんがしたがってるのに、俺のほうがその気になれないなんて、想像しただけで、涙が出てくる」
俺は自分の体を抱きしめてふるえた。
「蛭間さんは悲惨な国の出身なんですね」
「そうよ。だからあたしも性欲が異常に強いのよ。
ついつい光一にもベタベタ触わりたくなるの。
だけどあたしは、光一と寝るわけにはいかない。
あなたの魅力におぼれたら、あたしは仕事にならなくなるからね」
蛭間さんはそう言うと、黒革のバッグから封筒を取り出した。
「今回のアルバイト代よ」
「えっ!輪っかを壁に投げつけただけなのに?」
俺は封筒の中身を見た。
札束が入っている。
「こんなに?こんなに要らないです!
無料でここに住まわせてもらってるだけでラッキーなのに」
「黙ってもらっておきなさい。
私はこの世界でお金ならいくらでも生み出せるの。
運命を読むことができるから、宝くじや競馬で無限に金を入手できる」
「なんか、すごいこと言ってますね。
蛭間さんは占い師ですか?」
俺はそそくさと、封筒をポケットに押し込んだ。
「そうだ!また忘れそうになった。
忘れないうちに言っとかないと」
「なによ?」
蛭間さんが、団子を頬張りながら俺の顔を見る。
「俺の好きな人のニセモノがいて......そいつが、Aだか、BだかCのワームが来てるって。蛭間さんに言えって」
「はぁ!?」
蛭間さんはキョトンとした。
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「なるほどね。それはあたしの商売敵だわ」
蛭間さんにニセ葵のことを説明した。
「光一に無理やりキスしてくるあたり、あたしと同じ世界の女の匂いがする」
「ニセ葵は、かなり乱暴者でしたけどね。俺、ナイフで切られたんですよ」
「欲求不満で、しかも好みの男を目の前にしたら、女だって凶暴化するのよ」
蛭間さんはニヤリと笑った。
「でもそいつは、すでに任務失敗ね。
自分がワームであることがバレた時点で、失敗よ。
もう二度と、光一の前には現れないんじゃないかしら」
蛭間さんは白湯をずるずるとすすった。




