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どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
消えた彼女を見つけだして連れ帰るまで
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第106話_【豆次郎】優香を俺の虜にしなければ

「豆くん、まったぁ?」

優香が、小走りで俺のほうに走ってくる。


今日は優香とデートだった。


「桜沢葵は一緒じゃないんだな?」

キョロキョロと視線をはしらせて葵の姿を探した。


「うん。ニセ葵が暗黒の分岐を目指すのを止めたとか。

それで、今、あたしを狙うやつはいないみたい。

比較的安全らしいのよ。

だから今日は豆くんと二人きりだよ!」


優香はうれしそうな声で俺の質問に答えた。


「だけど、相変わらず.....あいつ、あの男は俺たちの後を付け回すんだな」

俺と優香の歩くすぐ後ろを、桜沢葵の召使いである「松井さん」がついてきていた。


「あぁ、松井さん?

そうよ。葵がどうしても外せない用事があったり、比較的安全なときは、葵の代わりに松井さんがあたしを見張るの」


「桜沢さんは?今日はどこへ行ったんだ」

「葵は今日は光一とデートみたい。

明日からマンダラの研修会でしばらく会えないから。

あたしたちも、しばらく会えなくなるんだよ?」


優香はそう言うと、ぎゅっと俺の腕に抱きついてきた。

彼女の胸が俺の腕にあたって、ドキッとする。


「ねえ。今からうちに来ない?親が旅行に行っていて留守なの」

「ゆ、優香の家?いいけど......」


---------------------


優香の家は都心から少し離れた郊外の駅前マンションだった。

オートロックのキーを開けて中に入る。


振り向くと松井さんが、マンションエントランスの茂みの影に佇んでいるのが見えた。

「松井さんって自分の時間とか無いのかな。休みとかあるわけ?」

俺は松井さんの姿に視線をやりながら、優香に聞いてみた。


「彼は代々桜沢家に仕えるものなのよ。プライベートはほぼ無いわね」

「へぇ」


俺にとって、桜沢葵よりも松井さんのほうが手強く思えた。

葵の方は、光一に夢中だ。

あの女の弱点は光一。

だが松井さんには弱点が見えない。


-------------


優香の自宅マンションにあがりこむ。

室内はシーンと静まり返っていて、誰もいないようだ。


「ここがあたしの部屋」

優香に手を引っ張られて、部屋にはいる。

中は窓際に作り付けられた机に、灰色のカバーでおおわれたベッド。

大きな姿見があって、壁際には化粧品のたくさん置かれた棚がある。


「へえ。もっと散らかってるのかと思っ......」

俺が言い終わらないうちに、優香は俺に抱きついてきた。


「ちょっ......優香」

「豆くん。好き」


ぎゅっと体を押し付けてくる。


「優香。なんか焦ってない?」

俺は優香の顔をのぞきこんだ。


「えっ?焦ってるって......なによ?」

優香はちょっと頬を膨らませて俺の方を見る。


「優香は、来年の冬......運命の相手に会うんだよね」

彼女はコクリとうなずくと俺の顔を見上げた。


「そいつと会う前に、恋愛経験を重ねたいって、言ってたよね。

すこしでも楽しい恋愛して後悔しないように過ごしたいって。

でも、なんだか俺には優香が焦ってるように見えるんだけど」


「そ、そんなことない。豆くんのことが好きだから。

だからこうして」

優香がぎゅっと抱きついてくる。


「そんなに焦ったらきっと後悔するよ」


来年の冬。

優香は運命の相手と出会う。


そいつと優香が結ばれないように、俺は徹底的に邪魔をする。

......優香とその男が結ばれなければ、この世界は暗黒の分岐にすすむことになるからだ。


この世界が暗黒の分岐に進めば、無限ポータルが開く。

そうなれば俺の故郷の妹も、この世界に来ることができる。


なんとしてでも優香を俺の虜にしなければ。


暗黒の分岐に導くために、俺は優香の気持ちを焦らすことにした。

簡単に彼女と寝てしまったら、彼女は俺に興味をなくす可能性が高い。


焦らして、夢中にさせる必要がある。


優香を俺の虜にしなければいけない。

俺だけのものに。


俺はそのために、この世界の「少女漫画」や「恋愛ドラマ」

そして「恋愛映画」などで経験を積んだ。


ひとまず俺は、彼女に壁ドンすることにした。

優香の両手首を握って、彼女の身体を部屋のドアにおしつける。


「まめ......くん?」

優香はびっくりして俺の顔を見る。


「優香と俺は結ばれないっていうのは分かってる。

だけど優香のこと、大事にしたいと思ってるんだ」

やや棒読み口調だけど、俺は優香にそう言った。


そしてそっと唇にキスをした。

彼女のやわらかいくちびるを感じた。


最初からディープキスなんかしてはダメだ。

俺は唇をはなすと、彼女の顔を見つめた。


「今日はここまで」


柄にもないようなセリフと行動を取ることに違和感をおぼえたが仕方がない。

この世界の女はこういうのにときめくはずなんだ。


「豆くん」

案の定、優香も顔を赤くして俺をじっと見つめていた。

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