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THE LAST STORY>RELOAD< ⑪ 中編


挿絵(By みてみん)



THE LAST STORY>RELOAD<


第11話 栄州(ヨンジュ)の奇跡 中編




水澤が炎の中に飛び込んだ後、川中は上を見上げ

『永嶺秘書官!とりあえず、赤ちゃんを!!』


永嶺は頷き、腕を前に出し赤ちゃんをビルの窓の外から下へと下ろそうとした瞬間下の階から炎が吹き出し

今、下におろしたら炎に焼かれる...

永嶺は一旦離しかけた手を止める


段々と吹上げる炎が永嶺の居る階を飲み込み始める



ガシャン!パリン!と音を立て炎の勢いに負け各階の窓が割れ火を吹く


水澤が永嶺らを助けにビルに飛びこんでから刻一刻と時間が過ぎて炎が勢いを増して行く



ドン!ガシャン!ザーと音がして











永嶺の背後から水澤が現れる

先ほどのザーと言う音はスケボーの要領で扉を床に滑らせた音

その扉の上に乗り水澤は炎を抜け永嶺の元に着いた


『水澤君!』


『優華、待たせて悪い。』


水澤は身を乗り出し『淳也!陽二!マットをビル側にもう少し近づけろ!』


『さすが水澤さん!!了解ッス!!』



榊達がビル側にマットを近づけたのを確認した水澤は永嶺から赤ちゃんを受け取り

窓枠に足をかけ前転宙返りし自身の頭が下に向いた瞬間に手を離し赤ちゃんを下のマットへ落とす


綺麗な弧を描きマットの中心に赤ちゃんは落下しマットを滑り榊の腕の中に抱かれる


『よしよーし!大丈夫大丈夫!』


『水澤さん!赤ちゃん無事ッス』


窓枠を支点にして回転し赤ちゃんだけを手放し自身は足をかけたままで居た。


よっと!と言い永嶺の元に戻った水澤は永嶺と赤ちゃんの母親を両脇に抱え『下手に動くなよ。』と言い飛び降りる


10、9、8、7、6、5、4、3、2、1階と自身の落下して通過する階を数える

そしてマットに落着する一瞬、エアーマットに永嶺と母親を投げて落下の衝撃を柔らげさせ


自身は投げたと同時に身をバク宙のように回転させ着地する。



マットを滑り永嶺と母親は怪我一つなく無事に救出され

榊は母親に無事保護した赤ちゃんを手渡す


『なっちゃんが言ってたけど、水澤君は忍者みたいね。』


『サーカスもびっくりすよ。』


『まあ、そんなんはどうでもいいけどよ。』


ツカツカと歩みよりガッとカメラを掴み取り上げる


そしてカメラを炎の中に投げ入れ


『人の命がかかってる時にカメラなんぞ回してんじゃねぇよ!』


報道カメラマンだと名乗る男は、あのカメラは命と同じぐらいカメラマンにとって大事だと水澤に怒りを込めた言葉で言い


『カメラなんざまた買えば済む話だろ?でもな?人の命は新しく買えねぇんだよ!!カメラと命、比べるまでもねぇだろうが!!』


それでも引かないカメラマンに


『半島派遣軍、参謀部、山口参謀総長の第2秘書官の永嶺です。カメラは弁済させていただきますが、弁済出来ぬモノが、この世の中なはあるということをお忘れにならないようにお願い申し上げます。』


参謀部の秘書官と言う言葉にカメラマンは怯む

一般兵卒の水澤より上の存在というより九州地方奪還の作戦を主導したと噂される参謀部の秘書官、しかもただの秘書官ではなく山口参謀総長の秘書官

逆らえば檻に入れられても文句すら言えない


カメラの弁済だけを受け入れカメラマンはそそくさと退散する


鶴の一声とはまさにこのこと永嶺の一声にカメラマンは引き下がった。


『さすが総長閣下の秘書官!人助けまでやってのけるとは恐れ入りました。』


『助けたのは水澤君じゃない。それに私は助けられた方だし。』



『まあまあ、そう言わずにね!』


『私は西野秘書官じゃないから、手柄をいただくことは致しません!』


『詩音さんは手柄をもらったことはないけど?』


『そう?』


『そう。』


『なら記憶違いだったみたいね。忘れなさい大邱警備隊!!』


『了解!!』


やっぱり鶴の一声



水澤が榊達や派遣軍の主力部隊の力を借り九州奪還を果たし、その作戦発案、主導は参謀部、参謀総長の第1秘書官西野詩音としたことで参謀部の影響力と復権は現在も健在であることを示す一件として記録される。





ーー北九州ーー


anri_daily...


半島の情勢が一進一退の攻防戦となり戦線が栄州、堤川、清州の東西のラインを最前戦として膠着状態になり

半島の様子は外国メディアの情報と私の所属するテレビ局や他局の報道でしか知り得ない状態でした


そんなある日のこと、大邱市に派遣された私達の局のカメラマンが大邱で黒服の金髪にカメラを炎のカメラマンに投げられ壊されたと言うことがありました。


私は黒服の金髪というフレーズとカメラマンの語る

その黒服の金髪の方のカメラマンに対する台詞に


きっと水澤さんだと思いました。


無事で居てくれたことが嬉しくて、そして半島でも人を助けて居ることも嬉しくて仕方ありませんでした。


私はアナウンサーで、自分の担当する番組を持ちながらも半島への取材を局に申し入れたことがありましたが、女性に危険な取材はさせられないと言われ

私は九州で危険な目にも、思いもしてきた経験があるのに..と思いながら

自分の職責を全うすることを心がけて日々を過ごし


思いがけない形で水澤さんの無事を知り

半島への取材に行きたい思いがより一層強くなりというより


ただただ水澤さんに逢いたいだけなんですけどね。


その想いが後々、思いがけない形で実現するなんて

この時はまだわかっていませんでした。




ーー囮り作戦ーー



大邱空襲で永嶺秘書官や赤ちゃん、その母親を救出した功績を称えられ

榊分隊員は全員一階級づつ昇格


榊は最上級下士官の曹長(そうちょう)となり川中も同じく曹長、黒木、森村、沢田、三上も同じ階級に

杉本も一階級上がり軍曹になり水澤も同じく軍曹へと昇格


これと併せて参謀総長より永嶺秘書官救出の感謝状と銀星章(シルバースター)を授与された。




>>>>>


大邱での休暇を終え15中隊は北上し栄州へ進軍

栄州の守将のパクムランは15中隊との直接対決を避けポハン方面へと移動


15中隊は無血で栄州入りし1週間ほど駐留警備を行ったあと堤川(チェチョン)へ進軍



堤川にてヤンジヌ隊と小競り合い程度の小規模な戦闘が起きたのみで、それ以外はにらめっこ状態が続き


大衝突を起こすことなく15中隊は清州(チョンジュ)へ移動


チョンジュへ移動する15中隊を追うようにヤンジヌ隊も移動を開始


清州市街で15中隊対ヤンジヌ隊との清州の支配権をめぐる戦闘が起き

15中隊は砲撃隊、大邱航空隊の支援の下でヤンジヌ隊を清州から追い払い


南下を開始し大田(テジョン)に帰投した。



大田の15中隊営舎に戻り1週間の休暇を終え再び清州に向け進軍

清州にて待ち構えていたヤンドングン隊と戦闘状態に入る

数に勝るヤンドングン隊を15中隊は砲撃、航空支援の下で圧倒しヤンドングン隊を水原(スウォン)方面まで猛追撃戦を展開し一時的に水原を抑え

大邱から栄州、堤川、清州へと向かって来る第3中隊の菅野中隊駐留警備を交代し

堤川へ移動、堤川にてヤンジヌ隊、陣容を建て直したチョソンミン隊と堤川の支配権をめぐる戦闘がはじまり

ヤンジヌ、チョソンミン隊の2方向からの攻撃を15中隊は隊長補佐の佐脇和馬(さわきかずま)と副長補佐の藤井一弥(ふじいがずや)の2隊に分け

2正面攻撃に対処しながら、水澤所属の黒装部隊の榊分隊を遊撃隊としてヤンジヌ、チョソンミンの戦線の真ん中に投入しヤンジヌ、チョソンミン隊の連携を妨害


両隊の真ん中に黒装部隊が現れたことにより連絡路を遮断され地下に埋設していた通信ケーブルの破断と後方配置していた補給部隊が脅威に晒され

チョソンミン、ヤンジヌ両隊は戦線の正面を縮小し榊遊撃隊を挟み撃ちにする態勢に移行する



敵の動きは桜井満里奈(さくらいまりな)のDシステムによりモニタリングされており

堤川各所に配置されていたヤンジヌ、チョソンミン隊が榊遊撃隊を挟み撃ちにする為に行動を開始したことを榊遊撃隊に伝達


少数精鋭部隊でもある榊遊撃隊は持ち前の高機動力を生かし戦線を離脱

まだ黒装部隊が自分たちの間にいると思っているチョソンミン、ヤンジヌ隊は中心部を固め包囲しようとする


その行動をDシスが捉え桜井から通信主任の小山に報告され小山は砲撃隊へ空襲砲撃を要請


ヤンジヌ、チョソンミンが最も集まる場所に155ミリカノン砲による空襲砲撃が降り注ぐ


山肌が露出し山景が変わる程の猛砲撃にヤンジヌ、チョソンミン隊は後退を余儀なくされ

佐脇、藤井両隊が15本隊と合流し砲撃を逃れたチョソンミン、ヤンジヌ隊の残置して言った敵軍を包囲

再三再四投降を呼び掛けるも、それに応じることをしない敵軍を撃滅するか、包囲を解き栄州へ進軍するかを梶原隊長と西野副長は協議し、ヤンジヌ、チョソンミン本隊は堤川より撤収したことを作戦上の勝利と考え包囲を解き栄州へ向かうことを決定し

敵残置部隊を無視し榊遊撃隊を収用して隊列を組み直し栄州方面に移動を開始する


堤川から栄州に向かう途中に15中隊は1度足を止め野営する


『先の栄州戦はパクムランが我々との戦いを避け労せず栄州を抑えたが、栄州を抑えたとて敵軍の数を減らさなければ磨耗戦略は完遂できぬ。』


彼我(ひが)の全体的な戦力差には以前として北韓軍の方が上回っておりますからね。』


『何とかパクムランをひきずり出し叩く方法はないか?』


『ムランの野郎は俺達15が来たら直ぐに逃げやがるからな。』


『逃げた敵を追い栄州を空にすれば別な敵が南下し栄州を抑え、我々の背後を脅かしかねませんからね。』


梶原隊長、西野副長、佐脇隊長補佐、藤井副長補佐の四名はパクムランを叩く策を模索する


『水澤と伊藤を呼んでくる。』と佐脇は言って本営テントから出て水澤と伊藤を連れて戻ってくる


『お話とは?』と伊藤が聞く


西野副長が伊藤と水澤にパクムランを叩く方法がないか尋ねる


水澤はパクムランごとき泳がせといても問題ないと思うと言い

本命はヤンジヌ、チョソンミン、キムユシンこの3隊こそが脅威で他は無視しても問題ないと答える


一方、伊藤は『パクムランは自身より弱い部隊には威を振るい、我々や力のある部隊とは徹底的に交戦を避ける傾向にあります。』


『だから、困ってんだろ?』


『ここは一つ、次の栄州駐留部隊である、田中大隊を囮りに使ってみては?』


『5大隊を餌にするのか?』


『ええ、先ほど申しましたようにパクムランは自身より弱い部隊には攻撃を仕掛けて来ます。そして田中大隊はパクムラン隊より弱く

パクムラン隊に限らず北韓軍と接敵後まもなくメーデーを発信します。』


『田中を囮にパクムランを叩くつもりか?』


『栄州の警備を田中大隊と交代したのち大邱に戻ると見せかけて栄州近郊に部隊を伏せ、メーデーが発信されたら栄州に戻り包囲殲滅戦を仕掛ければパクムランは脆く崩れると思います。』


栄州方面守将パクムランを葬り北韓軍の刃を1つ折り

ヤンドングンやハンガイン等、今の15中隊にとって脅威になり得ない存在を葬り去れば

彼我の戦力差はおのずと縮まる


伊藤の作戦は後々の戦略を含む作戦でもあった。


味方を囮りにすることに多少の抵抗感はあったものの梶原隊長は伊藤の案を採用し栄州にてパクムラン隊を撃破撃滅を決意した。



翌日、15中隊は栄州へ進軍

前回同様にパクムランは15との対決を避けポハン方面に移動


栄州警備を15中隊は行って田中大隊と警備を交代し南下すると敵に見せかけ

伊藤の作戦を遂行する為、部隊の位置を隠蔽し負傷兵を先に大邱帰還させる


この負傷兵の帰還が15本隊の大邱帰還と捉えたパクムラン隊は栄州に向け進軍を開始



田中大隊とパクムラン隊の戦闘が開始されるまで15本隊は栄州近郊に潜伏し時を待つ。




この日、栄州にて大事件が勃発することになるとは水澤達は思ってもいなかった。








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ーーつづくーー

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