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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
終章_7人の羅針盤と運命の冬ーその後のふたり
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第212話_【優香】抑えきれない感情


「うそ......あたしを、おいていくの?」

「優香......」

「ねぇ、もう会えなくなるってこと!?」

彼の肩をつかんで、ゆすった。


まめくんの目から涙が流れ落ちた。


「ずるいよ、あたしより先に泣かないで」

あたしは、まめくんの頬にふれて、涙をぬぐう。

でも手がふるえてしまう。


「最初から、分かってたはずだよ。

......俺たち......最後はこうなるって」


まめくんは下を向いた。

ポタポタとまめくんの足元に涙がおちる。


「ちがう。こんなのちがう。

これじゃ、あたしは幸せになれないよ。

おかしいよ。

こんな終わりかたじゃないはず」

まめくんの腕を必死につかんだ。


まめくんはメガネを取ると、涙をぬぐった。


「もう冬が来てる。

俺は優香の前から消えないといけない」

まめくんは寂しそうな笑顔をあたしにむけた。


「......っ......」

あたしは歯を食いしばる。

感情の爆発をおさえる。


「まめくん。

あたしっ......離れたくない

でもまめくんが故郷に帰りたいって言うなら。

まめくんがそうしたいって言うなら......がまんっ......するっ

ツラいけど、ツラくてどうにかなりそうだけど。

がまん......するよっ......」

しゃくりあげながら、彼に言った。


まめくんは静かにうなずいた。

「優香、いままでありがとう。

俺は、カッコよくもないし、喧嘩も強くない。

面白くもないし、背も低いし、痩せてる。

でも優香といるとなぜか俺は自信が持てた。

優香は俺を世界一幸せな男だって気分にさせてくれた」


「だって......だって.....。

まめくんは、あたしにとって世界一だから」


まめくんは突然、あたしを抱きしめた。

ぎゅっと強く抱きしめると、やさしく頭をなでてくれる。


「あたしも、まめくんといると世界一幸せな気分になれたよ」

「優香......。ほんとにありがとう」


ジムの扉が開いた。

みると、光一と葵、それに悠人たちが戻ってきていた。


悠人たちの中のひとり、ひときわ目立つ金色の子鬼の仮面をかぶった子どもが言った。


「別れは済んだか」

あたしは下唇をかみしめて、うなずいた。

まめくんは、あたしからそっと離れた。


「光一、......そこだ。

その鏡の向こうは、いまから五分間だけ、1111H-Dにつながっている。

非常に短い時間だ。急ぐんだ」


黄金の子鬼は、鏡張りの壁をゆびさした。


「ほんとにこれでいいのか......。俺にはわからないけど」

光一は小さな声でつぶやきながら、鏡にポータルをぶつけた。


やがて、ポータルが大きな口を開ける。


「このポータルは、豆次郎の家の台所につながってるぞ。

素っ裸でも自分の家なら安心だろう?」

金色の子鬼がまめくんに、そう告げる。


「......ありがとう」

まめくんは小さな声でお礼を言った。


「豆次郎!!」

光一がまめくんを抱きしめる。

「俺は、お前の親友だ。

たとえ別の世界線にいても、俺はずっとお前の親友だからな」

「光一......。俺も。

俺もずっと光一の親友だ」


「桜沢さんもありがとう。

軽井沢の旅行、すごくたのしかった」

まめくんは葵にも別れを告げる。


あぁ......。

あたしの大好きなひとがいなくなってしまう。

あたしの前からいなくなる。


あたしは心臓がドクンドクンと鳴るのを感じていた。

深呼吸する。

だめ......感情を抑えないと。


「優香」

まめくんがあたしのほうを見る。


「まめくんっ」

あたしはまめくんに駆け寄ると抱きついた。

「いつも、あたしに優しかったこと。

たくさん笑ったこと。

話したこと。

いっぱいの思い出......忘れないよ」


「俺も忘れない。

優香、これを持っていてくれるかな」


まめくんは、自分のメガネを外すと、あたしの手に押し込んだ。

「ポータルに入れば溶けてしまうから......」

「うん。大事にするよ」


あたしの手を握ったまま、まめくんはポータルに近づいた。


「光一、桜沢さん。ありがとう......友だちでいてくれて。

優香。愛してる」


まめくんはそう言うと、あたしの手をそっと離した。


そしてポータルに吸い込まれていった。


------------------------


ま め く ん は 、 い っ て し ま っ た。


もう二度と会えない。

彼は亡くなってしまったも同然......。


いけない。

泣き叫んだりしたら、だめだ。

きっと泣けば、どす黒い感情が吹き出す。


運命の相手なんてどうでもいい!!!!

そんな感情が吹き出してしまう。


こみ上げてくる嗚咽を抑える。

歯を食いしばって、涙を抑えた。


7人の悠人も、光一も葵も、だまってあたしをジッと見ていることに気づいた。


「あ......あたしは、もう帰るわ。

光一......いろいろとありがとう」

震える声で、光一に言った。


「山口先輩......」

葵が涙を浮かべている。


「さ、帰るわ。

冬物の、ニットでも買って帰ろうかな。

セールしてたし」


あたしはジムの出口へと向かった。


「優香!!!」

そのとき、光一があたしを呼び止めた。


「ダメだ」

光一はそう言うと、あたしの腕をつよくつかんだ。


「なっ、なによ。

これで暗黒の分岐はふせげたじゃない。

すべてうまくっ......いくじゃない。

なにがダメなのよ」


光一は真っ赤な目をして言った。

今にも泣きそうだった。


「ダメだよ、優香!!

俺、うまく言えないけど、こんなのダメだ。

優香......悲しかったら思い切り泣かないとダメだ」


光一はあたしに向かって叫んだ。


「そんなふうに感情を押し殺していたら、きっと悲しみは一生心に残る。

俺は母親をなくしたとき、思い切り悲しんだ。

それで立ち直れた。

うまくいえないけど、今のままじゃ、優香はダメだ」


「なんでそんな事言うのよ!!

だって、泣いたりしたら止められない。

あたしには止められないよ?

きっと、どす黒い気持ちが吹き出してくる」


「優香。気持ちを吐き出せ。

そうしないと、ダメだ。吐き出すんだよ!!!」

光一はあたしの両肩をガッシリとつかむと、前後に揺すった。


あたしは......。


あたしは、我慢してたのに。


世界のために我慢してたのに。


おさえていた涙が溢れ出てきた。

光一のせいだ。


どうしてそんな、ひどいこと言うの?

一生懸命、こらえてきたのに。


「あぁ.......。まめくんの、バカ!!

バカバカ!!まめくんが好きっ......。あたしは、運命の相手なんてどうでもいい......」


次の瞬間、あたしは大声を出して泣きはじめた。

動物の咆哮のような、変な声が喉の奥から出た。


「あぁあああああ~~~」

叫びながら涙がたくさん出てくる。

今まで我慢していたぶん、感情が溢れ出てきた。


まだ午前中なのに、外がとつぜん暗闇になった。

遠くで雷鳴が聞こえる。

あたしのせいで、天変地異が起こるんだろう。


でもどうでもいい。

こんな世界、どうなったって。


もうどうなったっていい!!!!!


「我らの出番だ」

黄金の子鬼が静かに言った。


子鬼たちは、あたしをぐるりと取り囲んだ。


「思い切り泣くがいい。

我らが、暗黒の分岐をふせぐ」


6人の子鬼たちが等間隔にあたしの周りを、囲む。

黄金の子鬼は、少し離れた場所でお教のような、なにかの呪文を唱えはじめた。


「あぁあああ、ああああん」

あたしは、相変わらず自分の口から出る鳴き声を止めることが出来ない。

鼻水も涙もあふれでて、顔がぐちゃぐちゃになる。


「我らは世界の安寧を守るものなり......世界の指針を示す羅針盤なり......」

子どもたちが、あたしの周囲でなにかをブツブツとつぶやいている。


全員が両手をあたしのほうにむけて、なにか不思議な動きをしていた。


黄金の子鬼も低い声で呪文を唱えはじめた


「あぁっ......ううっ」

あたしは地べたに座り込むと激しく肩を震わせた。

「あぁあああ」


遠くで雷が鳴り、かすかに地面が揺れ始める。


だが、子鬼たちはそれにもかまわず、必死に呪文を唱えている。


一時間くらいが経っただろうか。

あたしはようやく泣きつかれてきた。


真っ暗になった窓の外が、じょじょに明るくなりはじめた。


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