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THE LAST STORY>RELOAD< ⑫ 前編

挿絵(By みてみん)


THE LAST STORY>RELOAD<


第12話 Destiny 前編


奈月(なつき)ありすから受け取った民間人への誓約書の内容、その内容は水澤にとっては想定内だった。


あの栄州(ヨンジュ)での事件が新たな問題を引き起こすと水澤は考えていた。


水澤は奈月ありすと共に伊藤の戻りを待っている間に〝起こり得るだろう問題〟に対処する為の策を考え

その策を参謀部主導の(もと)で行うことで岡村田と対決する決意を固めていた。



西野詩音(にしのしおん)北見大地(きたみだいち)と共に伊藤勇二(いとうゆうじ)が15中隊営舎に戻ってくる



『伊藤ちゃん、おかえり』


挿絵(By みてみん)



『これを。』


『それなら、なっちゃんからもらったよ。』


『でしたら、説明はいらなそうですね。』


『説明は必要ないが、抜刀するのはどうかと思うぞ』


『そうですね。ですが仮にあの紙を見た時、貴方だったら、どうされてましたか?』


『愚問だな。』


『抜刀されてたと解釈してもよろしいでしょうか?』


『それこそ今さらだろ。』


二人のやり取りを聞いていた詩音は

『どんな理由であれ、一応は上官にあたる人物への乱暴な行為は軍法で禁止されてるわよ、それに同じ日本軍同士の私怨による同士討ちもね。』


『それぐらいわかってる。だか、今回の一件はそれを忘れる程の事件だろ?』


伊藤の行動に一定の理解を水澤は示す

自身に置き換えて考えてたなら自分も同じように抜刀したかも知れないし、それ以上の行為に及んだ可能性がある

それをわかっていた水澤は自制する為に司令部に行かなかった。

『この一件が中川、田中両名の独断ではなく、裏に岡村田の存在があると考えてる。』


『自分もそう思います。』


『間違いなく岡村田はこの事件に絡んでるわ』


そう言って奈月ありすは録音した音声を流す


『口を滑らしたか。』


『中川は出来れば責任を逃れたかったのよ。』


『責任を逃れることは出来ないだろ。派遣軍総司令としての責任は重大だからな。』


詩音は腕組みしながら『中川、田中両名は大邱(てぐ)警備隊が身柄を拘束して今は地下牢に入れられてるわ。』


『岡村田の方は?』


『霞ヶ関の本営に居る統合幕僚長と第2秘書官の井上香織(いのうえかおり)さんが動いてるわ。』


『無駄だと思うがな。』


『無駄?』


『慰問団の派遣の経緯を考えるなら、ヤツは政治屋の力を背景に居残るだろうな。』


『でも、今回ばかりは。』


『野郎の十八番(おはこ)政治屋の力を使うだろうさ。政治屋の奴らが黒いモノも白と言えば、例え黒でも白に転じる。』


腐食した政治屋の舵取りする腐った統治体制は政治屋の都合で如何様(いかよう)にも変わる

この日本国は国民の為の民主国家ではない政治屋が利権を守る為に国民は搾取され

一部の特権階級、いわゆる上級国民とそれにつながっている政治屋だけが得をする国家構造になっている

戦争勃発から国を捨て一目散に逃げた連中

そして、政治特権であの日に親子を引き裂こうとした政治屋

あの日、水澤が自身のチケットを渡さなかったら、親子は離ればなれになっていたと思われる。


『とにかく、岡村田は次の手を打ってくる。それを阻止するには同じように政治屋の力が居るが、聞き及ぶ限り、山口閣下は清廉潔白(せいれんけっぱく)な人物』


『政治屋と黒い繋がりを嫌ってますからね。』


『そうよ。政治屋に媚びるぐらいなら舌を噛み切って死を選ぶぐらいにね。』

本心を言えば詩音は山口参謀総長に、多少は政治屋との関わり合いを持って欲しいと思っている。


例え参謀部や統合部が岡村田より上位にあるとしても水澤が思うのは『岡村田の企んでいることは派遣軍の指揮権と参謀部、統合部の弱体化。

この事件を利用し派遣軍を潰しに来る可能性もある

今日の栄州での出来事に関係する全ての人物を抹殺する可能性も出てくる』

以前、岡村田は霧島防御陣地にて15中隊を含め有力な部隊と、その指揮官の詩音の戦死を待つかのように後方の安全地帯から動く気配は出さなかった。


『そんなことは私達参謀部は決してさせないわよ。』


『参謀部が健在でも岡村田は次の行動を起こし参謀部を潰しにかかるだろうさ。』


『どう潰しに来ると?』


『今回の事件を完全に隠蔽する為には、半島に封じ込めることが一番手っ取り早い。』


『まさか。』と伊藤は言って再び顔に怒りの色味がさす


『そのまさかだよ。だからこそ参謀部は最大限にその力を発揮する必要がある。』


『どんな風に。』と奈月ありすが水澤に聞く


『先ず、この事件に巻き込まれた民間人は間違いなく召集され半島送りになるだろう。そして、九州奪還を知るモノも同じように召集され半島に

その目眩ましの為、関わりない人達も...』


『今は志願...』そのコトバンクの続きを言う前に詩音の頭の中に現在形進行形で国会で議論されている法案が浮かぶ


奈月ありすは『岡村田の考えそうなことね。』と言い『政治屋の力を使い志願だけじゃなく召集を早期に開始させる訳ね』と納得の行ったように答える


事実、岡村田は裏で民間人の召集へ向けた動きをしていた。

栄州事件は岡村田にとって歓迎できる事案でもあり利用できる材料として充分な意味を持つ。


そのことを踏まえて水澤は、ある一計を案じ詩音に託した。




>>>>>>>


翌日、大邱警備隊の地下牢にて口から泡を吐いた状態の中川、田中両名の遺体が発見される

死因の特定の解剖が行われ何者かが両名から青酸カリ等の毒が検出された。


例え、奈月ありすが録音した音声があったとしても

Al等で合成されたモノと岡村田が主張し政治屋の力を使えは黒いモノも白となる

全て岡村田の筋書き通りに事は進む


その阻止を統合、参謀両部門が行ったとしても、国軍の総司令にあたる岸本が待ったをかけ、防衛大臣がその意向を軍に伝えれば軍は国軍総司令の命令に従わなければならない。


それほど、国民の生命より自身達の利権の方が大事なのが政治屋達である。



>>>>>


翌週、国家にて国家総動員法と男女機会均等法に基づき男女わけなく召集する

召集特措法が可決成立する


着々と自身の野望を遂行する岡村田

その企みを阻止するには同じように政治屋を利用する必要がある

この一連の動きに対抗する為に詩音は山口閣下に政治屋とのパイプ作りを進言


山口喜久(やまぐちよしひさ)参謀総長は首を縦に振ることはしなかった。

参謀部としての対抗手段は統合部と連携し〝水澤が詩音に託した策〟を遂行するより他はなかった。




>>>>>>



栄州駐留警備中に国家総動員特措法の成立を聞いた水澤は潰すべき敵は北韓と岡村田そして日本国にのさばる無能な政治屋

これらを排除しなければ〝本当の意味での輝かしい未来を渡す〟ことは出来ないと決意を新たにする。




一方、参謀部では詩音の心に怒りが満ちていた。

あの九州奪還戦のあと、志願を禁じ、戦争終結までは平穏に暮らして欲しい人達が岡村田の企みにより

半島に送り込まれる法案が可決成立し矢継ぎ早に召集が始まっている

水澤が〝自身は民間人の代表〟として軍に居残り守り通したことが灰塵に化してしまう。

水澤の努力が無駄になってしまったことが許せないでいた。



水澤が託した策を遂行するため詩音は邁進して行く



ーー北九州ーー


Anri_daily...



私は日々、仕事に忙殺されながらも、水澤さん達の無事を祈らない日はありませんでした。


そんなある日のこと、私達の国家は戦争を遂行する為に兵力の増強という名目で国家総動員特措法を可決成立させ更に暗黒の時代を迎えようとしていました。


太平洋戦争と同じように無慈悲とも言える国家の暴走を止めることは誰にも出来ず私達の国家は軍事優先を掲げて国民を再び戦火の中へと送り出し始め


私の元にも召集命令書が届きました

私は自身の心の中で〝水澤さんの努力が無駄になる〟と感じても居ましたが

どんな形であれ、これで半島へ行けるという水澤が聞いたら怒りそうなことを思ったりしました。


私に召集命令書が届いた日、同じように森下(もりした)まりあちゃんにも届き

私達は局に休暇届けを提出しましたが

三年5ヶ月の軍役期間がネックとなり局長より退職という形を突き付けられ


私達は仕方なくそれを受け入れ退職をし大宰府の訓練所に入校


私達の役割は其所で1ヶ月半、そのあと大邱の訓練所で1ヶ月半、あわせて3ヶ月の訓練の後に各部隊へと配属になるということを訓練所で知らされました。


配属先は派遣軍人事院が決める為、所属先を選べないそうで

私達は水澤さんの居る15中隊へ行きたかったけれど

所属先が選べないと聞いて落胆しました。


もし、私達と水澤さん達との間に運命の糸が繋がっているのなら

〝どうか神様、私達を再び水澤さん達と巡りあわせてください〟


そう祈らずに居られませんでした。



挿絵(By みてみん)



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ーーつづくーー



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