THE LAST STORY>RELOAD< ⑦ 前編
謎の女は岡村田の送り込んだ差しがねだと思った水澤
その謎の女は岡村田から水澤の殺害命令を受けるが
謎の女こと奈月ありすは、その命令が正しいことなのか苦悩する
一方、半島派遣軍は伊藤と水澤が考えた、堤川での北韓軍との決戦に向け動き始める。
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第7話 堤川戦役。 前編
水澤達は任官を終え、第二次作戦の準備に取りかかる
水澤は詩音にあるモノも刀と同時に授けられていた。
出撃を前に全隊員が整列し
15中隊隊長の梶原亮太郎は訓示する
『我々の最初の目的地は大田だ、情報によると北韓軍は先の戦いにより打撃を受け大田には、少数の部隊しか残しおらん
とはいえ、大田の再奪還は作戦の第一段階に過ぎない
大田奪還の後は、清州を攻略し、その後、堤川へと移動する
今回の作戦の主たる目的は北韓軍を完全に叩き潰し再起不能にする作戦である
総員、心してかかれ!』
『了解!隊長殿!!』
『梶原隊長殿、大田奪還の前に行きたい場所がありますので、榊分隊は其所に行った後、本隊と合流しますので許可をお願い申し上げます。』
『行きたい場所?』
『大田を放棄して光州で引きこもっているソンジェに会いに行きます。』
『南韓軍の支援を願い出るのか?』
『いいえ、南韓軍には何の期待もしておりません。ですが、自分の予想が正しいのなら、ソンジェとは別の人物が我々に味方することは有り得ると思っております。』
『ソンジェとは別の人物?カン大尉のことか?』
『カン大尉もですが、その他にも我々に同調し歩幅をあわせてくれるだろう人物がおります。』
『カン大尉の他にか?まあ、水澤君がそう言うのであれば15中隊自体が光州へ寄ってからでも構わん』
『いえ、榊分隊だけで充分です。隊長殿達は先に大田奪還作戦を始めてください。』
『ならば、そうしよう。水澤伍長に榊分隊を預ける。』
『隊長殿、ありがとうございます。なるべく早めに用を済ませ本隊に合流いたします。』
『了解した。気をつけて行けよ。』
ーー光州南韓軍司令部ーー
任官式時に詩音からもらった通行許可証を南韓の警備兵に見せ検問を通過し、ソンジェの居る司令部に向かう
営門でも警備兵に身分証と許可証の提示を求められたが、15中隊の隊員証と通行許可証を見せ
水澤達はソンジェの居る司令部へと案内される
「ソンジェ司令、半島派遣軍の軍使がお越しです」
「派遣軍の軍使?今は忙しい!帰ってもらえ!」
「ですが、日本国参謀部の軍使ですがよろしいので?」
「忙しいと言っておるだろう!」
ドカッと扉を蹴り、水澤達は中へと入って行く
部屋の真ん中にナユン、サヤ、ツユが居てソンジェはソファーに腰掛けて葉巻を燻らせていた。
カン大尉は不在かと水澤は思いながらソンジェに向かって
『ようソンジェ!相変わらず女はべらかして良い身分だな。』
チッと舌を鳴らし『また貴様か!』と乱暴に葉巻を灰皿にグリグリと押し付け火を消す
『こんな所に引きこもってソンジェ、お前は北韓に降伏でもしたのか?』
『我々に降伏の2文字はない、勿論、チョッパリ共に対しても降伏なぞ乞わぬ。』
『そうか、なら話が早くて良い。』
『貴様の話なぞ聞く気はない!さっさと立ち去れ!さもなくば...』
ソンジェの言葉を遮り『ユ・ソンジェ!!』と水澤は刀を抜き放ち灰皿ごとテーブルを真っ二つに切り落とす
そして、ソンジェを睨み付け
『今から俺が言うことを、しっかり聞け!
まず、北韓に降伏していないのなら、お前らだけでソウルを奪還して見せろ!
次にここの屋上に翻っている太極旗を下ろし、この前に渡した半島統一旗を掲げろ!
その両方を拒否するなら、白旗を掲げ半島派遣軍に投降しろ!話はそれだけだ!
こっちは色々忙しいんでな30分だけ猶予をやる
30分以内に旗を統一旗、もしくは白旗を掲げない場合
こちらと交戦意志があると見なし光州攻略戦を開始させてもらう。』
『何を馬鹿げたことを、チョッパリの考えることに付き合うと思っているのか?馬鹿馬鹿しい』
『だったら今すぐ殺してやんよてめぇ!!』
『淳也、今は堪えろ』
『けど、コイツ、人を舐めやがるっしょ?すぐやってやりましょうよ水澤さん』
水澤は抜き身の刀の切っ先を榊に向け
『堪えろと俺が言ってんだよ!』
『すっ...すんません。』
『ソンジェ、30分以内にさっき言ったことを履行しろ
でなければ、俺達は本気でお前らを潰す!以上だ!』
『やれるものなら、やってみろチョッパリ共が!!』
『能書き垂れてんじゃねぇよ!無い頭でも、本能的に感じるだろ?ユシンより、この俺の方が何倍も恐ろしいってことぐらい』
『何を馬鹿げたことをチョッパリのくせに。』
『口だけ強そうに見せていても、てめぇの内心なんざお見通しなんだよボケ!
サヤ、ツユ、ナユン、そこのボケに付いて行っても未来はないぞ!
ソンジェが掲げないなら、お前達が代わりに統一旗を掲げろ
そしたら、俺は俺達はお前達に味方し、ナインスだったか?その無念を代わりに晴らして見せてやる。』
『榊分隊長、例の位置で30分待機した後、半島統一旗が掲げられない場合は俺達だけで光州を攻略、占領を行う。』
『了解っす。』
『なら、お前達の懸命な判断に期待しているぞ。』と水澤は納刀して榊達と共に部屋を出て行く
ソンジェは腹立たしい気持ちと、水澤という男への恐怖心が入り交じり足がガクガクと震えいた。
ナユンは『ソンジェさん、統一旗を掲げましょう』とソンジェに旗を掲げるように促す
『...チョッパリの言うことに従ったら、我々はチョッパリの下に置かれる』
『チョッパリ、チョッパリって言うけど、サヤは日本人やから、私もチョッパリってことやんな?』
『サヤは生まれは日本でも、我々南韓国民国が誇るナインスのメンバーだ、あのチョッパリ共とは違う』
『以前にあの人が言った言葉を忘れたので?』とツユがソンジェに問う
『人は何処で生まれ育っても人は人、同じ人間やって言ってたやんなぁツユ』
『そう同じ人間、そうして同じ敵に立ち向かう仲間
それなのに、何で聞き届けないの?』
『チョッパリは所詮、チョッパリだ、永久に我々とは相容れぬ』
『そんなにユシンが怖いんやったら、軍人なんかやめや!ほんまに見損なったわ』
『ナユン!ツユ!これを持っ屋上に行こう!』
『行こう!』
『うん!』
『ナユン、サヤ、ツユ、我々を裏切る気か?』
『先に裏切ったのはソンジェさんの方やろ!』
三人は部屋を飛び出して屋上へと急ぐ
その頃水澤達は自分達が乗って来た兵員輸送装甲車の上に乗り、旗が掲げられるのを待っていた。
『旗は?』と水澤は川中に聞く
双眼鏡を屋上の方に向けて見張っている川中は『いや、まだ太極旗のままっす』
水澤は少し苛立った口調で『何をトロトロしてやがる..早くしないと本当に踏み潰して行くぞ。』
『あ!』と川中が言う
『旗か?』と榊が聞き
『いや、ナユン、サヤ、ツユが屋上に。』と川中は答える
『どうやら、動いたようだな。』と水澤は言い
『旗、太極旗から統一旗に代わりました。』と川中が報告する
『そうか、なら、ド派手な信号弾を打ち上げろ』と水澤は言い
『了解っす!』と黒木が装甲車の上から七色の煙りを上げ鮮やかな虹色に光る信号弾を打ち上げる
「榊分隊より、大邱司令部へ」
「こちら司令部付け将校の桜井です。」
「桜井さん、ソンジェは相変わらずのバカ野郎であてにはならいが、ナインスの生き残りは充分に役に立つと見て間違いない模様と総長閣下と西野秘書官に伝えくれ。」
「了解しました。そのように伝えおきます。」
「では、失礼する。」
通信を終えた水澤は
『ソンジェのアホを殴るのは、またの楽しみとして、俺達も大田に急ぐぞ!』
『了解!!』と皆が応え
装甲車を大田へと爆走させる。
ーー大邱派遣軍司令部ーー
コンコンと扉を叩き「桜井入ります!」
「許可します、入りなさい」と扉の向こうから西野秘書官の声
桜井は扉を開け、山口参謀総長と西野秘書官に敬礼し
『15中隊の水澤伍長から伝言です。』
『伝言?』と参謀総長は桜井に聞く
『だぶん、ソンジェのことでしょう?』と詩音は答えて、任官式のおり通行許可証を与えていたことを参謀総長に話す。
『はい、その通りです。水澤伍長が言うには、ソンジェはあてにはならいそうですが、ナインスの生き残りの人達なら望みはあるとのことです。』
『そうわかったわ』
『ソンジェは動かぬか。』
『例えそれでも、ナインスの生き残りの、サヤ、ナユン、ツユは南韓では一定の支持を得ておりますし、ソンジェの求心力の源とも言えるナインスがソンジェから水澤君に鞍替えしたなら、こちらにとって好都合です。』
『南韓軍の司令官より、ナインスの方が上なのか?』
『弱腰なソンジェより、強気なナインスの方が人気がありますし、ナインスが声を上げたなら、ソンジェを見限り南韓軍はナユン、サヤ、ツユの手足となり動き始める可能性も』
そう、そのことを見越して水澤君は光州に行った
この一手が次のステップに繋がると詩音は思っていた。
『本当に西野君は人を見る目があるな。』
『それは、ご自分でご自身を誉めてらっしゃるので?』
『私のことはではないよ』と苦笑いしながら参謀総長は言い
『私は先任の佐藤閣下には遠く及ばぬが、その私を後任として選んでいただいた恩は返すつもりだ。』
山口喜久参謀総長は、温厚篤実な性格とは裏腹に時に激しい気性の持ち主でもある
そして、清廉潔白な人物で曲がったことを嫌う正義漢でもある
その人柄と性格をよく知る先任の佐藤は山口を後任に指名したのだ。
西野詩音と山口喜久の二人に自身の志を託して逝った先任の参謀総長
その志を引き継いだ二人と、その志を形にする為に邁進する半島派遣軍
この半島で、派遣軍と北韓軍による激しいつばぜり合いが始まろとしていた。
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ーーつづくーー
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