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THE LAST STORY>RELOAD< ⑫ 中編


Anri_daily...


国家総動員特措法によって召集されて1ヶ月半が過ぎ私は大邱(テグ)の訓練所に来ました


その頃、半島派遣軍は大邱を進発しては栄州(ヨンジュ)を経由し堤川(チェチョン)を通り清州(チョンジュ)を経由し大田(テジョン)に到着

そして逆のコースを辿り大邱へと戻るということを繰り返していました。


私とまりあちゃんは大邱の訓練所で日々、通信士としての訓練と教育を受けて居ました。



挿絵(By みてみん)



THE LAST STORY>RELOAD<


第12話 Destiny 中編


栄州事件の真犯人である岡村田は水澤の予想通り政治屋の力を背景に作戦部の長におさまり続けた。

そしてその岡村田の策謀により国家総動員特措法が発令され半島派遣軍は参謀部主導の(もと)今後、入隊してくるであろう

栄州での事件に巻き込まれた芸能人らの身柄を水澤の編み出した苦肉の策である


有力な部隊のみに定め、同じように他の女性兵士の受け入れも有力な部隊のみに限定することを決定


この決定に岡村田は不満を隠さずに参謀部に意見してきたが、あの事件の当事者である中川の件を持ち出し

岡村田の反対を一蹴し、参謀部の監督下のもとで女性兵士の教育と受け入れを続けた。

これも水澤が示した案に基づく行動だった。


なんとしても、栄州事件の被害者、そしてそれに関係ない人々を守る為には力のある部隊に配属し、保護し続ける必要がある


影平大隊を筆頭に森岡大隊、片桐中隊、菅野中隊、そして影平大隊から抽出した石動中隊、水澤の居る梶原中隊

これらの隊に配属を決定事項として参謀部は上位機関の統合部の許可を得て管理監督にあたる。


ただし、芸能人の配属先から梶原中隊は外している

その理由は栄州における事案は芸能人らの心に傷を残したはずと水澤は考え

梶原中隊への配属は、あの日の出来事を連想させ更なる傷を残す可能性がある為

15中隊は芸能人配属リストには載っていない。


梶原隊以外の部隊が受け入れを行い、梶原中隊は他の女性兵士の受け入れを行うことになる。


とはいえ、召集された女性兵士全員を半島へ送るには受け皿になる部隊が少ない為、内地留め置きと司令部付け等に分け対処することにした。


どんな形であれ、岡村田的には栄州事件の封じ込めには成功したとも言える

一定の譲歩を参謀部が政治屋に示したようにうつるが

内情は芸能人保護とその先を見据えた参謀部と水澤の意見の合致した結果に過ぎないことを岡村田はわかっていなかった。



ーー大邱訓練所ーー


大宰府の女性兵士訓練所の監督を統合部の赤城彩花(あかぎあやか)井上香織(いのうえかおり)が行い


大邱訓練所の監督を西野詩音(にしのしおん)永嶺優華(ながみねゆうか)が行い

管理運営にのぞんでいる


召集第一陣が大邱に入ってから1ヶ月、永嶺と奈月(なつき)ありすは詩音に命じられ

訓練所内の視察を行っていた。


永嶺は各訓練兵の名簿とその成績を記録したノートパソコンを片手に、ひとクラスずつ奈月と視察を行い


大宰府でも、ここ大邱でも最優秀の成績を持つ城咲茜(きさきあかね)のクラスの前に立つ

キンコンカーコン!キンコンカーコーン!と学校で聞くのと同じチャイムが鳴り

講義を終えたら訓練兵が休暇に入る


挿絵(By みてみん)


城咲の居るクラスの中に永嶺と奈月は入り

『城咲茜!前へ!』と永嶺が命令を出すが、城咲茜と呼ばれても前に出て来ない

永嶺はもう一度命令を出す


やはり出てこない


永嶺は講義を行っていた休暇に尋ねる

永嶺と奈月の襟の紋章を見て慌てて城咲を引っ張り永嶺と奈月の前に連れて来る


『貴女が城咲さん。』


城咲は返事もせずに永嶺の前を通り過ぎようとする

それを教官は慌てて掴まえ無理やりにでも頭を下げさせようとする


『ちょっと!痛いんだけど

!!』と言って城咲は教官を突飛ばす


その光景に永嶺は『まったく教育がなってないわね。』と呆れたように言いながら教官の方を見る


申し訳ありませんと教官は言って立ち上がり頭を下げ謝る


その隙に城咲は廊下に出て行こうとし、奈月がバク宙をし城咲の前に立ちはだかる


『ちょっと邪魔!どいて!!』


『永嶺秘書官の話を聞いてくれたら、どいてあげるわよ』


『城咲!早くここに来なさい!!』と教官は怒鳴る


『あーもう!うざいんですけど!』


『成績は良くても頭の方は悪いみたいね。』と永嶺は城咲の行動に呆れ顔で言う


『誰が頭悪いですって!』


『城咲さん、アンタのことよ。』


ちょっと待ってと言わんばかりに永嶺と城咲の間に奈月が割って入り

『永嶺秘書官、視察するだけのはず。』


『参謀総長の第2秘書官である私に対して、この物言いと態度は懲罰に値するけど』


『申し訳ありません、よく言い聞かせておきます。』城咲の行動を教官は平謝りする


それを横目で見ながら城咲は再び教室の外へと出て行こうとし、奈月は永嶺を見て永嶺が頷いたのを確認して城咲を止めずに通す


『訓練兵の教育をしっかり行わないと、懲罰房行きになるのは教育する方だと言うことを忘れないように。』


『はっ。了解いたしました!!』


『まったく。』と吐き捨て永嶺は教室を出て行く



奈月と廊下を歩きながら


『あんなのが成績トップなんて信じらんない。』


『反抗期のお子様なんですよきっと』


『お子様に通信士になられたら困るんだけど。』


『心はお子様でも、頭の中身の方は優秀だから、成績トップを残してるのでは?』


『物は言い様ね。』


『まぁまぁ、そんなに怒らない怒らない。』


『良いわね、なっちゃんは気楽で。』


『参謀部付け秘書官という肩書きだけの似非(えせ)秘書官ですから。』


『似非って言わない!一応は参謀部の一員なんだから。』


『了解でぇす秘書官殿。』


永嶺と奈月そして城咲と教官のやり取りを見ていた二人組が永嶺と奈月を追いかけて来て


『あの、参謀部の方ですか?』


『この襟章を見てわからないの?』


『いえ、その...』


『なに?忙しいんですけど。』


『西野詩音さんにお会い出来たりしませんか?』


『訓練兵が西野秘書官に?無理無理、立場が違い過ぎよ。それじゃそういうことで失礼。』


そう永嶺は素っ気なく答え歩き出す


『永嶺秘書官って意地悪なんですね。』


『別に。本当のことでしょう?いち訓練兵が参謀総長の第1秘書官である西野秘書官に面会を求めても門前払いなのは当たり前。』


『なら、第2秘書官は?』


『右に同じ。』


『じゃあ私は?』


『参謀部付け秘書官である以上は以下省略。』


『そう。』


『そう。』


『んー。わかった!永嶺秘書官は先に行っててください。』


『ちょっと、なっちゃん!』


『良いじゃないですか、少しぐ・ら・い。』



『もう、身勝手なんだから。早めに戻んなさいよ。』


『は~い!永嶺秘書官さま。』



永嶺に素っ気なくあしらわれ呆然と廊下に立ちつくす二人のところに奈月は戻って

『えっと、名前なんだったけ?』


挿絵(By みてみん)


『赤坂です。』


『森下です』


『そうそう!赤坂安莉さん!と森下まりあさん!』



『私達のことをご存知なんですか?』



『まぁ噂ていどには』


『噂?』


『あ、気にしない気にしない。』


『ひょっとして...』


『ストップ!その名前は出しちゃダメ!とにかく、西野秘書官への伝言ぐらいは私、奈月ありすが聞いておきます。

とはいえ、何となく言いたいことはわかる気がするんだけどね。』



『15に行きたいんでしょ?』


『そうです。。。』


『知ってるとは思うけど、配属先は選べない決まりがあるから。例え西野秘書官に直訴した所で希望にそえるか、わからないわよ?』


『そこをなんとかお願い出来ないですか。。。』


『私に言われても..とりあえず西野秘書官には伝えてあげるけど期待しないでね。』


『それじゃバイバイ。』



案の定の用件だったわと奈月ありすは思いながら永嶺のあとを追う。




ーー訓練所執務室ーー


『永嶺、奈月、ただいま戻りました。』


『視察ご苦労様、ところで城咲って子はどうだった?』


『あれは...ねぇ..なっちゃん。』


『頭は合格、心は不合格ってところです。』


『頭は合格で心は不合格って?』


『要するに、成績に比して態度は反抗期の子ども並みってことです。』


『まあ、確かに礼儀がなってない子でした。』


『そう、改善の余地はありそう?』


『それは本人次第かと。』


『あ!』


『何よ大きな声だして。』


『赤坂、森下両名より、西野秘書官に伝言じゃあなかった、お願いがあるそうです。』


『逢ったの二人に。』


『城咲茜と同じクラスだったので。』


『あの二人のこと、どうせ水澤君がいる15中隊に配属して欲しいとでも言ってたんじゃない。』


『その通りです。』


『まったく困った子達ね。』


『でも、西野秘書官は...』


『考えとくわよ。』




>>>>>


奈月ありすさんと逢ってから1週間ほど経った頃


赤坂!森下!両名は最上階の所長の執務室へ急いで来るように西野所長より命令よ!と教官から言われ

私達は最上階にある西野詩音さんのいる執務室に向かいました。




『赤坂、森下入ります!』


『許可します。入りなさい。』と先日に素っ気なくあしらわれた永嶺さんの声


扉を開け中に入ると私達の目の前にデスク仕事をしながら見覚えのある顔


挿絵(By みてみん)


『久しぶりね。』


『西野さん、お久しぶりです。』


『まあ、座りなさい。』

私達は西野さんに促され椅子に腰かけ


『今日来てもらったのは、先日、そこに居る奈月に貴女達が私に伝言をしたからです。』



永嶺秘書官の隣に奈月ありすさんがいて

『奈月さん、ありがとうございます。』


『礼はいらないけど?私はただ西野秘書官に貴女達の話をしただけだから。』先日とは違って今度は奈月さんの方が素っ気ない声で私達にそう言い



西野さんは『結論から先に言うけれど、貴女達の希望を叶えることは出来ない訳じゃあないけれど貴女達の成績次第になるわよ。』


『私達の成績次第?』


『そう。貴女達が最終試験で上位10位以内に入ったなら望みを叶えましょう。

だけど、上位10位以内に入らなかった場合は諦めなさい。』


今のところ私達の成績は30位前後を行ったり来たりしてる

あと20もランクを上げるには並大抵な努力じゃ届かない。



『貴女達が希望してる部隊は半島派遣軍でも1、2を争う実力派の集団

ことに水澤君は今、第1小隊を束ねる将校であり敵も恐れる存在になってるの

その15中隊に中途半端な成績で入隊することは私の望むところじゃないわ。』



小隊を束ねる将校という言葉に私つい『水澤さんは、もう将校になってるなんて凄い!』と声に出してしまい


『貴女は九州で水澤君の何を見て来たの。』と西野さんに怒られました。


『とにかく、卒業まで時間もない、上位10位以内を達成出来なかったら諦めて大人しく軍命に従いなさい。』


『....。』


『返事をしないってことは受け入れないってことかしら?』


『いえ、頑張ります。。。』


『声が小さい!!』


『すみません。頑張って10位以内に入って見せます!!』


とは言ってみたものの卒業まで2週間もない

最終試験は卒業前1週間に行われるから実質1週間しか私達には時間がない


この時の私達は西野さんの条件をクリアする自信は正直ありませんでした。





ーー清州(チョンジュ)15中隊野営ーー



『あと2週間ぐらいか?』と15中隊長の梶原は言い


『大田で第1陣を迎えることになるでしょう。』と副長の西野がこたえる


『岡村田の野郎のせいで厄介なことになったな。』と隊長補佐の佐脇が言い


『まあでも、ウチは里山看護官、稲葉、三崎両軍医と桜井通信士と女性陣は元から居ましたから大丈夫でしょう。』と副長補佐の藤井がこたえる



『あの4人ってか、約二名は筋金入りの豪傑だってこと忘れてんなよ。』と佐脇は少し笑いながら言う


『その二人が居るから安心なんだろ。』と藤井


『まあ、違いねぇわな。』


『いずれにせよ、我が隊以外は初の女性兵の受け入れになる。』と梶原隊長


『まぁ、大丈夫だろ?へたなことしでかしたらウチの金獅子が黙ってねぇさ。』と佐脇がこたえる。



15の金獅子と異名を持つ水澤の考えた苦肉の策


その策が第2段階へ移行しようとしていた。






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ーーつづくーー

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