THE LAST STORY>RELOAD<最終話 ③
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最終話 この汚れた世界に愛を注いで。③
ヘリのドアガンにより地上の抵抗は皆無になっていた。
水澤はミサイル発射基地の入り口のドアを蹴り破り施設内へと突入する
この施設に関する情報も施設内の造りの見取り図も何もない
水澤は自身の感覚を研ぎ澄まし全身をセンサーに変えるかのように自身の勘だけを頼りに施設内の通路を駆け抜けて行く
発射場所は地下なら発射のための上空に向かう円筒状の筒みたいなデカイ穴が中央にあるはず
水澤はそう思い下へは向かわず、ひたすら中央部分へと向かう
その途中に施設に残っていた北韓軍兵士と遭遇し水澤は抜刀し切り伏せて走り続け
通路の左右の部屋から飛び出して来た複数の北韓軍兵士が通路を塞ぐようにして
先頭の敵兵二人は膝立ちで銃を構え、その後ろに居る兵士は立ったまま銃を構えて向かって来る水澤に銃撃を始める
水澤は敵が銃撃を始める少し前に飛び上がり天井がまるで地上かのように駆け抜け
敵兵は天井を駆け抜けた水澤の方にふりかえり銃撃しようとする
天井を駆け抜けた水澤は宙返りし床に着地すると同時に敵兵士の方へと突っ込み、ふりかえった敵兵士に片手平突きの一撃を加え
『狭い場所でダマになるなと習わなかったのか?』と言って
突き刺した刀を引き抜くと同時にAKRを発射し敵兵士全員を吹き飛ばし
再び中央部分へと向かって走って行く
その途中に
ブーッブーッブーッ!と音が鳴り
通路の途中に設置してある赤いパイロットランプが回転し始める
ヤバい!と水澤が思ったとたんに自分が思っている以上のスピードで足が勝手にうごき走り出す
途中にまた現れた敵兵士に『邪魔だ!どけぇー!!』と怒鳴り
敵兵士に体当たりして敵兵士をふっ飛ばして走り
水澤の視界に吹き抜け状になっている場所が見えてくる
ぐるりと円形の通路の途中に上と下に向かう階段があり
水澤は円形に張り巡らされた手すりのある場所から下を覗く
円錐形のミサイルの上部が見え
その更に下から白煙が上がっているのが見える
水澤は手すりを飛び越え下に向かってダイブする
ミサイルの上部から中部に差しかかった瞬間にAKRを発射し
ミサイル中部に着弾しドカァァァァン!!と大きな音を立て爆発し
ミサイルの上部は左に傾き円形の通路に衝突し
中部から下は、その逆方向に倒れ、推進ロケットの噴射に押され壁が崩壊して行く
水澤は自身が放ったAKRの着弾の爆風に飛ばされ、ミサイル中部より下の方のミサイル下部が倒れた反対側の円筒の通路の手すりを掴みぶら下がっていた。
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その頃、キムウンジョンを護送していた榊達はキムウンジョンを縛り特殊装甲車の床に転がして、タバコを吸いながら
キムウンジョンを黙って見ていた。
すると突然、キムウンジョンは笑い出し
それにムカついた榊は『何がおかしいんだよ!このブタ野郎!』と言ってキムウンジョン蹴り
キムウンジョンは反対側に居る川中の方へと転がる
そのキムウンジョンを川中は蹴り返し
『自分の無様さに笑えたのか?』と聞く
キムウンジョンは、我々のミサイルを阻止したところで、あの男は死ぬだろうと言い再び笑い出す
『水澤さんが死ぬわけねぇだろ!』と言ってキムウンジョンの背中を三上は踏みつけ
『あの人を殺せるヤツなんざ存在してねぇんだよ!』
キムウンジョンは、それでも笑い続け
『捕まって頭がおかしくなったんじゃねぇの?』
『コイツは元々イカレてるだろ。』
『確か違いねぇわ!』
と榊達が笑っていると
何もわかっていないチョッパリ共、あの核ミサイルは不発を防ぐ為に時限式になっている
つまり、発射を阻止したところで無駄だと言うことだ。
そう言ってキムウンジョン高笑いする
『時限式だと?』
「こちら榊!」
「こちら副長の西野だ。」
「副長、ミサイルに時限式の弾頭を搭載することができるんッスか?」
「時限爆弾が存在することは知っているだろう、ミサイルの弾頭も不発を防ぐ目的で時限式の...」と西野副長は、ここまで言いかけて「まさか!核に...」
「キムウンジョンの野郎が、そう言ってんッス!」
「わかった、すぐに連絡させる!キミたちはキムウンジョンをこちらへの護送を続けろ!」
「了解。」
『このブタ野郎!早く時限爆弾のスイッチをよこしやがれ!!』
お前達が押した、お前達が壊したと言って
フッハハハハハハハ!とキムウンジョンは高笑いする
キムウンジョンを捕縛した時にもキムウンジョンは同じことを言っていた。
車列を止める為に行ったことが裏目に出てしまったことに榊達は気づき
水澤さん!絶対に生きて帰って来てくれ!と榊達は心の中で言い
『この糞ブタ野郎!もしも水澤さんが死ぬようなことがあったら、てめぇも生きてられると思うんじゃねぇぞ!ぜってぇ殺してやるからな!』
運転している森村はそう言ってアクセルを踏み込み最高速度で15本隊へと急ぐ
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15中隊の戦闘部隊の使っている通信機は互いの距離が10㎞以上離れると通信出来なくなる。
つまり、榊達と15中隊本隊との距離は10㎞圏内に入っていることになる。
西野副長は、戦闘指揮所の通信機を使い、「緊急を要する事態だ!早く繋いでくれ!」と
すぐに15通信隊に連絡を取り、水澤の無線に繋ぐように指示を出すが
「繋がりません!!」と水澤達の黒装部隊専属の赤坂安莉が返答する
「水澤少尉の識別信号は?」
「まだミサイル発射基地に...」
「どうにか繋げんか?」
『桜井さん、城咲さん、何か方法はないの?』と奈月ありすが二人に聞く
『少尉の無線が壊れてるから繋がらない。』
『どうにか伝える方法は?』
『受信側が壊れてたら...無理よ。。。』
『水澤少尉が敵のミサイル基地から脱出してくれることを祈るしか...』
「水澤さん!水澤さん!応答して!水澤!!」と安莉は涙声で発信を繰り返す
だが、水澤からの応答はなかった。
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その頃、水澤は手すりを乗り越え通路にしゃがみこんでいた。
自身が放ったAKRの着弾で飛散したミサイルの破片が身体のあちこちに刺さり、おびただしい出血をしていた。
水澤は通路の壁にもたれかかり
ふぅふぅふぅふぅっと呼吸が荒くなりながら上を見上げ
もしもの場合に備えて天井を塞がなければと思い
最後の力を振り絞り立ち上がりAKRを上に向け構え
残弾2発を天井を塞ぐ為に発射しミサイルサイロの出口のやや下あたりに着弾爆発し
瓦礫が散らばり降り注ぎ
壁が崩壊し
あたりが真っ暗になる。
発射の警告音もパイロットランプも止まり
傾いていたミサイルの推進ブースターが傾いたミサイルを押し上げようとパワーが上がるが、傾いたままのミサイルを打ち上げられずに圧力だけがかかり
下の方で大きな爆発が起き爆風が上へ突き抜けて行き
その爆風は塞いだ天井に達して跳ね返り下に向かって振動するように圧力がかかって円形の通路を上から順番に破壊しながら
水澤の方へと向かって圧力と振動と瓦礫が降り注ぐ
水澤はなんとか身体を転がし横の通路に入り
『まさか、北の糞ミサイルと心中するはめになるとはな...』
そう独り言を言ってタバコに火をつける
〝人を殺して生きる者は自分もまた殺される覚悟を持たなければならない〟という言葉を思い出したあと
水澤の脳裏に産まれた時のことや胸の奥底に閉じ込めていた暗い過去
そして安莉達との出逢いや詩音や榊達、そしてナユン、サヤ、ツユ達との日々が映画を観ているように浮かんで消えてゆく。
...安莉ちゃん、まりあちゃん、ナユン、ツユ、サヤ、榊、川中、黒木、森村、沢田、三上...みんな...ごめんな。。。
水澤の口元からタバコが落ちて水澤の血でジュッと音をたて〝火が消える〟
そして目もくらむような閃光と高温の熱が発生し
水澤の身体が閃光と共に消えてゆく。
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Dシステムに今までにない高エネルギーの反応が現れ
その反応に『嘘でしょ...』と桜井満里奈が呟くように言うのと同時に
「シグナルロスト」の文字が安莉の通信機の画面に映し出される。
安莉は泣きながら「水澤さん水澤さん水澤さん!応答して..お願いだから...。」
「敵、ミサイル基地地下にて高エネルギーの発生を確認、核の爆発と推測..推測....され...ます。。。」
桜井は涙声で15本隊へと報告する。
「水澤少尉は?」と梶原隊長が聞く
「敵の...ミサ..イル基地の....地下にて...シグナル...ロストです。」
「.....間違いないのか?」
「......。」
「しっかり返答せよ!本当に敵ミサイル基地でシグナルロストしたのか!」
黙ったまま泣いている安莉に代わり
「間違いありません。」と奈月が答えるが、奈月の声も涙声になっている。
その報告に梶原隊長は西野副長の方を見て首を横にふり椅子に倒れ込むように座る
『隊長殿。。。』西野副長はそれ以上言葉にならず
梶原隊長と同じように椅子に座りうつむく
「こちら佐脇、敵の掃討を完了!これより帰投する。」と佐脇和馬隊長補佐からの無線
「おい!梶さん!聞いてるか?」
「...佐脇か、掃討ご苦労..すぐに帰還せよ。」
梶原隊長の声が、いつもと違っていることに気づき「梶さん?何かあったのか?」と聞く
「帰還しだい皆に話す。以上だ。」
佐脇隊、藤井隊、伊藤隊ら15の各隊と、キムウンジョンを護送して来た榊達が15中隊の戦闘指揮所に集合する。
戦闘指揮所にキムウンジョンを担いだ榊が入り
『隊長殿、糞ブタ野郎の捕縛を完了しました!』
そう言って物を投げ捨てるようにキムウンジョンを投げ
ドスンとキムウンジョンは戦闘指揮所の床に落ちる
『榊准尉、ご苦労。』と目を真っ赤にした梶原隊長が答える
『水澤さんは?』と榊は梶原隊長に聞くと、西野副長が『そのことについては、のちほど隊長よりお話がある。』と答えて榊と共に
戦闘指揮所の外に出て
整列させたあと部隊員に後方部隊と合流することを命令し
各隊員は装備をまとめ、それぞれの装甲車へ乗り込む
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安莉は泣きながら「水澤さん!応答して!お願い...。」と言いながら席を離れようとしない
『赤坂さん、もうすぐ本隊が戻って来るわよ。出迎えの準備しなきゃ。』と奈月が言い
安莉からレシーバを取り上げる
涙目のまま奈月を睨み付けてレシーバを取り返えそうとする
バシッ!と乾いた音がして
『いい加減になさい!まだ少尉が死んだと決まったわけじゃないでしょう!』
『シグナルを発信する機械が故障したのかも知れないし、壊れただけかも知れないでしょう!』
GPSと連携している自身の居場所をシグナル出すマイクロチップは兵士の体内に埋め込まれていて心臓が止まったらシグナルロストを発信するように出来ている
要するにシグナルロストは戦死を意味する
そのことは、奈月ありすも充分承知している
奈月は気休めにもならない言葉を言ってしまった自分自身を憎んだ
だけど、水澤が死んだという事実を受け入れることが出来ない自分が居るからこそ安莉にそう言ったのも事実だった。
重苦しい空気が15通信隊を包む
森下まりあはシグナルロストの表示を見た時から、ずっと泣き続けている
誰ひとりとして言葉を発しない時間が続き
聞きなれた15中隊の装甲車のエンジン音が聞こえて来る
『...総員、整列し戦闘部隊を出迎えよ。』と通信主任の小山が命令を出す
安莉とまりあは奈月に付き添われ整列しに向かう
最終話 この汚れた世界に愛を注いで。④
へと
ーーつづくーー
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