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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
兄との対決ー両親との再開と別れー豆次郎の決断
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第181話_圭一との会話

豆次郎が拘束されているすぐ隣の部屋。

その部屋のふすまが乱暴に開かれた。


「お前はこの椅子に座れ」

圭一の手下の一人が、部屋の中央に置かれた椅子をゆびさした。


たしかこの部屋は......。

俺は、ぼうぜんと部屋を眺める。

畳には家具が置かれた跡がくっきりと残っていた。


「そうだ。

その壁際に俺たちの勉強机がふたつ並んでたよな。

お前の夏休みの宿題に、俺が墨汁をぶちまけたこともあったなぁ。

あれは、お前が頑張って描いた母親の絵だっけ?

絵が墨汁で真っ黒になってた。アハハハ。

手が滑ったふりをしたけど、あれはわざとだったんだ。

お前はわぁわぁ泣いてたな」


「そんな話はどうでもいい」

振り返って圭一を睨みつけた。


「くそっ!豆次郎を離せ」


強面の男に、無理やり椅子に座らされる。

そして手足を縛られた。


「お前は俺よりもきれいな顔をしてる。

二卵性双生児なのに。

この顔が昔から気に入らなかったんだ」


圭一がそう言いながら、俺の頬にナイフを当てた。

スーッとナイフの切っ先を頬に走らせる。

血が流れ出る感触があった。


「お前は、どうしてケイシー伊藤なんて、変な名前......名乗ってんだ?

伊藤は母親の旧姓だけど、ケイシーってなんなんだよ」

俺は、圭一を睨みつけながら言った。

だが、すぐに目をそらしてしまう。

やっぱり俺は、こいつのことが怖い。


「俺と母親は一時期サンフランシスコの爺さんの家にいたんだ。

その関係でな。

爺さんが死んじまって帰国したんだけどな」


「爺さん......」

「俺たちの爺さんはアメリカ人だ。お前はクオーターだよ。

知らなかったのか」


「なんだそれ......どうでもいい」


俺の爺さんがアメリカ人?

俺の目や肌の色が薄いのはそのせいだったのか。


圭一がとつぜん、俺の頬を殴った。

「......くっ」

とっさに歯を食いしばる。

だが口の中が切れてしまって、血の味がした。


連続で何度も殴られた。

だがきっと殴るほうも体力を使うはずだ。

俺は圭一の体力が削られるのを期待した。


はぁ、はぁ、と圭一は息を荒げ、汗を拭きながら言った。


「もっと痛めつけたいところだけど。ゆっくり楽しまないと。

お前は葵ちゃんが死ぬのを見たいか?

それとも葵ちゃんに自分の死ぬところを見て欲しい?」


葵の名前が出て、俺はビクッとする。

「葵は関係ないだろ!」

「関係あるよ。俺もあの子が好きになった。

俺は女を好きになると、その女を殺したくなるんだよ。

確か爺さんもそんなこと、言ってたけど」


圭一の目の奥は真っ黒だった。

深い闇......吸い込まれるような黒。


「葵に手を出したら許さない」


「やっぱりお前には葵ちゃんの死を見届けてほしい気もするなぁ。

彼女が犯されて苦しみながら死ぬところを見ていて欲しい」


「そんなこと、させない」

俺は拘束から身を捩って抜け出そうとした。

葵のために馬鹿力を発揮するんだ.......!

だが、ダメだった。

馬鹿力は発揮されなかった。

(くそ。どうしたらいいんだ)


------------------------------------


【葵】_銀座の大葉津江のマンション


あたしは、現・羅針盤の津江さんのマンションに来ていた。

窓にはひらひらのレースだらけのカーテンがかかり、細かい装飾がほどこされたヨーロピアン調のダイニングテーブルやソファが並んでいる。

まるでモデルルームのようだ。


津江さんは両隣に白人の男をはべらせて、真っ白なソファにふんぞり返っている。


「来るのは分かっておった。羅針盤だからな。

それに何を聞きに来たのかも分かってるぞ」


「光一はいまどこにいる?」

あたしは単刀直入に聞いた。

時間がない。


「それは教えられないって分かっておるじゃろが」


「......っ」


そうなのだ。

羅針盤は安易にひとの運命を変えるような助言はしない。

あくまで見守る立場なのだ。

ときに軌道修正をしてくれるときがあるが、それは、ごく稀なことだった。


「ゆ、悠人は......」

悠人はケイシーに殺されそうになったとき、光一に助言してあたしを救ってくれた。

今回もきっと助けてくれるはず......。


「あやつは、部屋に閉じ込めておる。

あやつにもキツく言い聞かせてある。

人の運命を左右してはいけないとな」


「お願い津江さん。

教えて。光一の身が危ないんだ」

あたしは津江さんに懇願した。


「危ないな。死ぬ確率が高いじゃろな」

津江さんの言葉を聞いて、あたしは息をのんだ。


「光一が死んだりしたら......あ、あたしは生きていけない」

「生きていけるさ。命ある限り」

津江さんが落ち着いた声で言い放つ。


「いやだ。そんなの」

おもわず涙がこぼれ落ちる。


「......若いのぅ。そったら愛してるなら、もちっと素直になれっての」

津江さんが隣の白人男にキスをした。

「ハハハ。こんなふうにのぅ」


「......一億だす」

あたしは低い声で言った。


「は?」

津江さんの目が丸くなる。

「ワシを金で動かそうってのかい」


津江さんは、実は金で動くことは有名だった。


羅針盤は、未来が見える。

だから津江さんは競馬や宝くじで儲けることも可能なはずだった。

だが「身が穢れる」と言う理由から、羅針盤は賭け事をしてはいけないという戒律があった。


羅針盤には細かい戒律がいくつもあるのだ。


悠人はいま、それを津江さんに叩き込まれている。


「だめじゃよ。ほれ、帰りな」

津江さんはテーブルに置かれたバナナをむしゃむしゃと食べ始めた。


「......2億出す。3億でもいいわ」

「ほう。屋敷を売るつもりか。ほんなら、5億はだせるじゃろ」


今住んでいる屋敷はあたしの名義になっていた。

あそこを売れば、億の金が手に入るだろう。

買い手はいくらでもいる。


「5億出すから教えて」

あたしは津江さんを真っ直ぐ見つめると言った。





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