THE LAST STORY>RELOAD< ⑬ 前編
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第13話 MALICE MIZER 前編
桜咲く季節に九州から半島へと攻め上がり雪の舞う季節突入する頃に再び再会を果たした水澤と赤坂、森下
大田駐留を経て15中隊は清州へと進軍を開始
清州にて待ち構える北韓軍のヤンジヌ隊と戦闘状態に入る
ヤンジヌ隊はユシン隊同様に七重構えの防御陣を敷き
水澤率いる第1小隊は注意一点突破を開始
第2、第3、第4小隊は梶原隊長の本体と共に斜陣攻撃をかけて第1小隊に敵が集中しないように援護する
清州戦が始まって30分、大邱航空隊、第2野戦砲部隊が到着
航空支援と砲撃支援を得て15中隊は凄まじい勢いでヤンジヌ隊を清州市内から郊外へと押し込み
北韓の砲撃隊、航空隊は大邱航空隊により排除され
通常砲弾による波状攻撃とヤンジヌ隊の後方を塞ぐように空襲砲撃が行われ
ヤンジヌ隊は前面に15中隊、空から航空隊、右翼、左翼、後方を砲撃隊の攻撃に抗いきれずに部隊壊滅の危機に瀕し
本国からのミサイル攻撃を要請
「敵、ミサイル攻撃着ます
!」 とDSSをモニタリングしていた桜井満里奈が叫ぶ
「こちら通信隊主任小山、ヤンジヌ隊は本国にミサイル支援を要請した模様」
「こちら梶原、了解した。」
『全部隊員に通達!敵ミサイル攻撃に備え全力後退開始せよ!!』
梶原と副長の西野のいる戦闘指揮所から戦闘中の各部隊員に撤収命令がでる
『毎度毎度、同じこと繰り返して面倒な野郎だ!あと少しで最後の一枚を抜けれたってのに。』
そう言って『第1小隊!全速離脱!!』
『了解!!』
15の黒装部隊が敵前を急速転進し後退して行く
ヤンジヌの北韓軍は追撃を敢えて行わなかった
以前、追撃をしようとして手痛い打撃を15黒装部隊に受けた過去があり
ヤンジヌは追撃を禁じていた。
15黒装部隊が去ったあと必ず自身の部隊員だけの遺体が残り
黒装の日本兵の亡骸は何処にも見当たらない
水澤率いる第1小隊は規模的には小隊でも、その力は大隊規模以上の破壊力と攻撃力を持ち
北韓軍内ではこんな噂が流れている
〝黒い軍服の集団に出逢ったら迷わず逃げろ、奴らは人間じゃなく戦闘ロボットだ〟笑える話だが、実際に北韓軍は黒装部隊の存在こそが半島派遣軍の力の源だと考えている
半島に攻め上がった当初は北韓軍が脅威と感じていたのは影平、森岡両大隊だった
今でもそれは変わりないが、梶原隊、そしてその梶原隊の黒装部隊は北韓軍の新たな脅威として北韓軍を震え上がらせていることも事実だ。
水澤は自らが先頭に立ち戦場を縦横無尽に駆け
敵軍をして黒い悪魔、黒き疾風、金糸髪の迅雷と呼ばれている
味方からは15の金獅子の異名で呼ばれ敵味方双方から畏れられる存在となっていた。
15中隊全隊が清州から後退して間もなくミサイルの雨が降り注ぐ
『もう、んな所には居ねぇってのアホか本当』
第1小隊は戦闘装甲車に乗車
戦闘指揮へと帰還
『相変わらず大胆な戦い方するな』
『敵中の真ん中に突っ込みゃ敵は俺達を狙うにも同士討ちになりかねない状態になり攻撃が弱まる
輪形に円陣を組み進めば放射状の弾幕に飲まれ敵さんは勝手にくたばってくれる楽な仕事だ
それに敵の射程より遠くから何処からともなく音もなく飛んでくる陽二の狙撃に敵は混乱するしな。』
『そんな戦いをやってのけてる小隊の皆さんも凄いと思いますが』
『高機動戦闘に特化した訓練してるからさ。』
速攻型の戦闘スタイルは九州の頃から、ずっと水澤が続けて来た戦い方
半島での第2次堤川戦役以降、高機動力と敵を圧倒する火力を装備した新体制で戦いに臨んで来た水澤達の戦闘スタイルは同じ中隊でも他の部隊でも真似ることが出来ない領域に達していた。
『あ、そうだコレ』
『なんですコレ』
『中を読んでみ?』
「母さんお元気ですか、ある日、学校にいきなり北韓軍があらわれ無理やり軍服を着せられ前戦に連れてこられました。
そして日本軍と戦うことになり僕の放った銃弾で何人の日本人が死んだかわかりません日本人には言葉が通じないから無理かも知れない
だから日本軍じゃなく南韓軍にあったらソウル中央高校の生徒だと言うつもりです
そしたら同じ南韓人だから助かるかも..
母さん、すごく会いたいです...妹たちにも..この戦争が早く終われば良いのに。」
書きかけの手紙
どんな思いで16、7歳ぐらいの子は書いたのだろう
『南韓軍じゃなくても俺達は助けるかも知れねぇのにな。』
『まだまだ反日思想の根が深いのかもしれませんね。』
『南だの北だの何だの面倒な話だ。』
『その言葉をこの手紙の主が知ってたなら..』
『考えるだけ無駄だ。』
『その割りには手紙を拾ってらっしゃるじゃないですか?』
『宛先があれば良かったんだが..』
『あなたらしいですよ。』
『南韓人を無理やり徴集して部隊の補強をしてやがることがわかっただけだろ。』
『まあ、以前に比べて北韓軍の力は弱くなっては居ますがね。数はまだあちらが上ですが
摩耗戦術の効果が出ている証拠でしょう。』
『ああ。そうだな。』
清州から堤川、そして栄州へと15中隊は転戦し大邱へと帰還
大田~大邱への転戦の最中で15通信隊はある問題を抱えてしまっていた。
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話は転戦中にさかのぼる
通信主任小山と新規入隊の城咲茜との間で口論が起き
城咲は『無理やり軍人にされたあげく人殺しの手伝いなんて出来るわけないでしょ!』
それに対し小山主任は『どんな経緯であれ今は軍人であり15の通信隊員
自身の職責は全うするのが当たり前だ!城咲通信士に命ずる、通信士として隊を支え職務遂行をしろ!』
同じように通信隊テントにいた赤坂安莉と森下まりあは、通信士としての仕事をしようと意気込んではいたものの
太宰府や大邱で使用してた通信機器と15中隊が使っている通信機器の違いに戸惑っていた。
15中隊は桜井満里奈がカスタムした通信機器を装備しており
他の部隊が使用中の通信機器とは違っている
赤坂と森下が訓練所で使っていたのは一般的な通信機器
取り扱いの仕方が違い過ぎて二人が困惑している様子を奈月ありすは見て
『ここの通信機はDシスの開発者の桜井さんがカスタムしたモノだから戸惑うかも知れないけど、扱い方は一般的な通信機器より簡単に使えるように出来てるわよ。やる気があるならだけど教えてあげても良いけど?どうする?』
赤坂と森下は迷うことなく奈月に教えて欲しいと頼み
奈月は『まあ〝本人がやる気がある場合は可〟だったはずだから仕方ない教え上げましょう!』
奈月ありすは小山の方を見て大きな声で言う
話は更にさかのぼる
女性通信士受け入れの準備の為、奈月ありすは水澤の伝言を受け入れ先の各部隊を訪ね
水澤の伝言を伝え承認を各部隊長、通信主任らに求め
各部隊長も通信主任も承認していた。
水澤の伝言内容【ご存知の通り女性は先ず通信士として半島に送られてくる。その経緯は皆さまの知る通り岡村田の策略によるもの
本人の意思とは関係なく兵とされ本人達の心情を思えば、彼女らの意思を最優先とし決して無理強いはせず
客人として迎え入れ不便不備、そして不祥事を起こさないことをお願い申し上げます
もし仮に彼女らが自身の意思で職務を果たしたいと願うことがあったなら、その意思を尊重していだいて結構です。
事の経緯と彼女らの心情に寄り添った対応をお願い申し上げます。】
水澤自身が出向いて伝えたかったが、その頃は戦場に居た為、参謀部に居た奈月ありすに伝言を頼んだのだった。
その経緯がある為、奈月は大きな声で小山に聞こえるよう発言した
15中隊だけは水澤から直接、隊長と通信主任にお願いしており
梶原隊長も小山主任も了解していた。
にもかかわらず、小山の態度と言い方は水澤の意に反すると奈月は思い小山を見て発言
小山自身、自衛隊以来の生粋の職業軍人
心の中では、どんな経緯だろうと軍人は軍人
特別扱いせず、同じように職務を遂行するのが筋だと考えていた。
城咲は小山の命令を聞こえないふりをして椅子を小山の方へ蹴り、待てという小山の言葉を無視しふてくされて宿営用のテントに戻る
一通り奈月から通信機の使い方を習い休憩の為に赤坂と森下は宿営テントに戻る
二人がは入ってくるやいなや『あんた達のおかげで、とんだとばっちりを受けて良い迷惑なんですけど?』と城咲は赤坂と森下に言う
『とばっちりって言っても...ねぇ?まりあちゃん。』
『私達はただ通信士として仕事しなきゃって思っただけです。』
『それが迷惑なの!だいたいわかってんの?通信士の仕事をするってことは人殺しの手伝いするってことよ!』
『人殺しって...』
『自分たちが伝えた座標に居る人間を砲弾で吹き飛ばすって立派な人殺しじゃない?違うの?』
確かに、砲撃座標を伝えた先には敵軍という名の人間がいる
『だけど、座標を伝えなかったら味方が死ぬじゃない。』
『戦争なんかしてるから、そんなことになる。馬鹿馬鹿しいと思わないわけ?
それとも殺人鬼になる道が正しいと思ってる?』
『はいはい、そこまででおしまい。』
『奈月!あんたも!』
『私、奈月ありすは中隊を守る為なら何だってする覚悟があるから、城咲さんの言い訳に付き合うつもりはありません。』
『言い訳してるんじゃなく本当のことを言ってるだけ』
『ふぅ~ん。そう?』
『そうよ!』
『私には、ただ反抗してる子供に見えるけど?』
『子供..あんたね!馬鹿にしてんの!!』
『いいえ、城咲さんの言葉を借りるなら本当のことを言ってるだけ』
『どいつもこいつもムカつく!!』
そう言って城咲は自身のベッドに入りカーテンを締め寝てしまう
『ちょっと城咲さん!』
『いいのいいのほっときなさい。』
『でも、また主任に怒られちゃう。』
『逆、逆、怒られるのは主任の方。』
『え?』
『その内わかるわよ。あ、そうだ!あとで桜井さんがもう少し詳しく使い方を教えくれるって言ってたわよ
カスタムした本人が教えた方が手っ取り早いしね。』
『城咲さんは...』
『いいからほっときなさい。』
全く困ったちゃんを引き受けたもんだわ
あの子、妙な気を起こさなきゃ良いけどと奈月ありすは思っていた。
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ーーつづくーー
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