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THE LAST STORY>RELOAD< ⑭

本編ストーリーにTHE LAST STORY&gt;battle of Japan&lt; を挟んだ為


新章のストーリーの順番の入れ替えを行っております


すみません。

挿絵(By みてみん)



THE LAST STORY>RELOAD<


第14話 The bond that lies there





ずっと昔から..こんな思いを...


俺は...背負って来た...


だからこそ...


...もうなにも失いたくない...



暗い闇の中から連れ出してくれた...


自分の知らなかった眩しい世界をくれた...



だけど...俺は...



水澤はあの日、赤坂安莉(あかさかあんり)らと出逢った時の夢を見ていた。



..だけど...俺は...



『そんなに強くない。』と空を掴む




最初は水澤の寝言だと思って居たがベッドから片手を天井に伸ばしている水澤を見た稲葉華凜(いなばかりん)軍医は

『だからといって弱くもないでしょう?』と言って稲葉軍医は水澤の寝ているベッドへと近づき


『目を覚ましたのね。良かった。』そう言って水澤が伸ばした手を元に戻し、水澤の頬に自身の手をあて微笑む


『ここは?』


大邱(テグ)の営舎よ。』


『大邱...栄州(ヨンジュ)には行かなかったのか?』


『貴方が過呼吸になり倒れたと聞いて、西野詩音(にしのしおん)秘書官様が15中隊は直ぐに大邱に帰投するように命じたのよ。』


『俺が...』


『覚えてないの?』


『いや、何となく覚えてる気がする。』



『私の手に噛みついて...大変だったんだから..。』


水澤の脳裏にルート4での自分の姿が浮かび上がる


『すまない。』


『まあ、ああするしかなかったんだから仕方ないわよ。気にしないで。』


向かって来る敵は全部殺して来た。

俺が守ろとするモノを奪おうとする奴らも殺して来た。


だけど...俺は..守れなかった...。



(はな)ちゃん、色々ありがとう。』


そう言って水澤は窓の外を見る。


澄んだ夜空に煌々と輝く月


詩音が以前に言っていた太陽と月の話が脳裏をよぎり



...月の光りが重い...


何故?こんなに重く苦しいのか水澤自身もわからなかった。


『医者として当然のことをしたまでよ。お礼を言わなくても良いわ。』


『だけど...。』


IF(イフ)もしも、なんて考えたって無駄でしょう?貴方は頑張ったわ中隊を救う為に、仲間を救う為に...

杉本曹長のことは残念だったけど貴方が悔やむことじゃ決してない

〝貴方が居たからこそ救われた命〟の方が多い、だから自分を責めないで。

杉本曹長が居なくなって寂しいのも、悔しいのも、そして悲しいのも15中隊のみんな同じなんだから。』



『....。』


確かにifを考えても仕方ない、だが..あと少しでも早く敵から通信機を奪っていたなら..杉本は死なずに済んだはずだ...


『水澤君、もう少し休みなさい。まだ夜中なんだし、それに..貴方はずっと気を張って戦い続けて来たんだから..休息も必要よ。』



『華ちゃん、ありがとう。』





>>>>>>


翌日、中隊員は営舎のグランドに集められる


四角い階段の付いた台の上に山口喜久(やまぐちよしひさ)参謀総長が立っている


梶原隊長は参謀総長閣下に敬礼と号令を出し中隊員ザッという足を揃える音と共に山口参謀総長に敬礼する

山口参謀総長は返礼し、それを確認した梶原隊長はなおれ!と号令を出す。


自身の前に整列する中隊員に山口参謀総長は『15中隊員諸君、先日のことは痛感の極みである。我らの名を語り何者かが諸君らを攻撃し多数の犠牲が出たことは決して許されることではないが、しかし、諸君らを守る為に単身敵陣に突入し中隊の危機を救った水澤少尉の勇敢な行動は決して忘れてはならない

水澤少尉は中隊を救った英雄であると私は考えている。』そう言って梶原隊長の方を見て頷き


梶原隊長は『水澤少尉!前に!』と号令する


しかし、水澤は『中隊を救った英雄なんざ居ない..でも、仲間を見捨てずに身を犠牲にして救った英雄なら知っている。』


梶原隊長は杉本曹長のことを水澤は言っていると理解して『確かにその通りだ。杉本曹長は自身を犠牲にしてまで仲間を救った。杉本曹長も英雄であると私は思っている

そして、中隊の危機を救った水澤少尉!キミも我が隊の英雄であることに代わりない。』


『水澤少尉、総長閣下の前に来なさい。』


『....。』


『やはり出て来てはくれぬか...ならばここから伝えさせていただく

水澤少尉は勇敢なる行動で中隊の危機を救った、その功績を称え金星(ゴールドスター)勲章と階級をひとつ上げ中尉とする!』


山口参謀総長の言葉に水澤は『自分は自分の仕事をした!ただそれだけだ!!』と言い、参謀総長の手から金星勲章を奪いとり『勲章も階級もいらねぇ!本当に勲章をそして階級をもらうべきヤツは杉本だけだ!!』そう言って勲章と階級章を地面に叩きつける。


『水澤少尉の気持ちは痛いほどにわかっおるつもりだ。杉本曹長にも金星勲章と階級章を用意していた。

第1小隊長として杉本君に代わり受け取って欲しい。』


『参謀総長、その勲章も階級章も杉本の奥さんに送ってやれ。』


『水澤君、キミは杉本君の上官であろう。貴官の仕事であると私は思っている。

同じ小隊に所属し苦楽を共にしてきた戦友であるなら尚更ではないか?』


山口参謀総長の言葉に水澤は総長閣下は俺が自身の勲章も階級も投げ棄てることをわかっていながら、わざわざそうさせるように仕向けた..このタヌキ親父め!と水澤は思いながら、地面に投げ棄てた勲章と階級章を拾い上げ


『杉本のと併せて俺の勲章と階級章も杉本の奥さんに送る。ただそれだけだ。』


水澤はそう言って山口参謀総長に背を向け歩き出す。


梶原隊長が止めようとしたが、山口参謀総長はかまわないと言って水澤の背中を見送った。


水澤と山口喜久参謀総長の間にある無言でも通じる何かが二人にあるのだと梶原隊長は感じていた。






>>>>>>>


ここは遺影安置室と呼ばれている


戦死者の遺影と位牌が並び 位牌の並んでいる前に献花台があり中央に線香をあげる器、その両サイドにロウソクがある簡素な部屋だ。


水澤はその安置室内に入るとそこには城咲茜(きさきあかね)が1人で居た。



『城咲、お前こんなところで何を?』


『お礼と...謝罪を。』


『お礼と謝罪?』


『私さ清州(チョンジュ)で中隊に迷惑かけた時あったじゃん?その戦いで亡くなった人達に謝罪できてなかったし、この前の時も助けられたから、お礼と謝罪をしなきゃって思って

こんなことぐらいしか私には出来ないから。』


『お礼を言うのは良いことだと思うが、謝罪する必要はねぇよ。』


『でも、私のせいで清州では...』


『城咲が心から謝罪したいという思いはわかるけど、どうせなら謝罪を形にしてやれ。』


『謝罪を形に?』


『城咲、生きろ!ただそれだけだ。』


『生きるだけじゃ謝罪にならないじゃん?』


『お前は頭が良いのか悪いのかわかんねぇヤツだな

俺が言ってる〝生きろ〟ってことはな、この糞戦争を生き延びてお前がお前の人生を生き抜けってことさ。

そうすりゃ、ここに並んでる連中も喜ぶと思うぞ。』


『私が私の人生を生き続けることが謝罪の形になる...』


『胸を張って生き抜け!城咲!!ヤツらの死は無駄じゃなかった証となってやれ!』



パチパチパチパチと二人の後ろから拍手が聞こえる


その方向へ水澤と城咲は振り返ると


安莉とまりあ、奈月(なつき)ありす、桜井満里奈(さくらいまりな)、そして、ナユン、ツユ、サヤが居た。


『水澤少尉のお気持ちに感動しました。』と奈月が言って笑顔を見せる


『水澤さんは、今も変わらないね。』と安莉はまりあに言う


『そうだね安莉ちゃん』


『生きて、その人の存在証明書になることが私達の責任っていうか、義務だと思う。』


『存在証明書。』と城咲は呟き


『名も無き兵士じゃないじゃない?名前も顔もある同じ人間なんだから。』と奈月が言う


『そうやで!同じ人間なんやから忘れたらあかんと思う。』とサヤが言う


『みんな同じ仲間!』とナユンが言って


『同じ仲間みんな一緒!』とツユが続けて言い


『同じ人間なのに..なんだか悲しいね..なんで戦かわなきゃいけないんだろ。』と安莉が言う


『相容れようとせえへんからや、そやろオッパ!』


『相容れない?』と安莉とまりあが聞く


『あ、そうか、安莉ちゃん達はソンジェの話もこの大邱の桜の話も知らないんだったな。』


水澤はソンジェとの話と大邱の公園の桜の話をし


『そういうこと...人ってつくづく面倒な生き物なのかも...』


『水澤さんやサヤさんナユンさんツユさん達みたいにわかり合えたら世の中から争いがなくなるのかも知れないね。』



『相容れなくても、どこかで折り合いをつけたり、妥協点を見つける為に国際法があるけれど、この戦争では、その法の力さえ無力になってしまってる...』


『戦争が何を残すのか?を考えねぇからさ。』


『戦争が何を残すのか?』


『恨みに恨みで返して、また恨みを産み、憎しみに憎しみで返して同じように憎しみを産み出す..本当に残るのは哀しみだと言うことに気付けてない

ここに並ぶ連中の家族親族の哀しみを誰が拭える?

そんなこと誰にも出来ない。』


『早く戦争を終わらせても...残るのは哀しみだけなんて考えただけでも辛いよオッパ。』


『戦争を始める前にツユが言うように考え感じていたなら..戦争しようなんざ思わなかったかも知れないな。』


だけど誰ひとり考えるこたもなく感じることなく突如として始まったこの戦争の終着駅は今も見えないまま進み続けている。



『私達は生き抜いて彼らの存在証明書となり、もう二度と同じ(あやま)ちを繰り返さないように後世に伝え残さないといけないね。』


『うん。そうだね。』と安莉達は結束したかのように声を揃えて言い


『私達もそう思うし、そうしたいと思います!』


今村美桜(いまむらみお)達が言う


彼女らは水澤達の話を扉の向こうで聞いていたらしく


そう言ったあと『菅野さんのこと、そして今回のこと...きっと..私達のせいで...』


『何の話かしら?』ととっさに奈月が言う

『誰が悪いとかじゃなく全部、戦争が悪いんだよ。』と水澤は今村達に言い


『オッパは戦争と戦ってるんやで!戦争を倒さん限り戦争に追いかけられ続けるだけやからオッパ達が戦争を追いかけて必ず倒してくれるんやから、それまでの我慢や。』



『でも、私達がこの半島に...』


『軍法会議。』


『かまいません。そのことで15中隊が危険な目に遭わないなら。』


『なんの話?』


今村美桜らは栄州事件のことを城咲達に全て話す


それを聞いた城咲は『どうりでおかしいと思ってた。当事者でもある15以外には芸能人の通信員が居て、そして女性隊員は客人扱いすることを決めてたことも、全て繋がってすっきりしたわ。乗り越えるしかないじゃん!私達が私達の人生を本当の意味で生きる為に。』

そして軍法会議という発言をした奈月の方に向き

『奈月ありす、彼女達の強い決意と覚悟を無駄にしないでね。』


『城咲さん、わかった聞かなかったことにしとくわ。』


『なら、私も』と安莉、まりあが言う


『知って知らぬふりは得意だから心配なく』と桜井が答え


『水澤少尉。』


『ごめん。心の中で杉本に文句言ってて聞いてなかった、何か言ったか?』と答えて『杉本!お前も聞いてなかったろ...聞いてなかったそうだぞ!良かったな?なんか知らんけど?』


『そやな知らんけど?』とサヤが言うと


『知らんけど?知らんけど?サヤちゃんめっちゃアホやん?』


『ナユンオンニ!なんでサヤがアホやねん!』とサヤは突っ込み


『猫、にゃんにゃん!犬、ワンワン!ワォ~ン!』と謎に動物の鳴き真似を披露し愛嬌をふりまく天然天使ツユ


それぞれに思いを新たにして安置室をあとにする






ー女性隊員用営舎ー



『あ、そうだ!桜井さんコレ。』


『コレは?』


『Dシスのバックアップが記録されてるUSBに、こっちのUSBは通信機の方のね。』


『ウソ?マジ!!』


『まあ、危なっかしい攻勢防壁を抜くのに苦労したけどね。』


『私の防壁を抜いたの?』


『だからDシスのバックアップとれたんですが?』


『城咲ぃぃぃ!!貴女天才すぎ!!』


『ちょっと苦しい苦しい!』


『ごめんごめん!また1から組み直しになると思ってたから嬉しくて!!』







城咲茜、桜井満里奈、そして奈月ありすという天性の才を持つ()

持ち前の負けん気の強さと努力家の安莉、そして真面目に堅実にそして謙虚に業務をこなすまりあ


自身らの境遇を嘆くことをせず例え自身達が不利になるとしても15を守ろうと自身らの秘密を暴露した今村美桜達



この日、15女子通信隊員は秘密を共有する仲間であり同じ隊員として強い絆が生まれた。






ルート4で参謀部の名を語り15砲撃させた犯人は岡村田の策略という疑念だけが残り


参謀部は確たる証拠を得るには至らなかった。




THE LAST STORY>RELOAD<


第15話 Tragic reality へと



ーーつづくーー



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