表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうでもいい関係でぐちゃぐちゃしてる  作者: ゴルゴンゾーラ
消えた彼女を見つけだして連れ帰るまで
101/218

第101話_ひょっとこ&おかめ


あったかくて柔らかい何かを抱きしめていた気がするんだけど。

松井さんにわきの下をくすぐられて目が覚めると「柔らかいなにか」は俺の腕から消えていた。


「ワハハハ」

くすぐったくって笑いながら目を覚ますと、昨日の誕生日会の部屋で目が覚めた。

すぐ近くに葵がいて、こっちを心配そうに見ている。


「もう酔ってない?昨夜は飲ませたりして悪かった」

「いいんだよ。こっちこそ、寝ちゃったみたいで」

頭の寝ぐせを抑えながら起き上がる。


昨日、ビールを飲んで、それから......。

その後の記憶がない。


「樫谷さん、こちらをお飲みください」

松井さんが湯飲みに入ったお茶を手渡してくれた。

「ありがとうございます......」

一口飲むと、頭痛が和らいだ。


「それで、客人は?」

「客間に待たせてあります」


松井さんを先頭に葵と俺は、ミシミシと音がする長い廊下を歩く。

角を曲がって、短い階段を登って、降りて......。

この屋敷はいったいどうなってんだ。

まるで迷路だ。


「まだ朝の6時だよ。その客人って常識なさすぎだよな」

俺は腕時計をみながら言った。

「まぁ、常識の通じない相手ではありますね」


客間に到着した。

「わたしはここに控えております。

樫谷さん、お嬢さまをお願いしますね」

松井さんは、時代劇の武士のような格好で廊下に座った。


俺は客間のふすまをそっと引いた。


8畳の客間には赤いカーペットが敷かれ、天井にはシャンデリア。

壁際にはアンティーク調の家具が置かれている。

この部屋は洋風なんだな。


部屋の中央の緑色のソファには、おかしな二人組が座っていた。


「お前ら、一体、誰なんだ!?」


-------------------


朝の6時にとつぜん桜沢家にやってきて「葵に会わせろ」と言ってきた謎の客人。

そいつらは、「ひょっとこ」と「おかめ」のお面を付けたふたり組だった。


「お前らもしかして、光一とあたしのドッペルゲンガー?」

葵が二人を見て、目を丸くする。

そうか。

顔をお面で隠してるってことは、そういうことか。


「そうだ!あたしは、お前らがニセ葵と呼んでいた」

おかめの仮面の女がそう叫んだ。


「俺は軍服ヤロウだ」

ひょっとこの仮面を付けた男がそう言った。


「ニセ葵と軍服ヤロウ!?お前ら!何しに来た」


こいつら、葵に乱暴しに来たのか!?

俺は戦いの構えをした。


「ち、違う!俺たちは今までのことを、あやまりに来たんだ」

「えぇっ!?」

葵と俺の声がそろった。


----------------


「えっ!?二人でこの世界に暮らすことにした......だと?」

俺は二人の話を聞いて、あっけにとられた。


「そうだ。俺は抹消のトリガーとやらで、この葵の世界に飛ばされた」

「やっぱ、そうだったんだ。

般若が予想した通り、ニセ葵の世界に飛ばされたんだな」

ひょっとこの話に俺はうなずいた。


「そうだ。素っ裸であの世界に飛ばされた俺は、女たちに襲われそうになった」

「まぁ、そうなるだろうな。あそこの女たちはヤバいから」


「それをあたしが助けたんだ」

おかめが、得意げに言う。

「俺は、俺の葵に出会えた。

だからもう、お前の葵には手出ししない」

ひょっとこは、おかめの手をぎゅっと握った。


「......それを言いに来たのか」

「そうだよ。あたしの世界にいると、光一は女たちにいつ襲われるか分からない。

だからこの世界で、ふたりで暮らすことにしたんだ。

この世界の暗黒の分岐を目指すのも、もう止めた。

......あたしは、それを言いに来たんだ」


おかめと、ひょっとこの二人は嬉しそうに見つめ合っている。


「スゲー幸せそうだな。この世界で暮らすって、どこで暮らすんだよ。

どこかでバッタリ顔を合わせたりしたら、また抹消のトリガーが発動するから厄介だぞ」


「うん。俺たちは沖縄で暮らす。葵の知り合いのトラベラーがホテル経営していて、人手がほしいって言うから」

「沖縄!へぇ~。いいなぁ」

俺は二人がちょっと羨ましくなった。


「ニセ葵の......衝動にはうまく対処できてんのかよ?」

俺は小声で軍服ヤロウに聞いてみた。


ニセ葵は、ワクチンの副作用で性欲が増大しているのだ。


「正直、しょっちゅう求められてキツイときもあるけど。まぁなんとかな」

「あたしは、光一に無理させたくないから、我慢することも覚えたんだ!」

ニセ葵が自慢げに言う。


「へぇ~」

俺はさらに二人がうらやましくなった。

葵は無言でそんな俺を見ている。


「けど抹消のトリガーが次に発動したとしたら、どこに飛ばされることになるんだ?

般若の理論で行くと、やっぱりニセ葵の世界に飛ばされるのかな。

それとも軍服ヤロウが不在だから、氷河期の世界に飛ぶことになるのかな」


「さぁな。もしかしたら、行ける世界の範囲外に飛ばされてしまう可能性もある」

ニセ葵が深刻な声でいった。

「そうなるともう、探し出せない。お前ら、沖縄に来るときは連絡をよこせ。

顔を合わせないようにしないと」

「分かったよ」

俺と葵はうなずいた。


「それじゃ、邪魔したな。俺たちは南の島へ旅立つ」

軍服ヤロウはそう言うと立ち上がった。


-----------------------


ニセ葵と軍服ヤロウが立ち去ったあとも、俺と葵はしばらくボーゼンとソファに座ったまま物思いにふけっていた。

「なんだか......幸せそうだったよな。

やっぱり葵と俺が出会うことで、二人の人生はより幸せになれるっていう、般若の考えは正しいのかな」


「あたし、ちょっと般若を、うたがってるんだ」

葵がぼそっと言った。


「えっ?どういうことだよ」


葵はソファに寄りかかって伸びをしながら言った。

「般若は各世界線の、光一とあたしを出会わせることをライフワークにしている」

「うん。そうみたいだよなぁ」


「般若はわざと、氷河期の世界のポータルを閉じなかったんじゃない?

わざと光一と軍服ヤロウを出会わせて、抹消のトリガーを起こした。

そして般若の狙いどおり軍服ヤロウはニセ葵の世界に飛ばさた。

あらかじめ運命づけられた羅針盤の導きにより軍服ヤロウは、ニセ葵と出会うことになった」


「まさか~。だって、トリガー発動で飛ばされたのが、俺だったら

俺とニセ葵がくっついちゃうじゃないか。

ま、俺はニセ葵のことなんか、好きにならないけどさ」


「そ......そうだよね。だけど、脳の容量を増やした頭のいい般若が、ポータルを閉め忘れるなんてこと、あるのかなって。あたしの考えすぎかな?」

葵は俺に向かって、微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ