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第17話 The Biggest Battle Ever
作戦前夜
水澤は自身の黒装部隊を集め
『この作戦は今まで俺達が経験して来た戦いよりも激しい戦いとなるだろう。だが、俺達は必ず勝利する!
その勝利の先に再び平壌へと続くビクトリーロードが待っていることを胸に留置いて欲しい。』
『俺らは無敵の黒装部隊ッス!絶対に負けないッスよ!なあみんな!!』と榊淳也が言う
『おお!当たり前だ!!』と他の者が答え
『今夜はゆっくり休め勝利の為に。』と水澤は言い
『了解!!』と皆が声を揃え返事をする。
今回の作戦は、ただの作戦じゃない岡村田が俺達を潰す為に用意したシナリオ
必ずユシン、ソンミン、ヤンジヌら敵主力部隊が待ち構えているはず
この戦いは半島の形勢を決する戦いなるだろうと水澤は思っていた。
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翌日、早朝に水澤らを運ぶヘリが到着
これに先駆けて先行していた影平、森岡両大隊ら地上軍は着々と作戦地域へと進軍し続けていた。
ブラックホークより打電
敵部隊を発見座標を送る
送られて来た座標を赤坂安莉が砲撃隊に伝えピンポイント砲撃が開始される。
砲撃を逃れようと逃げて行く北韓軍を影平、森岡両大隊が捕捉して駆逐して行く
ブラックホークから逐次送られてくる情報を元に砲撃と駆逐を繰り返しながら
ヘリ輸送部隊の出発の時が近づく
15中隊長の梶原は水澤ら先発隊に『私が行くまで決して死ぬな!そして私と共に帰ることを貴官らに命ずる!良いな!!』
水澤らは『了解!隊長殿!!』と答え梶原隊長に敬礼したあとヘリへと乗り込んで行く
その光景を西野詩音と永嶺優華は通信隊のテントから見守り
次々と離陸して戦地へと向かうヘリを見送る
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パタパタパタパタとヘリのローター音が影平、森岡両大隊に近づいて来る
デルタ型に編隊を組んだ輸送ヘリが上空を通過して行くのを両大隊は見送り
両大隊も作戦地域へと進軍速度を上げる
その間もピンポイント砲撃は続けられている
味方の砲撃に巻き込まれないように輸送ヘリは高度を下げ地を這うヘビのように木々をさけながら作戦地域へと突入して行く
水澤らを運ぶヘリが作戦地域に到着し、ヘリから飛び降りるように地上に降り
『身を引くして扇状に展開を開始!』と水澤は号令を出し
部隊員が展開を開始
『1度、僕ら第2小隊は水澤さんの指揮下に入ります!』
『伊藤、悪いな。』
『いえいえ、久々に貴方の指揮下に入れてワクワクしてますよ。』
『相変わらずだな。』
『貴方も』
『違いねぇわ。』
『第2小隊は前方、左右の木に爆薬を仕掛け爆破し弾除けを作れ!!』
『第1小隊はカバー!』
それにしても、あまりにも簡単に着陸できた..何かおかしいと水澤は感じていた。
ドォーン!と爆破音と共に木々が倒れ前方と左右に弾除けが出来る
「こちら水澤、砲撃を要請する。」
「こちら城咲、了解しました。砲撃擊点は今朝いただいた座標でよろしいでしょうか?」
「ああ、それのAプランで頼む!」
「了解しました。すぐ砲撃させます。」
出撃前に水澤は城咲に砲撃座標を書いた紙を渡していた。
その紙には砲撃擊点を記したA~Zのアルファベットの横に砲撃座標を記し
座標を口頭で伝える手間を省く目的と乱戦になった場合に備えアルファベットだけで砲撃できるようにして
敵部隊との戦闘に集中する目的を含めていた。
空を切り裂く音のあとにドカンドカンと砲弾が着弾し始める
その砲撃を逃れようと扇状に展開している水澤達の前に敵兵が姿を現す
『総員!撃ち方始め!!』
水澤の号令に即時反応し敵兵に向かって銃撃を開始
未だ着弾し続ける砲撃に退路を断たれて敵兵はバタバタと倒されて行く
『左にも敵です!!』と伊藤が叫ぶ
『俺に任せろ!』
バンバンバンバンバン!!
左に現れた敵兵を川中が矢継ぎ早に狙撃し撃ち倒す
『逃がすかよ!』川中は即席の弾除けの前にまて駆け込みながら狙撃し続ける
バンバンバンバン!!
移動しながら正確に狙撃する川中陽二を伊藤は見て
訓練生だった頃の彼と今の彼ではまるで別人だと思っていた。
黒装部隊の黒い悪魔の川中陽二、黒い悪魔の名の由来は彼の愛煙しているブラックデビルという煙草が名の由来だ。
そして、砲撃が次第に止み始める
土煙の向こうに無数の影がうごめいているのを見逃さず
『伊藤隊は待機!』と水澤は言い『伊藤!援護を頼む!!』
『第1小隊!俺に続け!!』
黒装部隊がうごめく先に突入して行く
バンバンバン!!ガウン!!ガウン!!と銃撃音が聞こえ
次第に土煙が風に流され消えて行く
そして伊藤ら第2小隊の視界に黒装部隊が映る
彼らの足元には敵兵の亡骸だけが横たわり
黒い疾風という名にふさわしい早業で敵を駆逐殲滅し
黒装部隊は傷ひとつ負わずに立っていた。
パタパタパタパタと第二陣が乗った輸送ヘリが近づいて来る
第二陣が安全に着陸出来るように扇状展開で防御線を張り
第二陣、佐脇和馬の率いる打撃軍の到着を待つ間に倒した敵の所属を調べる
水澤の予想通り、ユシン、ソンミン、ヤンジヌの連合軍
厳しい戦いになるかも知れないだが負けるわけにはいかない
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佐脇隊も無事に作戦地域に到着し水澤らと合流
水澤は第2小隊の指揮権を伊藤に戻し
N高地攻略に着手する
左の高地をN、右をの高地K高地と作戦前に呼ぶことにしていた。
左右の内、左のN高地の方が敵からの観測を受けやすい高さにある
そこを押さえるか、もしくは高地の敵を自身らに釘付けにし動きを止めることを水澤は考え黒装部隊はN高地へと向かって行く
その途中「城咲、Dで頼む。」
「了解です。」
自身らが左手の高地へと向かって行くその背後にピンポイント砲撃が始まり
敵の目が砲撃に向いている隙にN高地の下に到着
チッと水澤は舌打ちし『螺旋陣地かよ。』と言って
無言で右、左、真ん中と手で合図を送る
それに応じて再び扇状展開し木を背にして身を隠す
蛇がとぐろを巻き獲物を狙うかのような
この螺旋陣地を抜くには砲撃か航空攻撃の支援が必要だと考え
扇状展開した状態で休息をとらせる
「少尉の居る場所の前方に敵の通信の波形」と城咲が無線で知らせてくる
桜井満里奈のDシスと通信隊の通信機をリンクさせ担当部隊の安全の為のモニタリングが出来るように城咲は通信機をアップデートしている
「俺達は今、左の高地の下に居るからな、その前方に敵が居ても驚かねぇよ」
「もちろん、少尉達の居場所も、しっかり把握していますけど?」
「敵に教えんなよ。」
「ご心配なく。」
『敵!!』
ガウン!!ガウン!!ガウン!!
バンバンバンバンバンバンバンバン!!
無線の向こうから銃撃音が聞こえる
砲撃できたら良いのに...と城咲は思いつつもブロークンアローのタイミングはまだまだ先だということをわかっていた。
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梶原中隊、池内中隊、片桐中隊、石動中隊が作戦地域に到着し
しばらく遅れて影平、森岡両大隊も作戦地域に到着した。
それを待っていたかのように前後左右から敵兵が飛び出して来て
互いに互いを掴める程の距離での乱戦になる
水澤らが居る高地の下でも水澤らの前に敵が現れ乱戦状態になる
水澤達は高機動戦闘を展開し敵を振り回し、振り切って距離をとり扇状展開で銃撃を加え続け
敵の第一波を退けて、再び高地の下に戻り様子を伺いつつ
主戦場になっている中央の状況を城咲に聞く
城咲の報告に水澤は「砲撃が最大に届く範囲に集中砲撃を加えさせろ!」
「了解しました!」
ビューン!ビューン!ビューン!と空を切り裂く音が主戦場になって居る中央部を飛び越えて中央山脈の出前あたりに次々と着弾する
その着弾音を聞いた水澤は「伊藤!!敵が砲撃で怯んでいる内に態勢を立てなおさせろ!」
「言われるまでもなく..」
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
「すぐに立て直させます!」
ドォーンドカン!!ドカン!!ドカン!!ドォーンドカン!!
銃撃音と着弾音が鳴り響く
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桜井のDシスを見ていた奈月ありすは、敵味方の距離が超至近距離での乱戦になっている様子に
『西野秘書官殿、ご決断を。』
奈月の言う決断とはブロークンアローの発動を意味している
詩音は静かに頷き
『ブロークンアローよ!!』
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赤いパイロットランプが光りながら回転し
「ブロークンアロー!」
「ブロークンアロー!」
「全機スクランブル!!」
大邱航空部隊が次々と発進して作戦地域へと飛びたって行く
そして日本海に展開していた最新鋭護衛空母いざなみにもブロークンアローの信号を受信し
いざなみからも次々と戦闘機が発艦し作戦地域へと飛び立つ
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『ブロークンアローです閣下...』と月島零参謀次官か山口喜久参謀総長の部屋に入って来る
『西野くん、永嶺くんキミ達は何故?』
『閣下、お気持ちは御察し申し上げますが、今戦地にて派遣軍の未来をかけた戦いが行われております。』
『派遣軍の未来ではなく、我々参謀部のであろう。』
『どちらにせよ、我々は戦っている彼らを信じることしかできません。』
『ブロークンアローか...さぞ岡村田は愉快な気持ちであろうな。』
山口参謀総長の言葉通り
岡村田はブロークンアローの発動を聞いて両手を叩いて喜び
これで参謀部も派遣軍も終わりだとほくそ笑んだという。
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ブロークンアローが発動され次々と戦闘機や爆撃機、そして日本の技術の結晶の純国産ステルス攻撃戦闘機神州が飛来して来る
神州は対地、対空、対艦等をこなし、特殊ミサイル22式を搭載
22式特殊ミサイルを使い左右の高地砲撃に邪魔な尾根を破壊し
その尾根上空から遠距離ミサイル20式を発射し精密爆撃をやってのける
一方、作戦地域では航空部隊によるミサイル攻撃のあと機銃掃射し味方に群がる敵を薙ぎ倒して行く
神州が尾根を破壊したことを確認した城咲は安莉に第1小隊の砲撃支援を引き継がせ自身はサポートに回る
破壊により尾根が低くなったことを安莉は水澤に伝え
水澤から砲撃擊点の指示をあおぐ
ブロークンアロー以降の砲撃指示担当は安莉にと小山に伝えていた水澤は城咲と同じように砲撃プランの紙を渡していた。
「Cだ!」
「了解!!」
「こちら15通信隊、赤坂です、これよりN高地の砲撃を行いますので砲撃に巻き込まれないように航空隊の皆様は気をつけてください!」
そう航空部隊に通達したあと
安莉は砲撃擊点を砲撃隊に伝え「ばらまくようにまんべんなくお願いします!」
「了解した。」
ビューンと空を切り裂きN高地に集中砲撃が開始される
至近弾ではないとはいえ集中砲撃で着弾する衝撃で木々が揺れ衝撃波が身体に響く
雷鳴のような轟音があたりを突き抜けて行く
約1~2分の集中砲撃で山体は姿を変え重厚な螺旋陣地は姿を消し
砲撃が止むと同時に黒装部隊は姿を変えたN高地を駆け上がる。
砲撃で飛び散った肉片、内蔵が飛び出た敵兵、人だったのか判別出来ない程の残骸を踏み越えN高地山頂に達し
高地奪取の信号弾を打ち上げる
敵兵の無惨な亡骸とは対象的な鮮やかな七色の閃光がN高地上空に煌めく
それを中央の主戦場から見上げて『勝利は近い!あと少しの辛抱だ!!ライフル隊!黒装部隊に負けるな!』と藤井副長補佐が激を飛ばす
『おおぉぉ!!』
藤井の激に隊員達は奮い立ち押されていた戦闘を押し返し始めた。
この戦いに勝利した時、半島でのパワーバランスは一気に変わると水澤はそう思っていた。
THE LAST STORY>RELOAD<
第18話 Turning the tables へと
ーーつづくーー
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