第110話_マンダラ研修会場
細い山道に入る。
うねうねとカーブが続く。
「酔った......」
そう言うと豆次郎は窓を開けて外の空気をスーハーと音を立てて吸った。
「あと少しよ」
檜山さんが豆次郎を励ます。
すっかり暗くなってしまったな。
腕時計を見る。
時刻は18時過ぎ。
夜になればエロ教祖がエロい行動をしてくるかもしれない。
早くしないと......!
(葵......無事でいてくれ)
「この道を左折して登ると研修会場なんだけど」
檜山さんは、左に曲がる細い道を曲がらずに通り過ぎた。
「車で行くと目立つから、ここからは歩いていく」
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車を脇道に隠して、徒歩で山道をのぼる。
しばらく歩くと突如、開けた空間が目に飛び込んできた。
「あれがマンダラの研修会場なのか」
豆治郎が汗を拭きながら言う。
俺たちは、茂みに隠れてマンダラの研修会場の様子を遠巻きに眺めた。
周囲は日が暮れて暗くなっていたが、敷地内は明かりが灯っていた。
通路の足元に埋め込まれた照明や、外灯があちこちに置かれている。
きれいに整えられた芝生と樹木が配置されている。
中央には大きな池があり、水面がキラキラと輝いていた。
ところどころ、水が吹き出しているところを見ると噴水になっているのだろう。
不思議な形をした石がランダムに配置されている。
その石に、マンダラに所属する人間......つまり信者が座って、なにやら語らっていた。
信者たちはみな真っ白な道着を着て、同じく白い布で自分の顔を覆い隠していた。
「白い忍者みたいな姿だな」
「あれがマンダラの修行時の恰好なのよ」
檜山さんがバカにしたように笑いながら言う。
研修会場である建物は敷地の奥にある。
ガラス張りの壁をこげ茶色の木製の板が格子状になって覆っている。
都会の高級ホテルのような、モダンなつくりのビルだった。
「こっちに来て」
檜山さんの案内で、俺と豆次郎は裏口から建物に侵入した。
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檜山さんはマンダラの研修会場の内部に詳しかった。
「一時期、あたしもここで、何度も研修会に参加したから」
「そのときからエロ教祖が仕切ってたのか?」
俺が聞くと檜山さんはしばらく黙り込んだあと
「......いいえ。教祖は最近、変わったのよ」
と言った。
「この通路はめったに人が来ない。そこの右の小部屋よ。
鍵はかかってないはず」
俺たちは、裏口から侵入したあと、誰にも見つからずに小部屋に入り込んだ。
「ここに道着と布があるから。これに着替えて。顔も布で覆い隠すのよ」
「なるほど!これなら、奴らに溶け込めるな」
「.....そろそろ、夕餉の時刻ね」
檜山さんが腕時計を見つめる。
「葵はどこにいるんだろう。みんながこんな姿だと、葵のことを見つけられるか分からない」
俺は道着を眺めながら言った。
「......どうでしょうね。
ただ教祖のことは簡単に見つけられると思うわ」
檜山さんは俺の方を見るとニヤリと笑った。




