THE LAST STORY>RELOAD< ⑦ 中編
大田再奪還の前に水澤達は光州に居るソンジェを訪ね
日本と共闘するか、降伏するかをソンジェに迫った
だがソンジェは一向に考えを変える気を見せない。
そこで水澤はナインスの生き残りのナユン、サヤ、ツユに問う
ナユン、サヤ、ツユは水澤の言葉を受け止め、光州の司令部の屋上に半島統一旗を掲げ
水澤は自身の思惑通りに事が進んでいることを確信し
光州を離れ大田の15中隊本隊と合流した。
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第7話 堤川戦役。 中編
ーー派遣軍の攻勢ーー
二次的作戦の第一段階の大田へと15中隊は進軍
同じ頃、大邱の北の栄州へと池内中隊が進軍
大邱を進発した影平大隊と森岡大隊は一直線に大田の北に位置する清州を目指し進軍を開始
大田、栄州は時を同じくして北韓軍に攻勢に出る
砲撃隊の多連装ロケットシステムMLRSと最新鋭22式250ミリ榴弾砲による精密射撃が両戦線で開始され
大田側では155mmカノン砲による
※空襲砲撃が北韓軍に襲いかかる
【※空襲砲撃とは、砲弾が地上で炸裂するのではなく
敵の上空で炸裂し、その炸裂した破片で敵を殺傷制圧する砲撃のこと】
更に両戦線に大邱航空隊による援護
大田、栄州に敵の目が向いている間、影平、森岡大隊は清州へと到達し空き家同然の清州に影平大隊は一旦駐屯し、森岡大隊は南下しながら大田の北側から敵軍を挟み撃ちにする
大田の急報にユシン隊、ヤンジヌ隊が開城から南下を開始
米国の偵察衛星から送られてくる情報を元に影平大隊は一直線にソウルを目指し北上
それに追随するように森岡大隊も転回し影平大隊の後方からソウル方面へと進軍
大田から敵軍を追い落とした15中隊は追撃戦に切り替え清州方面へと北上
栄州攻略隊の池内隊は15中隊同様に一個中隊の戦力で栄州の北韓軍を撃破して堤川方面へと進軍
日本側の攻勢の矛先がソウルにあると考えたユシン隊、ヤンジヌ隊はソウル防衛の為に大田への南下を止めソウルに入る
ここまでは、派遣軍側の思惑通りに作戦行動は続いて来ている
あとは、ソウルに篭ったユシン、ヤンジヌを堤川に誘き寄せるだけという段階に来ていた。
影平、森岡両大隊の力量を知るユシンはヤンジヌに市街戦ではなく、一度開けた場所に出て殲滅戦を主張し
ヤンジヌは市街を出て戦うことに難色を示し
両者の意見がぶつかり合う中、平壌の情報局より〝ある情報〟が二人の元にもたらされ
ヤンジヌはユシンと共に大会戦に望むことを決意
影平、森岡両大隊と昼頃に接敵し派遣軍主力と北韓軍主力が衝突
影平、森岡両大隊は作戦要項に従い、徐々に後退しながら、堤川方面へと敵を引き寄せ続け
日暮れ前にはユシン、ヤンジヌ両者を堤川に誘致を完了させた。
先んじて堤川に各部隊は結集、そして各部隊の持ち場へと展開を完了し待機していた。
影平、森岡両大隊から「敵を堤川に誘致せり」という情報が各部隊にもたらされ
作戦遂行にむけ臨戦態勢になる
パッパッパッパパとヘリのローターの音が15中隊の居る場所に聞こえて来る
上から見えないように隠蔽網等で居場所を隠して居るがヘリはパッパッパッパパとローター音を響かせ
15の直上に達し、そのまま下に降りて来る
15通信隊のテントから出てヘリを見て水澤は『詩音さんのバカ。』と言ってテント内に戻る。
各部隊の位置は部隊同士と、あの日の会議に出席した者だけが知っている
ヘリは迷いなく着陸し、ヘリのローターの風に髪をなびかせながら、西野詩音秘書官と、永嶺優華第2秘書官、そして、桜井満里奈司令部付け将校が降りて来る
ヘリは再び上昇しホバリングしながら機首を転回させ堤川を離れて、わざと敵軍直上をかすめドアガンを放ちながらソウル方面へと行く
この一連の行動は敵軍に15中隊のみならず、他の隊の居場所を特定させない為の行動として詩音が指示したことだった。
ーー堤川決戦ーー
西野、永嶺、桜井が15中隊の通信司令兼衛生班のテントに入って来る
状況の把握の為、水澤は通信隊のテントにて影平、森岡両大隊の動きと敵軍の配置が逐次通信隊にもたらされる情報に注視していた。
『詩音さん達は何をしにこんな山奥まで来たんだ?』と水澤は詩音に聞く
『半島派遣軍、そして日本の命運がかかった作戦でしょう、軍監として前戦視察に来て当然じゃない。』と言って微笑み
『変に横やりだけは入れないでくれよ、この作戦はシビリアンコントロール下で各部隊の連携が必要不可欠なんだからな』水澤は真剣な面持ちで言う
『わかっているわよ。』
『こんな一大決戦の場に居合わせられるのは、軍人として誉れだもの。』と永嶺秘書官は言って水澤を見つめる
桜井は『私はコレを伍長に渡しに来ました。』と言い
水澤に通信機を見せる
『その通信機は?』
『私がカスタマイズした高度暗号システム搭載の通信機で、これを使えば敵に位置を悟られることもありません。』
桜井はそう言って水澤に通信機の使い方を教え
『そうか、わかった、ありがとう。』
そう言って水澤は桜井から通信機を受けとる
桜井が持って来た通信機は以前、ソウルで水澤達が孤立した時にも使用した通信機だ
この通信機は通常の通信隊が使っている通信機より小型で持ち運びが容易にでき
例えるなら、スマートフォンを箱型に少し大きくした位の軽量化タイプで、水澤達が戦場で使っているインカムより使い易いモノになっている。
『影平、森岡両大隊も配置に着きました。』と通信主任の小山が言う
『時が来たか。』
そう言って水澤はテントを出て『淳也!出番だゼ』と言い
榊分隊を集め、作戦の確認を行い山中へと入って行く
詩音は水澤達の背中を見送りながら、心の中で「全員無事に戻ってくるのよ」と呟いていた。
山道というより獣道という表現の方が似合う山中を水澤達は静かに登り自分達の待機場所に向かう
水澤は桜井から渡された通信機を使い先に配置についている伊藤に連絡をとる
「こちら水澤だ」
「こちら伊藤です。」
「敵軍は罠の中に入ったが、どうにも気になることがある。」
「思っていた以上に易々と罠の中に入って来たからですか?」
「なんだ、伊藤も同じことを考えてたのか」
「水澤さんも同じように考えてらっしゃったのですね」
「ああ、少し出来すぎじゃないかと思ってな」
「まあ、それもそうですが、敵は今や篭の中ですので、全力を持って作戦を完遂する以外には」
「それもそうだな」
「賽は壺の中です。」
「どの目が出るか?やってみなけりゃわからないってか?」
「ええ、そうです。」
「ふふ、お前らしいよ」
「真剣勝負という正面攻撃じゃない作戦ですが、この作戦は必ず勝たないと行けません。」
「そうだな。あと、中村だったか?ヤツは本当に大丈夫だろうな?」
「中村さんに出番をと思ってダム側の警備と監視をお願いしたことですか?」
「ヤツが手柄を焦って余計な真似しなけりゃ良いがな」
「中村さんは、そこまでバカじゃないですよ?やっと自分の実力を発揮できると思ってらっしゃるでしょうから。」
「無駄に張り切られても迷惑なんだがな。」
「心配はいりませんよ。志願1期生の中で4番目の成績を残したんですから。」
「成績と実戦が比例するとは限らないだろ?例え成績が低くとも戦場で場数を踏んだ榊達を見てたら、成績なんざ関係ねぇと思ってしまうがな。」
「一理ありますが、まったくもってバカなら、自分は中村さんにダム側を任せることを提案しないですよ。」
「わかった。お前を信じよう。」
「期待に応えるのは中村さんですが、代わりに礼を言っておきます。ありがとうございます水澤伍長。」
「礼なら、作戦が成功した時に中村とやらにしてやるよ。」
「どんな顔するか楽しみですね。」
「なら、そろそろ切るぞ。」
「御武運を。」
「お前もな。」
通信を切り水澤達は自身の配置場所に着き
中央に水澤、右に榊、左に三上
そして、右の榊の隣に黒木と森村
左の三上の隣に沢田、杉本
水澤達の後方に狙撃手の川中
水澤を中心に扇を返した三角形の配置で敵の動きを見張る
眼下を流れる川は、まだ静けさをたたえていた。
各部隊は高い位置の尾根伝いに待機中、ヤンジヌ、ユシン両者と影平、森岡両大隊は戦いに備え尾根の下の狭い場所に
ヤンジヌ、ユシン両隊が狭い山間部で団子状になり動きが止まった時、影平、森岡両大隊は尾根を登り
団子状のユシン、ヤンジヌ両者をダムの水で一網打尽にする
その瞬間を水澤達は、じっと待ち続けている。
風に乗り、銃砲声が聞こえる
影平、森岡両大隊とヤンジヌ、ユシン隊との戦いが堤川で開始された。
刻々と時は流れる、その時が来るのを潜伏している各部隊は待ち続ける
影平、森岡両大隊は尾根沿いを移動しながらヤンジヌ、ユシン両者を山の狭い山間部へと誘い込み続ける
攻めると見せては引き、引くと見せかけては攻め
車懸かりの攻撃を繰り出し敵軍を山間部へと誘致しながら両大隊は作戦の肝となる隘路に入り込む
影平大隊長は敵が易々と罠にかかったことを何かおかしいと警戒し
森岡大隊に先に尾根を登らせ自身の部隊を上から援護させながら敵を罠の中に完全に封じ込めようと戦い続けている
その最中に
ドォーンと音がして
大量の水が濁流となりヤンジヌ隊ユシン隊の一部と、そして影平大隊を飲み込む
完全に敵を封じ込め、影平大隊が尾根に登る前にダムが何者かに破壊された。
眼下の状況を見て森岡大隊より各隊に緊急無線が飛ぶ
そして、あの中村からもメーデーが発信される。
水澤は、チッと舌打ちしユシンめと呟き
『ソウルと言い、今回と言いユシンの野郎は敵味方の分別もないのかよ!』
ソウル戦で、ミサイルの雨を降らせた張本人はユシン
この男を倒さなければ
今後、更に派遣軍の被害が増大すると水澤は思っていた。
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第7話 堤川戦役。 後編へと
ーーつづくーー
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本日より脱字の修正や後書きの挿入作業に入りますので改稿マークが付くと思いますが、ストーリーの変更はありませんので予め御了承くださいますようお願い申し上げます。