第111話_浴場に
檜山さんと俺と豆次郎の3人は白い忍者になると、部屋を出て施設の廊下を歩いた。
ポータルは道着の懐に入れて持ち歩くことにした。
キョロキョロとあたりをみまわす。
(葵はどこにいるんだろう)
「とりあえず教祖の部屋に行ってみよう」
檜山さんが小声で俺達に言う。
「わかった」
俺も小声で答えた。
庭の池が見えるガラス張りの廊下を歩く。
この廊下はゆるやかなスロープになっていて、上の階へと続いているようだ。
大勢の信者とすれ違う。
みな、白い忍者姿で、布で両目以外をおおい隠していた。
(これじゃ、葵とすれ違っても見逃してしまう)
俺は焦りで不安になってきていた。
「この階段を登った最上階が教祖の部屋よ」
「早く行こう」
最上階に上がると、廊下の床にはふかふかの赤いカーペットが敷き詰められ、あきらかに雰囲気が高級になった。
絵画や彫刻なんかも飾られている。
そのとき、話しながら歩くふたりの信者のとすれ違った。
その会話の内容に、俺は敏感に反応してしまった。
「教祖様はいまどこに?部屋におられないようだが」
「お気に入りの女と浴場へ向かわれた。その女に体を洗わせるらしい」
「何っ!」
俺は信者二人の話に反応した。
「浴場ってどこにあるんだよ!?」
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俺たちは「浴場」にやってきた。
「湯」と書かれたのれんが目立つ。
扉には「使用中」という札が掛けられていた。
「こ......このなかに葵とエロ教祖が......」
俺は、浴場のドアノブに手を伸ばした。
「光一。桜沢さんだとは限らないだろ。
別の女かも」
豆治郎が俺の腕を引き止めるようにひっぱる。
「だけど......葵はエロ教祖に目をつけられてる」
俺は豆次郎をにらんだ。
俺の頭の中では、エロ教祖が葵を指差し、
「お前、俺といっしょに風呂に入るんだ」
と言っている図が頭に浮かんでいた。
「ハハハ......すみずみまで洗ってやる」
そう言って、ニヤけたエロ教祖は葵の服を脱がせて......。
無理無理無理。
そんなの無理!!
はやく助けないと。
俺は浴場のドアノブをガチャっと開くと中にはいった。
檜山さんと豆治郎も俺に続いて中に入った。
中は広い脱衣所になっていて、木製の棚にはカゴがたくさん並んでいた。
浴室はこの奥のガラス戸の向こうなのか。
中から女の声が聞こえてきた。
「あっ。だめ。そんなの反則」
(葵!?葵の声だ!!)
俺は葵の声を聞き間違えたりしない。
やっぱり葵はエロ教祖と風呂に入らされているんだ!!
早く助けないと。
俺は浴室のガラス戸を勢いよく開けた。
中はモクモクと湯気がたっていて、よく見えない。
だけど遠くの方に葵の声が聞こえてきた。
「いやっ。くすぐったい。やめて」




