THE LAST STORY>RELOAD< ⑬ 後編 壱
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第13話 MALICE MIZER 後編 壱
清州市内に到着した水澤は市内に入り込んだ敵を撃ち倒しながら城咲が居るであろう場所に向かって進み続ける
ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!と独特な銃声が城咲の無線の向こうから聞こえる
「今の銃声が聞こえたでしょ?少尉が近くに来てるから、もう少しの我慢よ!」
城咲の耳にも聞こえる水澤の突撃制圧銃の銃声
ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!ガウン!
だんだんと近づく銃声
そして....『城咲!!お前は何をやってんだよ!』
そう言って振り向きもせず
ガウン!ガウン!と発砲し敵を撃ち倒す
そして城咲を抱き抱えて戦闘装甲車に乗り込むみ助手席に城咲を乗せ
『頭を上げんなよ!行くぞ!』
急発進し後方部隊の居る方へ向かう
窓から片手を出しガウン!ガウン!と発砲し敵を薙ぎ払い
敵中を突破して行く
RPGを構えた敵兵がロケット弾を発射し戦闘装甲車目掛けて飛んで来る
水澤は戦闘装甲車をドリフトさせて回避行動をとる
ガゴン!!と大きな音がして水澤の乗る運転席側の上部にロケット弾が当たり
窓ガラスが飛散する、その破片が城咲に当たらないやように庇い
水澤は頭部と肩あたりに負傷したが、そのまま更にドリフトし戦闘装甲車を南下させ敵を振り切り突破した。
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後方部隊がいる場所に聞き慣れた戦闘装甲車のエンジン音が近づく
土煙をあげて簡易に設営した後方部隊の野営に戦闘装甲車がやって来る
右前方が破損し右ウインドウとフロントガラスが割れ補強用の金属の網がちぎれた戦闘装甲車が通信隊のテント前に止まる
破損し曲がったドアが開かず水澤はドアを蹴り壊し降り
助手席に回り城咲を降ろして連れて来る
右顔に血が流れ肩あたりにガラス片が刺さったままの姿で水澤は小山の前に立ち
バキッ!と音がし小山の体が宙に浮き通信機器にぶつかる
『小山、今はこれで終わりにしとくが、ミンスとの戦いが終わったら覚悟しとけ!!』
水澤が怪我をしているのを見た赤坂安莉は『水澤さん、怪我大丈夫?』
『こんなモンたいしたことねぇ。』
『三崎軍医を呼んで来ます!』
『必要ない、今は戦闘中だ!直ぐに戻ってミンスを叩き潰す!』
そう言って水澤は破損した戦闘装甲車に再び乗り込み戦場に戻る。
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水澤が城咲を救出したことが伝達され作戦を再開
水澤が到着するまで、榊らは伊藤隊と共にミンス隊を蹴散らし続けていた。
水澤が再び清州市内を通り抜けたのを確認後
砲撃が開始される
前面展開していた15中隊は展開を再び△形に変化させ
後方は砲撃と通信隊にいる奈月に持たせたトラップを起動させるスイッチで各所に設置した爆薬が炸裂し後方に回り込んだ敵を叩き
水澤は小隊の指揮を再び取り
高機動戦闘を開始しミンスの居る本営に肉薄し高機動力と強力な火力で押し潰しにかかる
これに耐え兼ねたミンスは撤退を開始
その撤退するミンスに猛追撃を水澤率いる黒装部隊は加え続ける
この追撃は水原にまで及び
ミンスは刺し違える覚悟で水澤率いる黒装部隊に突撃
がしかし、少数にまで減ったミンス隊は水澤らの猛攻に耐えきれずにミンスは死を覚悟し
黒装部隊でも、ひときわ目立つ金糸髪の水澤に狙いを定めて側近と共に突入
水澤の後方を任されている川中の狙撃がミンスの額を貫きミンスは戦死を遂げ残った側近も水澤の白刃に斬り伏せられ
ミンス隊は地上から姿を消した。
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ミンス戦死と部隊の全滅を北韓軍はひた隠しにすることになった。
北の猛将を討ち破った15中隊は中隊戦闘序列のトップに立つことになったのだった。
だが、この戦闘の勝利を15中隊長の梶原は心から喜ぶことはしなかった。
この戦闘に於いて、城咲の行動のにより菅野隊から加入した一木隊に戦死者を出し
普段は温厚な梶原は怒りを隠すことはしなかった。
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ミンス隊を全滅させた15中隊は清州で駐留警備を開始
そして、城咲の処遇について議論することになる
15通信隊では、赤坂安莉が城咲茜に対して怒りをあわらわにし
安莉は城咲をひっぱたき『あんたのせいで水澤さんが怪我したじゃない!どう責任とるつもり!!』
『....知らないわよ。』
『なんですって!知らないわよじゃない!』と言いもう一度ひっぱたこうとした時
『赤坂さん、やめなさい。』
奈月ありすが安莉を止める
『でも、城咲さんのせいで水澤さんが...』
『その水澤少尉が、城咲さんに怪我ひとつ負わさずに助け出したのに、怪我させたら怒られるわよ。』
『そんなこと言ったって!城咲さんのしたことは...』
『それは、城咲さんらしくない行動だったと思うけど?』と言って奈月ありすは城咲を見る
『貴女のような賢い人が、あんな真似せずに、もっと違うやり方があったんじゃないの?』
『.....。』
城咲は叩かれた頬を押さえたまま黙っている。
奈月の意図が理解できないまま安莉は城咲に怒りをぶつけようとする
『何をやってんの?』
『水澤さん!怪我は?』
『こんなモンただのかすり傷だよ。』と言い三崎軍医に手当てを受けた頭部を指差し笑う
『ところで?城咲?どうした?』
『私がカッとなり、つい手をあげてしまいました。申し訳ありません少尉殿。』と奈月ありすが言う
『せっかく無傷で助けたと言うのに...以後、気をつけろよ。』と安莉の方を見て水澤は言う
叩いた本人は奈月じゃないことを水澤はわかっていたが、奈月が安莉を庇ったこともわかっているからこそ
安莉を見て発言した。
『にしても、城咲?もう少し頭を使え。あんなモンやり損になるだけだし、一歩間違えたらお前の命がなかったぞ。』
そう言って城咲に近づき『二度とあんなバカな真似すんなよ。』と言い城咲の頭を撫で
『なっちゃん(奈月のこと)今回のことで隊長様はお怒りなんだが...』
『それはお怒りにもなるでしょうね。事が事ですし、それに亡くなられた隊員も出てしまいましたし。』
『このままだと...』と目で城咲を指す
『...困ったことになりましたね。』
今回の清州の事案の処罰の為梶原隊長は小山と城咲を呼び出すつもりでいる
それほどに怒るのはたぶん初めてのことだと水澤と奈月は思っていた。
清州警備の態勢を整え終わり
梶原隊長は小山通信主任と城咲茜を呼び出した。
小山、城咲両名を呼びつけた梶原隊長は小山に監督責任を追及
城咲には何故、作戦妨害をしたのかを追及した。
小山は自身の監督不行き届きを詫び
城咲はうつむき黙ったままだった
その黙っていることすら梶原隊長は許せず理由を言えと怒鳴りつける
傍らに居た奈月は『梶原隊長殿のお怒りは充分理解しております。ですが少し冷静になられてください。』
『貴官の発言は認めておらん黙っていろ!城咲!理由を言え!お前を助ける為に何人の部下が死んだと思っておるのか!』
『.....。』
『城咲!!菅野くんから預かった隊員が死んだのだぞ!なんとか言わんか!』
『.....。』
『梶原隊長は一木隊を菅野さんから預かった隊員で15の隊員ではないと?』
その様子を黙って見ていた水澤が口を開く
『当たり前だ!菅野くんが戦線に復帰する時には返すつもりで預かったのだ。』
『なら、何故さっき部下が戦死したと言った?』
『言葉のあやだ!いちいちあげあしをとるな!』
『一木隊は15の第5小隊、立派な15の一員、それを他人行儀の言い方をしたら一木さんがどう思うか?わからないわけねぇよな?』
『水澤少尉、黙っていろ!』
『一木さんは元は副長を務めた人、だが15に加入にあたって小隊長でかまわないとまで言い、この15中隊に尽くしてくれてる人物
それを他人行儀な物言いは俺は許せねぇけどな。』
『だからなんだと言うのか?菅野くんから預かったことにかわりない。』
『そんなだから城咲の心の内もわかんねぇんだよ!』
『言わねばわからぬこともある!!』
『なら、城咲に代わり俺が言ってやるよ。城咲は自分の命と引き換えになるかも知れない賭けに出たんだよ!』
『なんの為に?』
『んなモン決まってんだろ!小山を追い出す為だよ!』
『小山主任を追い出す為だと?』
『城咲は、自分と同じ目に合うヤツが出ないように命がけの抗議を小山にした
小山は俺との約束を守らず城咲に業務を強制しようとしたからな。』
『小山主任、それは本当か?』
『軍人として職責をまっとうすることは当たり前と....』
『この大バカ者めが!!小山!水澤少尉のみならず、この私をも欺くか!!』
『いえ、そう言うつもりは...』
『小山主任を解任処分とする、明日までに離隊届けを私に提出しろ!このバカ者めが!』
『梶原隊長、それは15の損失にしかならない、小山は確かに隊長や俺の意に背いた、だけど、小山が居ないけりゃ15通信隊は回らないことぐらいは隊長もわかってるだろ?』
『だからと言って許すわけにはいかぬ。』
『隊長、覚えてるか?第1次堤川戦役で俺がしたこと。』
『忘れるわけがなかろう。今思い返しても中村にははらわたが煮えくり返るわ!』
『お怒りはごもっともですけど、少尉があの日なされたことを今回に当てはめられてくださいませ。』
『ならば私にどうしろと?』
『この件は俺に任せてくれれば良い。』
『水澤少尉にか?』
『ああ、俺に一任して欲しい。』
『好きにせよ。』
『ありがとうございます隊長殿、さすがは俺らの隊長殿です。』
『おだてるな。』
『ならば、先ず小山主任は大田での休暇中は大田の宿舎の清掃、そして大田を出撃し大邱に戻ったら大邱の宿舎の清掃を行うこと
城咲は、通信業務以外のことを考えあるので大田に着き次第、命令を出すので城咲、そのつもりで俺の命令に従え良いな?』
『大田、大邱の宿舎の清掃を休暇中ずっとやるのか?』
『そうだ!お前は心の清掃も必要だがな!無心で宿舎を綺麗にし自身と向き合え。』
『命令って通信業務しろでしょ絶対。』
『俺の話をちゃんと聞いてたか?業務以外の仕事だ!これはお前にしか出来ない仕事だと思うからな。』
『私にしか出来ない仕事って何?』
『大田についてから教える以上だ!』
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清州警備駐留を終え大田に帰還
いつものように隊長の訓示が終わり解散がかかる
その時『隊長殿!今一度確認したい事があります発言の許可をお願い申し上げます。』と水澤は梶原隊長に尋ねる
『許可する発言したまえ。』
『一木小隊は15の立派な仲間でありますか?それともただの預りモノでありますか?』
『今、それを聞くか?よかろう、一木小隊は我が15中隊の仲間であり、我が部下であり、家族同様である!!』
『だとさ、一木さん!』
『梶原隊長殿のお言葉、心待ちにしておりました。これで大手を振って15中隊員と名乗れます!』
『菅野くんに悪いが、返せと言われても返さぬつもりだ。』
『義足キックに気をつけろよ梶さん』
『そうそう簡単に蹴られるほど私は弱くないぞ佐脇!』
『そりゃそうだ。』
水澤の人を責めるは下策、心を攻めるは上策、それを梶原隊長は実践して見せ
15中隊は、更なる高みを目指し邁進して行く。
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水澤は城咲が召集される前は服飾デザイナー系の専門学校に通っていたことを奈月から聞いていた
そのため、水澤はナユン、ツユ、サヤに頼んでノートパソコンを用意してもらっていた。
『城咲茜に命ずる!このパソコンを城咲に与え我々黒装部隊と同じく女子通信隊員に城咲を含め黒装の軍服のデザインを命じ作成をお願いする以上!』
『は?そんなこと?』
『不服か?』
『いいえ、もっと厳しい罰ゲームが来ると思ってたから...了解しました少尉殿、そのお仕事引き受けさせていただきます。』
『宜しく頼む。』
この、水澤と言う人に奈月ありす
なんであの日の私の心を見抜けたの?と城咲は思いつつ水澤からの命令を忠実にやり遂げることを密かに誓った。
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第13話 MALICE MIZER 後編 弐
ーーつづくーー
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