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THE LAST STORY>RELOAD< ⑥後編


大邱(テグ)の半島派遣軍司令部にて今後の作戦の会議が行われている最中(さいちゅう)に、突然、水澤は部屋を飛び出し

扉の外に居た謎の女を捕まえようとするが、女は水澤の追跡をかわし逃げ去った。



挿絵(By みてみん)


THE LAST STORY>RELOAD<


第6話 切り札を切るなら、もう1つ奥の手を持て。 後編



水澤が会議室を飛び出して女を追いかけていた頃


伊藤勇二(いとうゆうじ)は隊長の梶原亮太郎(かじわらりょうたろう)に促され

作戦の中身を説明していた。


第一項、作戦要綱

堤川(チェチョン)の巨大ダムに爆薬を仕掛け、敵軍を山間部に引き寄せ

狭い山間部の尾根の下に集まった頃合いにダムを爆破し、敵軍を押し流し壊滅的打撃を与え

その後、主力打撃軍が残敵を徹底的に叩き

そして、敵の兵力が半島派遣軍を下回り、彼我(ひが)の戦力が逆転したところを

今一度、ソウル、そしてピョンヤンへと速攻をかけて

一気に終戦へ持ち込む


第二項

敵主力を引き寄せる為、影平、森岡両大隊にはソウルを目指すと見せかけ

敵主力が向かって来たら交戦は必要最低限に止め

敵の追撃を誘発させながら堤川方面へ撤退

他の部隊は堤川に潜伏して時を待ち

敵主力が罠にかかって壊滅的打撃を受けたところを強襲して撤退に叩き潰し進軍


以下、前者と同じソウル、ピョンヤンへ


これが、ソウル攻略の失敗を挽回する作戦である


この作戦自体はレッドストームの二次的作戦として半島に渡る前に水澤と伊藤が考えた奥の手だった。


切り札のレッドストームが頓挫した今

この作戦に全てがかかっているとも言える


失敗は許されない作戦だった。



一通りの説明と質問に伊藤はてきぱきと答え


大田原(おおたわら)幕僚長の判断を仰ぐ


大田原幕僚長は、伊藤の提案を半島派遣の命運をかけた作戦であり、日本国の命運もかかっていると強く強調し作戦の許可を出した。



作戦遂行日時を定め


半島派遣は改めて戦争終結の為に動き出す。




ーー奈月(なつき)ありすーー



岡村田(おかむらた)作戦部長は先の九州に於ける自身の作戦方針を西野詩音(にしのしおん)に邪魔にあい

その上、参謀部派の弾劾に合い半島にも大宰府に入ることも許されていない状態で居た。


岡村田は自身の代わりに〝奈月ありす〟という女性武官を半島に密かに送り込み

参謀部の動向を探らせていた。


あの会議中に水澤に追われた女は岡村田の差しがねだった。





息を整えながら奈月ありすは日本に居る岡村田に連絡をする


「こちらコウノトリ」


「こちらカゴノトリ、首尾はどうか?」


「こちらコウノトリ、参謀部のみならず、統合部も半島入りしています

そして、途中に邪魔が入り全容は不明ですが、チェチョンがどうとか言っていました。」


「邪魔が入ったとは?」


「金髪で黒服の男に追われた為に申し訳ありませんが全てを把握できませんでした。」


金髪で黒服...岡村田の頭に霧島から西野詩音と一緒に現れた男の顔が浮かぶ

あの日、西野の護衛だと言っていた男が...


「こちらカゴノトリ、その金髪の男を始末しろ。」


「始末とは?」


「殺せ!その男は危険な人物だ!生かしておいては後々の為にならん!」


「ですが閣下、私の任務は参謀部をはじめとする参謀部派の監視と情報の収集のはず...」


「その情報収集の邪魔をしたのが金髪の男だろ?邪魔者は誰であろうと始末しろ!でなければ、わかっているだろう!」


「それは..わかっております。閣下の命令とあれば金髪の男を始末いたします。」


「コウノトリの活躍に期待している。」


そう言って無線が切れる


奈月ありすは天を仰ぐ


挿絵(By みてみん)


あの男の素早さに頭の回転の早さ、そして、並外れた身体能力

さっきは何とか逃げれたけど、あの男が本気を出したら...私では勝てない。


接近戦じゃなく狙撃して始末するしかないけれど...

どうにも腑に落ちないし、納得の行く答えがない


岡村田中将は危険な人物と言ったけど、私から見たあの男は日本国の将来に危険となる人物には思えない


〝私は選ぶことはできない立場〟だけど、自分の目で見定めないといけない。



ーー司令部本館ーー


伊藤が一通りの説明と質問の答えを終えて、統合幕僚長の決定を仰ぎ裁下がおりた頃


謎の女を取り逃がした水澤は追いかけて来た詩音と合流し、会議室へと戻る


会議室に戻り、謎の女を取り逃がしたこと、そして、推測だがと前置きして、岡村田の差しがねかも知れないと水澤は室内にいる統合幕僚長や参謀総長、そして各隊の隊長、副長らに説明する


山口参謀総長は『岡村田のこと、あり得ない話ではない』と答え

統合幕僚長は『岡村田は政治家を後ろ楯として、復権を目論んでおるだろからな』と言い

赤城秘書官は『先の九州奪還作戦を自分の防衛方針を無視して行動したことに対して憤慨しておりましたから、こちらの動向を探る可能性はございます。』


『たかが下部組織が上位の参謀部、統合部に楯ついて、ただで済むと思ってるのかしら?』と永嶺秘書官は言い

『岡村田は政治家の力を利用して復権の為に作戦部長に収まり続けるでしょうね。』と詩音が言う


いずれにせよ、岡村田という男はズル賢く、そして、執拗に粘着してくるような人間であり、岡村田の増長は後々、半島派遣軍の為にはならない

この考えは、この会議室に同席している各隊長、副長、そして、伊藤らの考えである


『今現在、岡村田には大宰府入りさせず、統合幕僚長閣下の命令で人吉駐屯地に留め置いてますから、自身の手の者を送り込むぐらいしか出来ないでしょう。』


『とりあえず、岡村田の話は置いといて、作戦の詳細は?』


『作戦については、先ほど採用の裁下がおりた。』と山口参謀総長が水澤を見て言う


『そうでありますか、なら自分はこれで失礼いたします。』水澤は伊藤が説明して作戦の決定がおりた以上、ここに居る必要性がないと思って部屋を出ようとした時


『水澤君!待って!』


『ん?』


『今から参謀総長閣下の執務室に一緒に来てもらって良いかしら?』


『参謀総長閣下が用がある様子だ、水澤君、行って来たまえ。』


『了解です。』




ーー参謀総長執務室ーー


山口参謀総長は窓を背に自身の机の椅子に座る


参謀総長の机の前とその両サイドにソファーがあり、ソファーに囲まれるように大きなテーブルが置かれて居る


水澤にソファー座るよう促し山口参謀総長は『まず、先の九州奪還、そして半島への再上陸を含め、キミの活躍は西野秘書官から聞いている

そこで、キミには正式に軍人になってもらいたい。』


『軍に入隊しろってことでよろしいでしょうか?』


『軍属のまま、この先も戦場に出すわけにもいかないのよ。』と水澤の隣に詩音は座り


『九州奪還に伴う日本国の奪還、そして半島への再上陸と、水澤君の活躍はめざましいモノがあるわ。』と永嶺秘書官はテーブルを挟んで水澤の目の前に座る


『その通りだ。キミが居なかったら、岡村田の持久戦で消耗し続け、日本国は滅亡の道を辿るところだった。』


『貴方には、大佐として大隊を率いて欲しいの。』


『大佐?』


『そう大佐になってもらいたい。それとも自身の活躍に比して大佐では不足かね?』


『大佐なんざなりたくねぇし、ましてや大隊を率いるなんざ、お断りだね。』


『んまぁ、驚いたわ、大佐という破格の出世に大隊長の席を蹴るなんて』と永嶺秘書官は驚いた様子で言い


『なら、水澤君はどのような提案なら受けてくれるの?』


『遠慮なく申してくれ。』


『まず、あの作戦は参謀部の主導の下で詩音さんが参謀総長閣下の名代として決定、遂行した作戦

その作戦には、俺のみならず、伊藤や榊達、そして各隊が協力してくれたからこそ成功した俺一人の力じゃない。』


『無論、(ぞん)じておる。』


『ご存知ならば、大佐だの大隊長だの、俺に与える必要性がなくなるだろ?』


『あの作戦で貴方は実質的な指揮官として優れた判断をし、固定されたマニュアルにとらわれず臨機応変に事態に対処する力を示したのは揺るぎない事実でしょう』


『仮に俺の判断が挟まれていたとしても、力を合わせて戦った皆がもたらした勝利に変わりないだろ。』


『思っている以上に謙虚なのね。』と永嶺秘書官は言い水澤に笑顔を見せる



『謙遜はいらぬ。先ほど申したように、遠慮なく望むことを聞かせてくれ。』


『では、伍長の階級と、俺の所属する榊分隊員全員の階級の昇格をお願い申し上げます。』


『伍長って貴方、最下級下士官からで良いの?』と詩音は水澤に聞く


『榊や川中達が正規の軍人になった時のことを詩音さんは覚えてるよね』


『だからといって、同じというのは違うでしょう?』


『違わねぇってか、どうせ軍人になるなら、あいつらと同じスタートを切りたいんだよ』


『同じスタートか。水澤君がそれでもよいのなら私は望むようにしよう。』


『閣下!水澤君は..』


『気持ちは嬉しいけど悪いな詩音さん、俺は俺達は道を共に切り開く仲間なんだ

一人だけ抜きん出て上に行くことは出来ない』


『そんな貴方だからこそ付いて行く人がいるのね。』と永嶺秘書官は感心したように言い


『最下級下士官の席と、刀を宜しく詩音さん。』


『強情なんだから、でも、そこも貴方の変わらない部分よね。わかったわ

明日、15中隊にて任官式を執り行います。』


水澤と言う男の全てはわからない

だが、先日の水澤の態度、言葉

そして、この場での態度に言葉は参謀総長である山口にとって信頼の置ける人物であるという認識を植え付け

『今後もキミの活躍に期待しいる。』

そう穏やかに山口参謀総長は言い

本来なら、帯刀は将校の証であるが、水澤は特例として帯刀を許し

西野、永嶺両秘書官の意見を入れ

黒軍服、そして異例中の異例とも言いえる金髪のままを許し


山口参謀総長は参謀部の名の下に許可証を与えた。



ーー15中隊営舎ーー


翌日、西野詩音は15中隊を訪れ

水澤の伍長任命を将校式の任官式の形式で執り行い


『任官及び入隊おめでとう。』と言って詩音は約束通りに水澤に守り刀を授け

『以前と同じように、貴方が必要とした時に使いなさい』


『西野秘書官殿、ありがとうございます!』


ビシッと敬礼し、詩音はそれに応え返礼する


そして、榊、川中、黒木、森村、沢田、三上と名前を呼び


同じように、九州奪還作戦の最初期から、いや、前哨戦基地から水澤に付いて行っている

榊、川中、黒木、森村、沢田、三上らの軍曹任命を行い


続いて、杉本と名前を呼ぶ


15中隊からの分隊員の杉本上等兵から水澤と同じ伍長の階級が与えられた。


こうして、水澤は正規の軍人としてのスタートを切ったのだった。


そして、水澤達は遥か彼方の未来に向かって走り出す!



THE LAST STORY>RELOAD<


第7話 堤川(チェチョン)戦役


へと


ーーつづくーー


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