THE LAST STORY >last letter's<
体調不良の為、最終回【Ending B】とエピローグの更新は体調の回復しだいアップ予定です。
ご迷惑をおかけしますが予めご了承ください。
また、特別編の用意もしてありますので
そちらも体調の回復ししだいになります。
今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げますm(_ _)m
こちは再掲載なので最新話更新ししだい削除するかと思います。
※この物語はTHE LAST STORY【現在非公開】のサイドストーリー Last letterシリーズ
THE LAST STORY>雪上に消えた夢<
伍長 喜久一郎の章
&
インスタ限定で書き下ろしした
THE LAST STORY 揚羽の章>last letter<
2作を下記に収録しております。
《本編THE LAST STORYとは関係ありませんがインスタで好評だったので最新話までのつなぎとして掲載させていただきます。》
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THE LAST STORY>雪上に消えた夢<
Last letter >離別の章<
伍長 喜久一郎の夢
湖畔を吹き抜ける乾いた風が、そっと頬をなで滴る汗を乾かしてゆく
白鳥の親子が水面をゆっくりと泳ぐ
喜久一郎はその姿に自身の家族のことを思い出すと
いつも後ろをついてまわっていた妹の顔が一番に浮かぶ
麻美、心配すんな..兄ちゃんは必ず生きて帰ってくるから...
書き終えた手紙に目をおとす
【麻美、兄ちゃんはな半島で凄い人に出会ったんだ
その人は普段は、ぼーっとしてるようで何かを考えていて何かを考えているように見えて、ぼーっとしてる
だけど、兄ちゃんが所属する部隊で一番頼りになって一番強い人なんだ
いつか戦争が終わったら、その人連れて遊び行こうな
半島の大きな湖の見える場所から兄ちゃんより。
追伸
その凄い人は兄ちゃんが所属する第1戦闘班の班長なんだ
麻美、班長連れて花見に行こうな
きっと麻美も班長のこと気に入ると思うから
それじゃ麻美またな。】
これが妹に宛てた最期の手紙になるとは、この時の喜久一郎には思いもしなかった。
召集された俺は陸軍大宰府訓練所での訓練を経て、半島にある大邱陸軍訓練所に入所させられた
此所でも大宰府と変わらず、朝から晩まで "わけのわからない理屈"を聞かされながら "人を殺す為"の訓練を受け続けた
大宰府にて2ヶ月、そして大邱で1ヶ月が過ぎようとした頃
俺を含め大邱の訓練生は教官に呼ばれ講堂に集められた
教官の言うには、半島での戦局が逼迫している為
俺達は卒業を待たずに戦場へ行くことになるらしい
"卒業したと言う証"を受けとるには"生きて"それを受けとらなければならない
従来なら大宰府で3ヶ月、大邱で3ヶ月の計6ヶ月の訓練で戦場行きのはずが
大宰府で2ヶ月、大邱で1ヶ月という従来の半分の期間で戦場に行くことになった
召集された時、そして大宰府から大邱へ向かうことになった時
兄ちゃん兄ちゃんと後ろをついて回っていた可愛い妹の麻美は高校生になっていた
兄が戦争に、兵隊になることを両親以上に悲しみ
行かないでと袖にすがりつき泣いていた
心配すんな..兄ちゃんは必ず生きて帰ってくるからな
泣いてすがる妹の頬を伝う涙を拭ってやった日が今では遠い昔のように感じる
僅か3ヶ月の訓練を受けただけの俺が配属された部隊は
第3特別偵察中隊という聞き慣れない部隊だった
その部隊の隊長の松永大尉
副長は岩佐中尉
二人は防衛大学の同期らしい
そして、もうひとり隊長付けの隊員で俺より若い隊員がいた
そいつの名は水川というヤツで階級は軍曹らしい
その水川の率いる第1戦闘班に俺は所属することになった
人あたりの良い隊長と気難しい副長
そして、何を考えているのかわからない戦闘班長
よく分からない部隊に配属されてしまったと思った
配属されて以降、散々な目に遭わされ続けた
気難しい副長には殴られ戦闘班長には嘲笑われ
そんな俺を不憫だと思ったのか松永隊長は副長や班長に「同じ隊の仲間だぞ、家族も同然なんだから優しくしてやれ」とよく言っていた
家族と言う言葉を聞く度に妹の屈託のない笑顔が浮かぶ
...そうか...俺は...家族を妹を守る為に此所に居るんだ...
そう思った時から俺は変わった
何がどう変わったか?そう聞かれたら答えに困るが
自分の中の何かが確実に変わった
そんなある日、俺は班長に呼ばれ中隊本部と書かれたテントに向かう
訓練兵 澤谷入ります!
何故、自分を訓練兵と呼ばないとならないのかは俺には階級がまだないからだ
澤谷くん、いや、澤谷伍長と呼ぶべきか
伍長?
そうお前は今日から伍長だ
俺の傍らに立っていた水川班長が言う
卒業おめでとう!
班長はそう言い俺の背中をドンッと叩いた
これが階級章付きの戦闘服だ
真新しい漆黒の軍服
これまで着ていた迷彩服とは違うそれは
この中隊の真の隊員と認められた時にしか袖を通すことの許されない軍服
大邱を出て3ヶ月目
俺は晴れて第3特別偵察中隊の隊員になった
季節は半島に冬将軍を到来させる頃だった
麻美、兄ちゃんはやっと兵隊になれたぞ
そう言ったら、お前は怒るかも知れないが
兄ちゃんはな、この中隊の隊員として立派な活躍をしたから
そして、これからも活躍して自慢の兄貴になるから待っていろ!
そんな風に思いながら、班長の下で戦い続けて来た
漆黒の軍服を着て以来
班長の態度は以前とは変わっていた
俺を信頼し、色々な仕事や闘い方を教えてくれた
班長が言うには、訓練中の身分の俺を甘やかさず
敢えて厳しく接して来たのだと
同じ隊員、同じ軍服を着て
俺と班長は松永隊長の指揮下で戦場を駆け続けて行く
>>伍長 喜久一郎の夢
Last letter >散華の章<
深い深い雪をかき分け踏み分けて越え敵地へ向かう
越境作戦の最前線に立つ
俺たち中隊は半島派遣軍最強部隊と呼ばれていた
敵軍には黒蜘蛛なんて渾名をつけられたりもした
その最強部隊の一員として
今までのどんな戦闘より厳しく苦しい状態下に置かれていた
第1戦闘班長の水川曹長から替えのマガジンを受け取り自身の銃に装填し敵を撃つ
越境をしたまでは良かった
だが、今は敵に追われるという状態に陥り
仲間達が、ひとりまたひとりと倒れて逝く
班長が俺に言う
澤谷伍長は下がって隊長の護衛に付けと
俺はそれを拒否した、班長はきっと死を覚悟の上で自身を囮にするつもりだと思ったからだ
だから俺は班長に自分も最期まで共に戦うと言った
麻美、この戦争が始まった時に兄ちゃんが言ったこと覚えているかい?
兄ちゃんが"お前を守る"から心配すんな..って約束したよな.. ごめんな...麻美..約束を果たせそうにない...
俺の表情から覚悟を感じた様子の班長は別の班員に隊長の護衛へ下がれと命じるが言われた隊員も俺と同じように拒絶する
皆、当たり前のように"下がることを拒絶" した
死を覚悟してまで事にあたる班長の姿を見て誰が下がれると言うのだろう
第1戦闘班は、その名の通り中隊において第1番目に戦闘を行う分隊だ
それ相応に力量のあるヤツを隊長が選んで組織している
この中隊でも一、二を争う実力を持つ水川班長の指揮下で、いくつもの戦いを共にして来た
だからこそ、みんな最期まで共に戦いたいんだ
敵の追撃は激しさを増していく
中隊も第1戦闘班も戦力を減らし続け
最早、これ迄か...そんな考えが頭を過る
俺は...考えた...考えた末に班長に妹の事を託すことにした
班長は常々、澤谷に可愛い妹が居て羨ましいと言っていた
班長には年の離れた姉が居たが、あまり離れ過ぎて居る為
寧ろ、独りっ子のような状態だったらしい
なので、年の近い兄弟が居たらなあと言っていた
高3の妹と班長は年も近い
班長はまだ20歳で俺の2つ下だった
敵の襲撃の合間を見て水川班長の傍へ行く
自分が死んだら、妹に兄は立派だったと伝えてください
そして、班長さえ良かったら妹を.. そう頼む俺に向かって班長は
『妹の幸せを思うなら生きて帰ってやれ!
お前が死んだなんて報告を俺にさせるな!この糞戦争なんかで死ぬな澤谷は生きろ!』
俺は正直、その言葉を聞いた時
涙が溢れ出して止まらなかった
自分は死を覚悟の上で戦い続けているくせに人には死ぬなと言う
その矛盾が正直わからなかった
だけども、いつだっ て班長は俺を含め班員達が生き残れるように考え自身の危険を省みず戦い続けて来た
だからこそ、みんな深く深い雪に足をとられながらも引くことなく敵と戦い続けている
そんな中、岩佐副長は松永隊長を庇い自身を盾として戦死した
俺も、班長の盾となろうと思った
この人が、この人さえ生きて居たら
いずれかの日に "この戦争を終わらせ"そして"妹を必ず守ってくれる"
そう信じて、それを俺は信じて...
俺は班長を庇うように、自身の身を敵弾に晒した...
身体中に無数の鈍い痛みが走る
班長は俺の体を抱き上げ何かを言っているようだ
だが..もう俺には判別出来なかった...
たぶん、俺の名を呼んでたんだろう
だけど俺には...別な誰かの声が...
そう、それはとても懐かしい声...
麻美の呼ぶ声が聞こえたような気がした...
途切れたかけた意識の向こうにお前の姿が...目の前の班長の姿に重なって...。
澤谷喜久一郎 伍長 越境作戦にて散華...。
桜散る季節に妹へ届いた手紙は兄の戦死を伝える手紙だった。
【Last letter】
「麻美、兄ちゃんはな半島で凄い人に出会ったんだ
その人は普段は、ぼーっとしてるようで何かを考えていて何かを考えているように見えて、ぼーっとしてる
だけど、兄ちゃんが所属する部隊で一番頼りになって一番強い人なんだ
いつか戦争が終わったら、その人連れて遊び行こうな
半島の大きな湖の見える場所から兄ちゃんより。」
兄は半島から帰って来なかった
一緒に花見しようって約束したじゃん
それに、その凄い人って誰?
名前書いてくれてなきゃ
わかんないよ...。
ひとりらの桜の花びらが麻美の目の前をひらりひらりと舞い落ちていく
兄さん、半島で停戦になったってさ
もっと早く停戦になってたら...
兄さんが死ぬことなんてなかったのに。
私は戦争そのものも、兄さんを兵隊にした日本という国も憎んでいます
見上げた空を雲が流れて行く
ただ、宛もなく行き着く先も知らず
人の一生のように。。。
>Last letter...<
___終___
もうひとつのLAST LETTER
THE LAST STORY 揚羽の章>last letter<
『雨だね、ふじ』
愛犬のふじの頭を撫でながら志帆子は滴が濡らす窓を見つめる
【誰かが言っていた雲の向こうはいつも青空】
この空の彼方、貴方の居る地は朱色の雨が降り注いでいるのですか?
発:半島派遣軍第31中隊 鷸羽【チャギハ】偵察隊属
井上 以蔵 准尉より
我が妹、志帆子と愛犬ふじへ
Shihoko Inoue / Fuji
誰の為にそれは存在し、誰の為にそれは消滅し逝く
来る日も来る日も繰り返される惨劇に俺の目は見えなくなれば良いとさえ思う
戦友の叫び声が耳から離れない
そのせいで "志帆子の声"を忘れてしまいそうだ
いつも明るく元気なお前を思うと心は押し潰されそうになる
深紅に染まってゆく視界と手は..もう二度と..触れてやれなければ
ふじの頭すら撫でてやれない
轟く砲声と悲鳴に掻き消されゆく記憶
最期に見た空に真っ黒な羽を広げ舞いゆく揚羽蝶だった。
>[fukuoka city]
夕暮れ時、雨上がりの道を愛犬と共に散歩をする
道行く街並みは、あの日の惨劇の傷痕をまだ残したまま
通りすぎる人の顔に明日への希望の色はなく暗く沈んだまま
ひらひらと目の前を黒揚羽が飛んでいる
その蝶を愛犬のふじが追いかける
『ちょっとふじ!止まって!』
リードが引きちぎれそうな程に強く引っ張っり蝶を追う
志帆子も、ふじに引っ張っられる格好になる
ひらりひらりと舞う蝶が古城の掘りが見える場所で
くるりくるりと舞い...追いついてきた、ふじの頭にとまる
クゥンと、ふじが鳴いた
そう、その時...確かに..ふじは "哭いて" いた。
遠く離れた場にいる主人の死を感じて..。
発:半島派遣軍第31中隊 鷸羽【チャギハ】偵察隊属
井上 以蔵 特務准尉より
我が妹、志帆子と愛犬ふじへ
この手紙が届く時、俺はこの世に居ないだろう
だけれども哀しむことはない
俺は見たんだ、ふじと志帆子の姿を
よくふじを連れて散歩した古城の掘りで
俺は蝶になり、ふじの頭を撫でるようにとまり
お前達の元に還る
必ず還る
例え魂だけになっても。
>[day after day]
あの日、ふじにとまった黒揚羽は
ふじの頭を撫でるように舞い
そして、古城の空の彼方へと飛んで行きました
ふじも私も..ただ哭いていました
揚羽が羽を広げた瞬間
貴方の声が聞こえた気がしたから..
【さようなら。】
__終__
THE LAST STORY
こちらの物語は最新話更新後、削除するかもです。