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第16話 What you need to do to reverse the situation
南北分断の民族の悲劇を終わらせようと韓語で書かれた横断幕と半島統一旗を掲げて
北進統一!!北進統一!!北韓共和国を打倒しよう!!
と叫びながら大邱や大田、そして光州でデモ行進が連日のように行われている。
その光景をソンジェは忌々しく感じながら、ナユン、ツユ、サヤらの元に集まった10万人以上の南韓人達の怒りの矛先が自身にも向いていることを感じていた。
ウォンジュ虐殺事件が半島派遣軍に暗い影を落とす中で、ナユン、ツユ、サヤらの行動は半島派遣軍こそが自分達の希望の光であると主張して10万人以上の南韓人らと共に
北進統一、祖国統一を共にと呼び掛け
半島派遣軍は、ナユン、ツユ、サヤらの行動のおかげで半島での支持を得て、その支持はソンジェを上回る程になっていった。
ウォンジュ虐殺事件の首謀者の中村は軍法会議を経て営倉に終身禁固という処分を受け、さしたる戦果を上げることなく表舞台から姿を消すことになった。
一方、黒装部隊を率いる水澤はナユンらの後押しもあり英雄的扱いを受けるようになる
水澤自身としては、これほど迷惑なことはないと感じていたが、ナユンらの心使いに応える為、甘んじてその英雄扱いにノーとは言わずにいた。
ナユンらの私兵、祖国統一義勇軍指揮官、カン大尉は山口喜久参謀総長と会見し今後の双方の協力を確約し義勇軍と半島派遣軍は軍事的同盟を結んだ。
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半島で派遣軍を主導する参謀部が力を強める中
作戦部長、岡村田はメテオストライクと名付けた作戦案を岸本総理に直接提出し承認を取り付けた後、半島派遣軍に作戦案を通達
この作戦の主導は参謀部が行うことが明記されていたが、作戦内容があまりにも粗末な為、参謀部はこれを拒否
だが、政治屋の圧力がかかり是が非でも作戦を遂行するよう国軍の総司令にあたる岸本総理からの下令を受け
メテオストライクは遂行されることとなった。
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メテオストライクの作戦要綱が半島派遣軍主力部隊に通達され
参謀部と同じように各部隊は、これを拒否する反応を示したが
国軍総司令から参謀部への遂行命令は事実上の半島派遣軍の作戦遂行命令と同じである為
影平大隊長らは作戦遂行前に会議を開くことにした。
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影平、森岡両大隊、池内中隊、片桐中隊、石動中隊、水澤の居る梶原中隊はメテオストライクの作戦要綱について話し合いを持ち
全ての隊が反対を主張し大邱の司令部に打電
山口参謀総長自身も作戦に反対であったが総司令の命令であり、それを無視して作戦を遂行しなかった場合でも、作戦を遂行したとしても
岡村田の策略に嵌まる結末しか残らない
山口参謀総長は、ある決意を西野詩音秘書官と永嶺優華秘書官に伝え
二人を現地に派遣することにした。
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メテオストライクの作戦要綱に目を通した水澤は『バカ村田め、とうとう軍権を取りに来たか』と言って
作戦要綱の隙を突く為の策を練り始める
水澤は思っている。例え総司令からの下令で無理やり参謀部に主導させるなら、その策略を利用されてもらう。
影平大隊を筆頭とする各部隊が反対を示すのは
この作戦は、作戦地域から離れた場所からヘリで移動し
個別に敵中に飛び込み続けて行く形を取ってあり
ヘリから戦場へ片道30分、往復で1時間はかかる
ということは、最初に降り立った部隊は次が来る1時間を耐えなければならないし
作戦地域に到着する前に地上に隠れている敵からロケット弾で撃墜され戦う前に勝敗が決する可能性もある、
要綱にある、敵の数は対応出来る範囲であると索敵衛星画像付きで書いてあるが、いつの画像であるか不明であり、対応出来る範囲という曖昧な表現等を考えても確実に派遣軍主力を、この作戦で潰そうという岡村田の意図を感じざるをえない
反対か決行かを論じる意味さえない作戦を誰がやるというのかという思いで各部隊長の意見は一致していた。
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大邱司令部からヘリで詩音と永嶺が降り立ったのは、その会議の夕方頃だった。
会議の為の大型の幕舎に詩音は永嶺と共に入る
二人の到着を待っていたかのように作戦への批判と参謀部への批判の声があがる
詩音は静かに頭を下げ
『今次の作戦の中止命令を直に出しに来ました。各部隊の皆さんの怒りは参謀部が受け止める次第です。』
作戦中止と参謀部への怒りを受け止めるという詩音の言葉に詩音の叔父であり、15中隊副長の西野忠道は『だが、作戦を行わなければ、参謀部は再び作戦部に牛耳られるのではないか?』
『その事なら、ご心配なく。例え参謀部が失くなったとしても、皆さんが居ることの価値にの方が勝ると参謀総長閣下は覚悟をしめされました。
私も、同じように覚悟を持って作戦中止を直に伝えに参りました。』
『とはいえ作戦中止を受けたからと言って、岡村田が黙っているとは思えんが?』
『私、西野詩音が刺し違えてでも、それは食い止めてご覧に入れます。』
詩音の言葉に皆がどよめき立つ
その光景をこっそり見ていた水澤は『隕石直撃ってな顔してんなぁ』
詩音水澤の声に振り返り『水澤くん。』と言って水澤を見つめるその瞳には申し訳なさが滲んでいる
『なあにしけた顔してんだよ詩音さん!』そう言って水澤は作戦要綱の紙をテーブルに投げて
『この作戦の主導権は参謀部にあると明記されてるなら、その参謀部が作戦に手を加えても文句言われる筋合いはないだろ?』
『手を加えるって何か良い策でも思いついたの?』と永嶺が水澤に聞く
『隙だらけのガバガバな作戦の隙を埋めてしまえば勝ちを得ることが可能になる。』と言ってテーブルに投げた要綱の前に座り
『作戦の大筋だけは残し、地上からも進軍、索敵ついでにヘリを飛ばし、まずヘリを撃ち落としに出るだろう敵を砲撃で叩く
もちろん地上から進軍する部隊にも叩いてもらう
そして、戦場に降り立ったら良いだけだろ?』
『ちょっと待て水澤、肝心なことが抜けてる』と佐脇和馬隊長補佐が水澤に言う
『ん?山間部だから砲撃の届く範囲のことか?』
『それもだが、この作戦は主戦場には砲撃は届くだろうが、地形を考えたら...』
『左右の高地に敵が潜んでいるから、そこに砲撃を加えるには、手前の尾根が邪魔で届かないってか?』
『そうだ、中央と左右に敵は必ず居る、それを未然に防ぐことが出来ない限りは、こちらの被害は計り知れない。』
『尾根ごと爆破ってわけにはいかないが、ある方法を使えば邪魔な尾根を削り砲弾を通すことが出来る。』
ある方法?と皆が言い水澤を見る
少し間が空き『ブロークンアロー...』と永嶺が呟き
『さすがは優華だ、その通りブロークンアローを発動させ尾根を削り砲弾を通す。ただ、ブロークンアローの発動時期については時を選ばなければ
こちらの作戦遂行意図に気づかれたら計画は全てお仕舞いになる。
とはいえ、ブロークンアローを発動したら、苦戦が知れ渡ることになる分、岡村田もさぞや喜ぶことだろうな。』
ブロークンアローとは、全滅寸前に陥った場合に全面的な航空支援を要請するときに使われる用語だ。
『ブロークンアローの発動時期を間違えない為には地上軍とヘリからの降下部隊の...』
『優華そう難しく考え事ことじゃないよ。全部隊が戦場に到着し、霧島陣地の時と同様に苦戦しているふりをし
時期を見てブロークンアローを発動
神州ステルス攻撃戦闘機に尾根に爆弾をばらまいてもらい
ブラックホーク、レッドホークには対地攻撃を
そして砲弾の道が開けたら左右の高地に徹底的に砲撃を加え
尾根から逃げ降りて来る敵を叩き
中央は砲撃と高速戦闘ヘリの支援を受けながら』
『徹底的な打撃を与え』と佐脇が言い
『敵を戦闘地域から排除するわけね』と永嶺が言う
『そうなれば我々の作戦遂行意図の達成と作戦の成功を迎える』と影平大佐が言い
『その成功は全て参謀主導の下であったとする。というわけか』と西野副長
『相変わらず策士だな。』と藤井一弥副長補佐が言うと
『策士の金獅子に名を改めやがれ。』と佐脇が冗談めかしに言う
『うるせぇなぁ、とにかく、これでバカ村田の策略はオジャンになるだろ?野郎の好きにさせねぇし
この作戦、上手く事を運べれば再び平壌へと続くビクトリーロードの扉が開くことになる。』
水澤の案に同意するかしないかの採決を詩音は各隊長に促し
影平、我が隊の名誉にかけて作戦を遂行する
森岡、我が隊はこの作戦に持てる全ての力を発揮してご覧に入れます!
池内です。水澤くんの作戦に乗らせていただきます!
片桐、異存なし全力を持って作戦を遂行する!
石動、我が中隊はこの作戦を成功させる為に全身全霊を持って事にあたる!
梶原、我が隊の水澤の作戦に異存なし作戦成功に我が中隊は全力を尽くす!
こうして、最初は反対していた各部隊は結束しメテオストライクに臨むことを決めた。
作戦決行日を前に影平、森岡両大隊は地上から作戦地域へと進軍を開始
ヘリからの第一陣は水澤の黒装備部隊と伊藤勇二の第2小隊が務めることを決定
その後、15中隊の部隊から池内中隊、片桐中隊、石動中隊が順次出発することになる。
そして、戦場全体を桜井満里奈のDシスで警戒監視にあたり
地上軍の進軍ルート上をブラックホークが索敵を兼ねて飛行し敵の位置を15通信隊の赤坂安莉に伝え、敵を砲撃し地上軍とヘリ輸送部隊の安全の確保にあたることになった。
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第17話 The Biggest Battle Ever へと
ーーつづくーー
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