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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
終章_7人の羅針盤と運命の冬ーその後のふたり
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第213話_優香は強い


優香は思い切り泣いたあと、スッキリしたような顔で俺たちを見た。

ちょっとバツが悪そうに

「大声だしてごめんなさい」

といって頬を赤らめてた。


「山口先輩」

葵が心配そうに優香の肩に手をかける。

「先輩、あたしがついてる。そばにいるよ?

それとも一人になりたい?」


優香はゆっくりと首をふると、葵の手を握りしめた。

「い、一緒にいて欲しい......」

シクシクと静かに泣きはじめた。

「大丈夫だよ、先輩......」

葵が彼女の背中をさする。


葵は、母親を亡くして落ち込んだ俺のことを癒やしてくれた。

葵には人を癒す力がある。

きっと優香の力にもなってくれるはずだ......。


優香と葵はジムから出て行った。


7人の悠人と俺だけがジムに残った。

俺は、鏡に張り付いてるポータルを外しながら、

「俺の親友が遠くに行っちゃった」

ぼそっと独り言を呟いた。


鏡に映る自分の顔を見る。

目が真っ赤だ。

俺も声を上げて泣きたい気分だった。


「豆次郎!この問題教えてくれよ」

「こんなのも分からないのか、

光一はバカだなぁ」


「光一、食堂で飯くおうぜ」

「いいよ!トイレ行ってるから席取っといて!」


脳裏に、豆次郎との思い出がつぎつぎと蘇る。


「......っ」

涙がこぼれ落ちた。


「光一、豆次郎に会いたいなら、いつでも1111H-Dへ行ける座標を教えるけど」

金色の子鬼が、俺のことを見上げていた。


俺はゆっくりと首をふる。

「豆次郎はここに戻るつもりはないんだ。

戻れば優香への気持ちを断ち切れないから。

そんな決心をしてここを離れたのに、俺がまた会いに行ったら、ヤツの気持ちが揺らぐ......かえってツライ思いをさせる。

もう......俺は豆次郎には会えない.....」


涙を手の甲でぬぐった。


「そのとおりだ。よく言った」

金色の子鬼はうなずいた。


「我らは故郷に帰る」

とつぜん、6人の子鬼が声をそろえて言った。

「そろそろ、親が心配してる」


「ほんとだよな。ちゃんと親には言ってきたんだよな?

世界を救ってくるって」

「きちんと説明してある」

6人の悠人がまた声をそろえて俺に答えた。


「優香は......もう、大丈夫なのかなぁ。

俺は母親の死から立ち直るのに、2か月以上かかったけど」


「山口優香は、光一よりも精神的に強い」

金色の子鬼がきっぱりと言った。

「彼女はまだ、ときどき泣くだろうけど、もう大丈夫だ」


「うん。分かってる......。優香は俺なんかよりずっと強い」


--------------------------------


悠人たちは故郷へ帰ると言う。

俺は彼らのためにまた、ポータルを開くことにした。


「我らはまた来る」

「えっ?また?

でも、優香はもう大丈夫なんだろ?暗黒の分岐も防げたし」


「我らの命を永らえさせるために、この世界へときどきくることにしたのだ」

子鬼の一人が俺にそう言った。


別の世界線に住む悠人たちは、全員、脳の病に犯されていて、幼くして死ぬ運命だった。

20ある世界線の中で、もうすでに亡くなっている悠人もいる。


だが、調和の取れた俺の世界(1142H-A)に短期間でもいると悠人たちの病は快方へとむかうらしい。

彼らのひきつけの発作は止まり、病状もよくなるという話だった。


「この世界へ来れば、病気の進行が遅くなるんだな。

だったら、どんどん来たほうがいい」

俺がそう言うと、子鬼の一人が言った。


「我らは最初から、そのつもりだ。

ときどき、この世界に訪れることで、我らの命を永らえさせるつもり。

だから、この世界を救ったのだ」


「なんだよ。最初からそういう狙いがあったのかよ。ちゃっかりしてんな」

俺は頭をかいた。


「光一!抱っこして」

俺と世界線をくぐり抜けた悠人が、俺に向かって両手を差し出した。


「いいぞ!」

悠人を抱き上げた。

「また来るね」

「おう。楽しみにしてる」

悠人のふわふわの頭を撫でてやった。


---------------------------


6人の悠人たちはそれぞれの故郷へと帰っていった。


羅針盤の悠人も、銀座のマンションへと帰っていく。


「あぁ~、一人になっちゃった。

葵もしばらくは優香につきっきりだろうしなぁ」

ガランとしたジムの中で、一人寂しくため息を付く。


「そうだっ、夕方からバイトだった!」

腕時計を見ると、あわてて立ち上がった。


慌ただしい、日常がはじまろうとしていた。


ときどきポータルを開けて、別の世界線のトラベラーを招き入れる。

それから、悠人たちもときどき、ここへ来るだろう。

野蛮な女たちも蛭間さんの手引きでやってくるし。


俺はカフェと居酒屋のバイトをしながら、ときどきポータルをひらいて、そして大学に通う。


いつもの日常が戻ってきた。

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