第207話_マルチポータルで羅針盤をあつめる
「6人の悠人をこの世界に集めるのか。
結構大変そうだな」
「簡単だよ」
ニヤリと笑いながら悠人は言った。
「僕のドッペルゲンガーたちは、全員、ある程度の予知能力がある。
すでに、このことを予知しているだろう。
予知能力の低いものであっても、これだけの大きな運命の分岐点にあれば、さすがに察知するはずだ」
「予知してる?この世界に連れてこられることが、もう分かってるのか?」
「分かってる。
しかるべきときに、しかるべき場所にポータルを開ければ、
羅針盤たちは自らそのポータルを通ってやってくる。
なにも難しいことはない」
「ふぅん......それなら、俺がポータルに入って、悠人たちを迎えに行く必要もないってことだな」
「そうだ。光一はマルチポータル管理者だから直通ポータルが開けるはずだ」
俺はうなずいた。
まえに22人のトラベラーをそれぞれの故郷に返したのを思い出した。
あのとき、いくつもの世界線をくぐることなく、一発で故郷へ帰すことができたのだった。
「光一は、僕が指定した日時に、指定した場所でポータルを開くだけ。
もちろん6箇所、別々の場所に開く必要があるけど」
「6箇所なら楽勝だ。22箇所、開けたことがあるんだからな。
よし。いつやればいいんだ?」
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【優香】_幸せになれるということは
「まめくん、ボーッとしてどうしたの」
まめくんと二人、イチョウ並木の下を歩いていた。
水色の空に黄色のイチョウの葉が映えて、きれいだった。
でもハッと気づく。
イチョウが色づいているってことは、もうすぐ「冬」が来るってことだ。
「冬なんか来なければいいのにな。
ずっとこのままがいい」
まめくんの手をぎゅっと握った。
「優香......。
でも刻一刻と期限は迫ってきてる」
「いやだ。もうこの話はやめよう?
ねえ、このあとケーキでも食べに行かない?
おしゃれなカフェがあって」
あたしは話をそらしたくって、話題を変えようとした。
でも、まめくんはそれを許してくれなかった。
急に立ち止まるとあたしの手を引っ張った。
「俺だってこのままでいたい。
優香のこと、ほんとに好きなんだ。だけど......」
「好きならこのままでいようよ。
津江さんだって言ってた。
あたしは幸せになれるって。
幸せになれるってことは、まめくんとずっと一緒にいられるってことだよ?」
まめくんは、困ったときの「上目づかい」の表情になって黙っている。
「俺も優香には幸せになって欲しい。
でも暗黒の分岐が」
「やだってば。その話はしないで!」
あたしの頬に涙が流れる。
まめくんは、さらに困って上目づかいになる。
あたしは、まめくんを困らせたいわけじゃないのに。
どうしてもこの話題になると涙が出てしまう。
「まめくんのことが好きなの。
あきらめたりなんかできない。
そしたら、あたしは幸せになれないよ?」
落ち葉がハラハラと天から落ちてきた。
まめくんの頭に落ちる。
あたしの頭にも。
ふたりで、お互いの頭におちた落ち葉を手に取る。
「ずっと一緒にいたいの」
「俺もそうしたい」
あたしはポケットにそっとイチョウの葉をしまった。




