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第19話 The City of Promise
メテオストライク作戦で北韓軍に勝利した15中隊は大田に帰還
ナユン、ツユ、サヤらは勝利の祝いと城咲茜から送られて来ていた黒装の軍服を携え15中隊の営舎を訪れていた。
『オッパ!サランヘヨ!!』と言いナユン、ツユ、サヤが水澤に飛び付くように抱きつく
『いきなり愛してるゆーな!つか、痛い。』
『オッパ!ミヤネダ(ごめんなさい)。』
『ごめんなさい!』
『だいぶ韓語わかるようになったんや』
『サランヘヨやミヤハムニダぐらいの単語を覚えれねぇ程、バカじゃねぇよ。』
『サヤさん、ナユンさん、ツユさん水澤さんは先の戦闘で疲れてるんだから、あんまり変な真似しないでね?』
毎回毎回、邪魔するのやめてよと安莉は思っている
半島で再開した時も三人の邪魔が入って感動の再開にもならなかった
少し膨れっ面の安莉に
『すみません。』とサヤが頭を下げ
『そや、ナユンオンニ!あれを。』
『軍服出来たよオッパ!』
水澤に飛び付く前に地面に置いた大きな紙袋を見せ、安莉達に配って回る
『わあ!凄い良い感じ!』と森下まりあは自分の身体の前に黒装の軍服をあて、笑顔で城咲とナユン達に御礼を言う。
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祝勝会と称して15官舎の体育館のようなところでナユン、サヤ、ツユらはナインスのピット曲を数曲披露した後、一度幕が降り
再び幕が上がるとナユンはチマチョゴリに、サヤは着物にツユはチャイナドレスに着替え
半島統一旗を振りながら再び登場し、自分達それぞれのソロの曲を披露
日本人、韓国人、台湾人、民族の垣根を超え結ばれたナインスの絆は、水澤の言う何民族だろうと同じ人間という言葉の証のようにも見えた。
ユシン、ソンミン、ヤンジヌ隊との戦いとナユン、サヤ、ツユらの姿
対照的で印象的な光景
何民族であれ、同じ人間であるなら相容れ解り合える存在の象徴がナユン、サヤ、ツユ達なのかも知れない。
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ナユン達の15中隊への祝勝会を終え
水澤は独り営舎の屋上に居た。
水澤は、これまでの日々を思い返していた
戦争が始まって1年以上経過し2度目の冬を迎え、半島の冬の香りに身を委ねつつ
九州の山間部で安莉とまりあに出逢い、そして無様な姿を晒し引きこもっていたキャンプ場、そのキャンプ場で死にかけながらも、なんとか生き残り
前哨戦基地だった学校で兵士になり、ジョンデの送り込んで来たヤツを殺し
その送り込んで来た本人のジョンデをも...
その後、ミンスとの対決を避け霧島へと
その霧島から反攻作戦を開始して九州から北韓軍を追い払い、この半島にやって来た。
味方の犠牲を払ってまでソウル奪還作戦を行って失敗し続くチェチョン戦役でも..作戦の失敗で多大な犠牲を出し
そして、ヨンジュの事件、その事件をきっかけに安莉やまりあまで半島に来ることになり
菅野康貴隊の後方部隊が襲撃に遭い
菅野大尉は負傷し戦線を離脱
菅野隊のヨンジュ事件の当事者である今村美桜らの15への加入
チョンジュで城咲の事件で菅野隊から加入した一木隊に犠牲が出て
そして、その事件を乗り越えた矢先に杉本をルート4事件で失い
色々な思いが水澤の中を駆け巡る
最初は死ぬつもりで国に残ったのに、今はその逆で生きる為に戦っている。
そんな風に思っていると
『だーれだ?』と言い水澤の両目を手で隠す
水澤は、まりあが自分の両目を隠し、安莉が声をかけてたことを見抜き
『声色を変えてないと誰だかすぐバレるよ安莉ちゃん。そして、この手はまりあちゃんかな?』
『どうしてわかったんですか?』と驚いたような、まりあの声
『わかるの私だけだと思ったのに。』と安莉が言うと水澤は『長いこと戦場に居ると感覚や勘が鋭くなるモンだよ。』
水澤の言葉に嘘はない、水澤は自身の感覚を研ぎ澄まし、幾多の戦いをくぐり抜けて来た。
『そうなんですね。』
『てか、久しぶりだなぁ。こうやって三人でお話するの。』
『どれぐらいぶりかなぁ?』
『あの学校以来じゃない?』
『そうだね。』
『半島に来てからは、ナユンさん達が水澤のとこに、付いて回っててお話があまり出来なかったし』
『あ、そうだ!水澤さん?』
『ん?』
『あの手紙、三崎軍医から貰いました?』
『ああ、もらったよ。』
『あの...』
『何故、緋音は三年前に戦争を予見してたのか?知りたいんだろ?』
『やっぱり緋音さんが水澤さん』
『正解。』
安莉はマイクを持ってるように手を握り水澤の前に差出し
『では、お聞きします。何故、三年前に戦争が始まるのがわかったんですか?』
『さあ?なんでだろうね?』
『真面目に聞いてるので、真面目にお願いします。』
『あの頃の俺は破滅型思考に囚われた人間だった。』
『破滅型思考?』
『要するに...この世界が終わって終えば自身も終われると思っていた。』
『何故...そんな風に...』
当時の水澤の状況を知ることは出来ない
だけど、その後、水澤本人が本名で送って来た手紙で知ることは出来たと思う
そのことを二人は思い返して
『でも、水澤さんは九州では私達の為に、半島ではナユンさん達の為に未来を切り開こうと...』
『今の俺と昔の俺は違うかも知れない、もうあの頃の俺じゃあないしね。』
『その、あの頃という水澤さんの過去、そして緋音と名乗ってた頃に...何故?わかったんですか?』
『んー...。あまりに時間が経ち過ぎて...忘れちまった。。。』
『え?』
『なんてな嘘さ。』
『んもぅ、意地悪なんだから。』
『まあ、破滅型思考の人間が考えそうな終末論だと思えば良いさ
あの頃は北韓がミサイル発射を繰り返し、核の実験も幾度も繰り返してたから
今日、明日にでも戦争が起きるんじゃないかという緊張感が南韓のみならず日本もあった。
とはいえ事を起こす時期、そのタイミングは相手が身構えている時に始めてしまうと北韓自身も多大な犠牲を払うことは避けられない。
それに当時クランプ政権が北のミサイル発射の乱発に対し米海軍第7艦隊の空母打撃軍を日本海に展開させて北への軍事的圧力をかけ
クランプを恐れるキムウンジョンは一時的にミサイル発射と核実験を停止した。』
『今思えば、確かにあの頃はいつ戦争になってもおかしくない空気感が日本にもあったし、Jアラートが鳴る日もあったね...。』
正直、そんな状況に便乗した内容の手紙だと思ってた部分が私達の中にあった。
『だから事が始めるのはクランプ政権が終わってからだと思ったし
事実、クランプ政権が終わってヘイデンになってから北は事を起こした。
三年という月日が南韓国、日本国の北韓への警戒心を薄れさせるには充分の期間だったと思う
日本について言えば、この半島が北韓にほぼ制圧されても、対岸の火事ぐらいにしか感じていなかっただろうし、北の恫喝は、ただの脅しで〝日米安保という保険が日本にはあって日本が戦争に巻き込まれるわけない〟という思いがあって
北の恫喝が本気であることに気づいた時には遅すぎた
北韓の核を使うことを辞さない覚悟があるという言葉が首都東京への核攻撃という憶測がひろまり
その隙を付くように中京への核攻撃を含むミサイルの飽和波状攻撃に始まり
ほぼ同時期に北韓軍は日本へと侵攻を開始した。』
当時、確かに首都核攻撃の危機が国内を包み皆一様に東京が危ないという認識が広まっていた。
『北韓の行動の背景には、中国の覇権主義と習近衛の台湾への執着が絡んで、更にロシアによるウクライナへの行動
力による現状の変更がまかり通る世の中になり、キム・ウンジョンが核を使ったことで、核に対する認識が変わった
使えない核から、使える核への世界の認識が核大国の米と露、そして中国、この三者のバランスを北が壊してしまった
ただし、核で核の報復は相互確証破壊を生む
そのせいで、使える核を持つ北に米国は相互確証破壊を避ける対応しか取れなくなった。
そのツケを日本と南韓が払わされてるのが今の現状ということ。』
『ちょっと待って!クランプ政権が終わることも予見してたってことですか?』
『米国はクランプ支持と反クランプ派で二分されてただろう?だから長続きしても三年もつかどうか?で判断してたかな?まあ、戦争を予見できたとしても、それを止めれなければ何の意味もないけれど...』
『あの頃、クランプの行動で戦争の危機が回避されたから、その三年後に戦争になるなんて誰も考えなかったと思うし、例えそう言われても..信じることが出来たのか?わからない..』
『実際、私達だって..こんなこと言うと失礼かも知れないけど、信じてなかったから....』
『本当に、ごめんなさい。』
『仕方ないことだよ。仮に逆の立場だったら、俺だって信じてないさ。だから謝る必要はないよ。』
『水澤さん。。。』
『それにしても、日本を開戦に引きずり出す手法といい、無人ドローンを特攻兵器に使いイージス艦や対空火砲を無力化した北のやり方は見事だったと思う
その後の電撃戦も、まあ、過去の第二次世界大戦での米国のやり方とナチスドイツの電撃戦を真似た部分もあるだろうけどさ。
とはいえ、あの手紙を未だに持っていたことに覚えてたことに、そして俺と緋音が同一人物だと気づいてたことの方が驚いたけれどね。』
『キャンプ場に居た時、なんとなく前に会ったことがあるような感じがしてて..もしかしたらと思ってました。』
『それでか!西野さんが水澤さんを私達のところに連れて来るって言った時、まりあちゃんが少し躊躇というか..様子が変だったの。』
『うん。なんだか逢うことが水澤さんを傷つけてしまう気がしてて...つい返事に困っちゃってみたいな。』
『私は水澤さんと一緒に暮らしてた時に、なんとなく感じてたぐらいだったけど、キャンプ場で戦闘が起きた時、〝伏せろ!〟って最初に声を出したの水澤さんだったから、何故?敵に気付いたのって思ったことの答えは緋音さんと水澤さんを結び着けたの、予見できた人なら、なんとなくだけど同じように敵が来るのを予見できるじゃないかなって。』
『でも、意地悪だよね?緋音の時は印刷した明朝体の手紙で、水澤さん本人の時は手書き...あ?』
『めっちゃやられてる私達』
と言って二人は笑う
『あの時点で気づいとけば良かった。』
『過ぎたことは取り戻せないから...仕方ないさ気にする方が馬鹿らしいだろ』
『遠回しに馬鹿って言われてる気がするのは気のせい?』
『気のせいです。たぶん、きっと、ようわからんけど』
『ようわからんけどって、やっぱり馬鹿にしてるじゃん』
【黒装安莉ver】
半島の突き刺すような寒さももろともせず安莉とまりあは息を白く染めながら
【黒装まりあver】
水澤を追いかけまわし束の間の三人だけの時間を過ごした。
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翌日、参謀部の名の下でオペレーション レッドストームの再開が下令され
半島派遣軍は再び北韓の支配にあるソウルの奪還作戦に向けて動き出す。
大田出立を前に水澤は、ナユン、ツユ、サヤから半島統一旗を受け取り
『ソウルを奪還しお前達を必ず出迎える。ソウルを俺達が奪還したら祖国統一義勇軍と共にソウルに来い!』
『オッパが行くなら、一緒に行く!!』
『義勇軍はまだ装備品の統一と扱いに慣れてない
今回のソウル奪還は派遣軍がナユン達に代わり行うから、ここで待っていろ!』
韓国製の装備品、戦車、航空機等、整備不良で故障多発し使える代物じゃない
米国から半島派遣軍へと供与される武器等を祖国統一義勇軍にも供与し
その錬成強化、訓練等の遅れが出ている。
その為、今回のソウル奪還作戦は派遣軍独力で行うことに決定した。
『約束する必ず奪還してナユン達にソウルを返す。』
『オッパ、ありがとう!気をつけて、行ってらっしゃい!!』
『ソウルで逢おう!』と水澤ら15中隊員はナユン、ツユ、サヤに言い
戦闘装甲車に乗り込み、一路ソウルを目指す。
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第20話 P L E D G E へと
ーーつづくーー
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