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THE LAST STORY>RELOAD< ⑧ 前編


中村軍曹の勇み足で作戦が頓挫失敗し堤川(チェチョン)で作戦の失敗の責任を水澤は一身に背負って二等兵から再スタートすることになった。



挿絵(By みてみん)



THE LAST STORY>RELOAD<


第8話 哀しき刺客。前編



堤川戦役での水澤の処分を15中隊として不服を申し立て参謀部、統合部は処分取り消しの決定を下すが

水澤は自身の言葉をくつがえしたら男が廃ると言い

二等兵として15中隊、榊分隊員の下働きをしていた。


榊らは、水澤にそんな真似をさせたくはなかったが、水澤の顔に泥を塗ることは出来ないと思い

心の中で謝りながら、水澤に雑用等をさせていた。


堤川戦役のダメージの回復の為という名の言い訳で方針を持久戦に転換した派遣軍は清州(チョンジュ)栄州(ヨンジュ)の東西の防衛線を敵と接敵する最前線と定め

大邱(テグ)大田(テジョン)を補給基地化し大邱から出撃した部隊は北の栄州~清州を巡回、大田を出撃した部隊は北の清州~栄州を巡回し、ひと月毎に交互に出撃させ接敵した場合は交戦し敵軍の数をすり減らす磨耗戦術を採用決定され長期戦の構えに移行しつつあった。




ーーサヤ、ツユ、ナユンの決意ーー


サヤ、ナユン、ツユは、不活発なソンジェの行動に日々苛立だち始めていた。


サヤは自分は日本人だからといって、ツユ、ナユンに15中隊の水澤に会いに行くことを告げる


ナユン、ツユも同行すると言い


三人は大邱の15中隊営舎を訪ねる



営舎入口で、大邱警備隊の大場警備主任に止められる


サヤは自分は日本人で、水澤とは知り合いだから中に入れて欲しいと訴えるが、大場は許可証がない上にナインスのサヤが水澤の知り合いということが嘘であると見抜いていて、南韓の許可証を持って、もう一度来るようにサヤ達に言う


サヤ、ナユン、ツユは許可証を取るには、必然的にソンジェの許可がいる

ソンジェが日本側を嫌い、その上、15中隊に行くと言ったら簡単に許可証を出さないことをわかっている以上

なんとか此処で入れてもらわないと二度と会えない気がして必死に訴える



大場とナインスの生き残りが門前で揉めているのを買い出しに出ていた水澤が目撃し


『おーい!大場ちゃん?なにやってんの?』


『この娘達が許可証なく訪れて水澤君の知り合いだと嘘を言うもので』


『あ、悪い、言うの忘れてた、大場ちゃん、その娘達は特別なんだ。』


『特別?』


『俺のお客さん、わかるだろ?』


水澤を相手に揉めたら警備隊から追い出されることぐらい大場もわかっている

例え水澤の言葉が嘘でも逆らわずに了承するしかない


水澤の影響力は派遣軍のみならず警備隊にまで及んでいる

その源は、参謀部、統合部が水澤にお墨付きを与え金髪に黒服を許したことで、例え水澤の階級が低くとも大佐、少将クラスの待遇で接っさなければ自身の首が飛ぶ


『水澤君の知り合いというのは本当だったのですか、これは失礼しました。』と大場は仰々しく言い


『ごめんな大場ちゃん。』と水澤は謝り


『サヤ、ツユ、ナユン、中に入りな。』と三人を営舎へと水澤は案内する。






『淳也く~ん!買い出し終了しましたであります!』


『すんません。』


『気にすんなって言ったろ。』


『了解ッス!』


『そんなことより、こっちに良い風が吹き出したゼ。』


そう言って、サヤ、ナユン、ツユを呼ぶ


『あ、ナインスの生き残り』


『あんにょんはしむにか~っ!!であってんのか?』


『日本語でOKよ。』


『悪いなぁ、韓語はまだ覚えてる途中なんでな。』


『わざわざ韓語を勉強してくれたりの?』


『ナユン、くれたりの?じゃなく、くれてるの?だろ。』



『くれて..るな?』


『惜しい!』


『おいしい?』


『いや、何でもない。』


『そんなことより、三人で何しに此処に?』


『水澤さんに頼みたいことがあんねん...。』


『遠慮せずに言ってみな?』


『知っての通り、ソンジェ氏は、北韓との戦争に積極的じゃないやん?』


『ソンジェの弱腰には、空いた口が塞がらないぐらいだが?』


『そやから、その...』



『要するに、俺達に味方して欲しいってことか?』


『味方して欲しいと言うより、私達が水澤さん達の味方になりたいねん。』


とうとうこの時が来たと水澤は思い


『最初にあった時から、俺の中では、お前達は仲間だったがな。』


『え?』


『ソンジェに対して言ってたろ?同じ人間だと。』


『同じ人間で、同じ敵を倒す仲間なんだろ俺らは?』


『そうてす!』


『相変わらず、ナユンは濁点が抜けてやがんな。』


『だくてえ?』


『いちいち気にすんな!一応言いたいことは伝わってるから』


【いちいち気になさらずに楽にされて下さい。ナユンさんの言いたいことはこちらに伝わっていますから。】といつの間にか現れた伊藤がスラスラと韓語でナユンに言う

【ありがとうございます。私は日本語はまだまだ下手ですが宜しくお願いします】とナユンは韓語で伊藤に御礼を言う


『なんて言った?』と伊藤に聞く


『自分はまだ日本語が下手ですが、よろしくお願いします。ってですよ。』


『カムサガハムニダ!』


『ガはいりませんよ?』


『いちいち細かいこと言うな!』


『ですが、韓語は同じ単語でもニュアンスや発音の仕方で意味が変わると、この前も教えましたよね?』


『おう!わかってら!』


糞細かい上に口うるさい野郎めと思いつつ


『ナユン、ツユ、サヤ!ソンジェはなんだ?』


『え?』


『三上君、教えて差し上げなさい。』


『ソンジェはバキュームカーも避けて通る糞野郎だ!』


『バキュームカー?』


【トイレ掃除の車】


『ああ!バキュームカー、ソンジェ氏はバキュームカーだ!』


『なんか違う気がするが、まあ良いか、ソンジェは!』


『バキュームカー!!』と三人そろって答え


皆で笑う。



『こんだけ、和やかなら大丈夫だろ?』



『ええ、大丈夫だと思いますよ?水澤さんの韓語以外は。』


『お前は、いつも一言多いんだよ!』


『パカやろ!』


『パカッパカッパカッパカッ』とツユは馬が走る真似をして愛嬌を振り撒く


ナインスのビジュアル担当ツユ

ナインスのセクシー担当

サヤ

ナインスのリードボーカル担当で年長者のナユン

年長者でも、愛嬌は末っ子ツユと変わらない


『ナユン、サヤ、ツユ!俺達と盟約を結ぶか?』


『めいわく?』

【ナユンオンニ、迷惑じゃなく盟約、つまり、私達と同盟を結ぼうって言ってくれてるの】とサヤが韓語でナユンに伝える


ナユンは花が咲いたような笑顔を見せ水澤の手を取り

『オッパ(兄さん)!よゆしきお願いしてます!』


言いたいことはわかっているので、これ以上は変に突っ込まず

『こちらこそ、ナユンオンニ よゆしきお願いください!』と水澤は答え


『宜しくやで?』とサヤが水澤に突っ込む


『似たようなもんだろ?』と水澤は言い


ナユン、サヤ、ツユの手を自身の手に重ね


『お前らも加われ!』


榊、三上、川中、黒木、森村、沢田、杉本、そして伊藤が手を重ねる



『今日からナユン、サヤ、ツユは俺達の仲間だ!みんな宜しく頼む!!』


『了解!!』


『りょかい!』


『ナユンオンニ了解やて! 』


『そう、りよかいよ!』


『ツユ、了解やで!』


サヤは二人に突っ込みを入れる


その光景を遠くから見ている存在がいた



水澤は手をピストルの形にして『バン!』と言って、またナユン達と話を続ける


水澤のピストルのジェスチャーが自身に向いていたことを嘘でしょと呟きスコープから目を離す


この公園から15中隊の営舎まで3㎞は離れてるのに...


奈月ありすは独り言を言い


私の存在に気付いたなんて、あり得ない...と奈月ありすは思った。




ーー大邱市公園ーー


ナユン、サヤ、ツユを連れて水澤は高台にある大邱で一番大きな公園に来ていた。



『こっちに来た時は咲いてたんだがなぁ、すっかり葉桜になったな。』


半島も青葉の季節を迎えていた。


『オッパ、ここの桜の話を知ってる?』とサヤが聞く


『いや、知らない』と水澤は答え『どんな話だ?』とサヤに聞く


『ここの桜は50年ぐらい前かなぁ、一度、全部切り倒されたことがあるねん』


『全部切り倒された?』


『そう、全部。』


『何で切り倒したんだ?』


『ここの桜が日本から植樹された桜かも知れへんって噂が広まって、当時は日本人に対する印象が良くなかってん

そやから、日本の桜は敵と見なされてん。』


『おかしな話だな。』


『そやろ?でもな、結局のとこ、ここの桜は民国の桜やったことがわかって植樹されなおしたんよ。』


『日本のだろうと民国のだろうと桜は桜だろうに。』


『そうやと私も思うねん。オッパは言ったやん、人はどこで生まれ育っても人は人って、桜も同じやと思う。』


『そりゃそうだな、サヤの言う通りだと思うぞ。』


『やろ?なんでこんな風になってしまうんやろ...』


『ソンジェに桜の由来を話したか?』


『...ソンジェさんは..』


『どうせ、チョッパリの桜なら、また切り倒すとでも言って聞く耳を持たなかったんだな。』


『...うん。』


『本当、どうしようもないバカだと思わないか?』


『思うわ。』


『サヤ、ナユン、ツユだけじゃなく、そこに隠れてるヤツも、そう思うだろ?』


『隠れてる?誰が?』


『名前、知らねぇんだよな、長い黒髪の嬢ちゃん!出て来い!!』


なんなの?こいつ...さっきと言い、今と言い...


『かくれんぼのつもりなら、探し出してやるぞ!出て来い!!』


『鬼なら探して見つけてみなさいよ!』


『なら、遠慮なく』


水澤は物陰に隠れていた奈月ありすを迷いなく見つけてなサヤ、ナユン、ツユ達の方へ連れて来る。


奈月ありすを見てツユは、きょとんとして『バキュームカー?』とほんわかした口調で言う

どうもツユは天然らしい


いや、今はバキュームカーは関係ねぇよと水澤は突っ込みかけたが


『その人は誰なん?知り合い?』とサヤが突っ込む前に聞くので、悪いと思ったがツユの発言は聞かなかったことにし


『知り合いって言うか..お前、誰だよ?』


挿絵(By みてみん)


『人をここまで連れ出しといてその物言いはなくない?』


『見つけろって言ったのは、お前だろ?』


『私は奈月ありす。』


『奈月ありす...知らねぇ名前だ。』


『どゆこと?』


『とゆこぉと?』


『どうゆうこと?』


『そこの三人!ブレたテレビ見たいに声を揃えて言わないでくれる?』


『この娘達はナインスの..』


『ナインスの生き残りぐらい知ってる。』


『なら説明はいらねぇな、ナユン、ツユ、サヤは本日をもって、我が盟友になったと、お前の親分に報告すんなよ、堤川(チェチョン)の件を岡村田に話したの、お前だろ。』


『何の話だか、わからないけど。』


『なら、何故?ユシンとヤンジヌは易々と罠の中に来た?』


まさか、、、奈月ありすは先日の岡村田への報告で堤川の地名を伝えていた。


『...さあ?知らないけど。』


『何百人の味方が犠牲になったと思ってんだよ!知らぬ存ぜぬで許されると思ってんのか!』


『..私はただ..』


『ただ何だ?』


『あんたには関係ないことよ!』


『てめえ!逃げるな!後ろめたいことがないなら、なおさら逃げてんじゃねえよ!』


『...あんたの想像通りかも知れないけど、私はただ自分の役割を果たしただけよ!』


『そうか、やっぱりお前は岡村田の差しがねなんだな。』


『岡村田閣下の命令で、参謀部を見張ってたら、あんたに追いかけられて、そして、あんたを...』


『殺せってか?』


『....。』


『どうゆうこと?』


『サヤ達が気にすることじゃないよ。』


『奈月ありすと言ったか?お前は仕える相手を間違えてる

どうせ仕えるなら、参謀部の西野詩音、永嶺優華、そして山口参謀総長にしておけ。』


『私は別に岡村田に仕えてるわけじゃないわよ!!』


『なら、さっさと参謀部に出向いて事の詳細を伝えろ。』


『そんなこと出来るわけないじゃない!!』


『出来ないなら、俺から詩音さんに話を通してやるよ。』


『私は参謀部に付くわけにはいかないの!』



『そう思うわよ。奈月ありす!!』水澤の背後から西野詩音(にしのしおん)の声


挿絵(By みてみん)



『詩音さん、どうしてここに?それに、そいつの名前まで。』


『公園に居るのは、榊君に聞いたわ、あとナインスと手を結んだことも、そして奈月ありす!あなたの事情も調べ済みよ。』


『事情?』と水澤は詩音の方を向いて聞く


『奈月ありすは、岡村田に家族を人質にとられてる。そうでしょう?』


この女、秘書官なのに参謀部の切れ者と噂されるだけあるわねと奈月ありすは思い


『だから何?あんたらが私の家族の代わりに犠牲にでもなってくれるの?』


『残念だけど、私も水澤君も犠牲なることはないわ。』


『犠牲?』とサヤが聞く


『サヤ、悪いけど少し静かにしててくれ。』と水澤はサヤに言って


『うん。』と素直にサヤは返事をして詩音に頭を下げる


詩音は『私達は犠牲にはならない、だけど貴女の力にはなれるわよ。』


『どう力になると言うわけ?』


『貴女の素性を調べる過程で、貴女の抱える事情を知った、その上で見捨てることを水澤君は許すかしら?』


『要するに、バカ村田が奈月ありすの家族を人質に、この娘を操っているってか?』


『そうよ、岡村田の考えそうなことでしょう?』


『どこまでも汚い野郎だな。』


『岡村田は私達参謀部を蹴落とし、自身が全てを握ろうとしてる。そして、水澤君の存在を知って、その娘に暗殺でも命じたのかも。』


ここまで参謀部に見抜かれていては、奈月ありすに逃げ道はなかった。


『全てお見通しなら悪く思わないで!!』


奈月ありすは水澤に拳銃を向けると


『おどきなさい!!』


『とかない!!』


奈月ありすと水澤の間にナユンは両手を広げ立ちふさがる。


ふっ。と水澤は鼻で笑い


『ソンジェの時みたいだな。』


水澤がソンジェに殴りかかった時も同じようにナユンは道をふさぎ立ちはだかった


バシっと乾いた音がして、奈月ありすは頬を押さえる


サヤは奈月ありすを睨み付けて

『自分な今、何をしようとしたか?わかってるん?同じ人間やろ?それに力になってくれるってゆーてたやんか!!それを無駄にするつもりなん!!なあ?なあ?なあ?なあ?』と奈月ありすに詰め寄る



その光景にまたツユはきょとんとして、事態を飲み込めてない様子で『たいじょぶですか?』と呟くように言って奈月ありすを見る


奈月ありすはツユの発言も視線も無視し、感情的な強い口調で『私に残された道は、あいつを殺すか..家族を見殺しにするかしかないの!!邪魔しないで!!』


『ちゃうやん!あんたに残さた道は、まだあるやろ?オッパに味方してもらったら大丈夫になるはずやで!!』サヤも感情的になりつつ強い口調になる


『俺がと言うより、詩音さんが奈月ありすの味方に付いたならという条件付きになるがな。』


『奈月ありす、貴女の家族の行方は参謀部、統合部が全力を上げて捜索してるわ。』


参謀部だけじゃなく、統合部まで...。


『嘘ばっかり...ただの野良犬の為に、統合部、参謀部が本気になるわけないじゃない。』


奈月ありすだって、詩音の言葉に嘘がないことはわかっている

だけど、万が一と言うこともある

それを奈月ありすは探ろうと詩音にくってかかる


『その証拠を求めるのね。』


『当たり前じゃない。』


『そう、なら今から私と共に司令部に来なさい見せてあげるから。』



『そう言って私を牢屋に押し込めるつもりでしょ?その手には乗らないわよ!』


『いい加減にしぃや!』


『自分の大切な家族の命がかかってんねやろ!オッパや、その秘書官さんは絶対に嘘はつかへんと思うで、なぁそうやろ?』


『名前、そして家族が人質にされてることまで把握してる詩音さんが、今さら嘘を付く理由が見当たらないがな。』


『嘘を言って騙し討ちにする程、私は落ちぶれてないわよ。』


『奈月ありす!詩音さんを信じろ!そんだけで充分だ。』


『...もし、嘘を言ってたら..』


『そん時は俺の首でも岡村田に持って行け!!』


『その言葉、忘れないから!』


『おお、しっかり覚えとけ!』


『奈月ありす、私と来なさい。』



奈月ありすは拳銃を腰のホルダーにしまい詩音と共に司令部へと向かった。



岡村田...あの男は、やはり。


と水澤は思っていた。





THE LAST STORY>RELOAD<


第8話 哀しき刺客。後編へと



ーーつづくーー





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