第194話_プレゼントを渡す
葵は俺の先をズンズンと歩いていた。
「なんでそんなに怒ってるんだよ?」
「ふん。光一が悪いんだ」
「あっ!あそこのベンチに座らない?」
小さな公園を見つけて、葵の腕を引っ張った。
「まぁ、そうだな、むやみに歩き回るとお腹が減ってしまうし」
葵も小さくうなずくと、ベンチの方へとむかった。
二人で小さなベンチに座る。
「あのさ......。
葵!!誕生日おめでとう」
俺がそういうと葵は、パッとこっちを見た。
「知っていたのか」
「優香に聞いたんだ!」
「ちゃんと覚えていたんだな。
光一のくせに」
「これ......プレゼント」
俺は、古本屋でみつけた本を、葵に手渡した。
「ホントは優香に教えてもらった
永遠のポータルを用意したかったんだけど......」
「永遠のポータルか。
マーラ・イーオンの本だな」
葵は小さくうなずいた。
「あの本は、なかなか手に入らないし高価だ」
「俺は買うつもりだったんだ。
だけど、うっかり買うのを忘れちゃったんだ」
葵は渡された本をじっと見た。
「この本は......?」
「うん。永遠のたいやきって本。
ちゃんとお店にお金を置いてきたよ。
裏側に値札が貼ってあったから」
葵は本の裏側を見た。
「5000円!?結構高いんだな」
「しまった。プレゼントなのに値札を剥がし忘れた」
「永遠のたいやき......。一体どんな話なの?」
葵がキラキラした目を俺に向けた。
「えっ......。えっと、どんな話って。
.......分からない。俺は読んでないから」
葵は急にアハハハと笑い出した。
「光一、適当に選んだな?」
「て、適当じゃないよ?
良さそうな本だなって......俺には何となく分かるんだ」
必死になってごまかす。
本当は適当だった。
「ありがとう......」
葵は、本を胸に抱きしめた。
「いつも、葵にはもらってばっかだから。
自転車も買ってもらったし、学費だって借りたままだ。
だから、誕生日くらいプレゼントを用意したかった。
それでバイトも頑張ったんだけど。
俺はうっかり永遠のポータルを買うのを忘れたんだ」
「そうだったんだな。
でもいい。
永遠のたい焼きのほうが嬉しいよ。
だって、光一が選んでくれたんだから」
葵はそっと俺の手を握った。
「あたしは多少、お金をもってるだけだ。
自転車も学費もたいしたことじゃない」
「でも、それじゃ不公平だよ。
俺ばかり、葵にもらってる。
俺は、葵に何もしてあげてない」
「そんなことない!!」
葵が急に大きな声をだしたので俺はびっくりして葵を見た。
「ご、ごめん。大きな声出して。
......でも、そんなことないんだ。
光一は......その......あたしにいろいろ、くれている」
「えっ?なにをあげたっけ?」
俺は葵の言葉に首を傾げた。
「いろいろだ!」
葵はまた大きな声を出すと、そっぽを向いた。
葵の手をぎゅっと握る。
「あのさぁ。
やっぱりバッテリー貸して欲しいかも......」
葵はちらっと俺に視線を戻すと、カバンからバッテリーを取り出して、乱暴に押し付けた。




