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第3話 絶体絶命の危機。
詩音と水澤の交信から3日後
参謀部の名の下にスウォン攻略戦が開始される
スウォンには、チョソンミン、ヤンドングン、ハンガインの3部隊が防御配置されていた。
敵軍をスウォンに釘付けにしている間に、水澤は別動隊を組織することを提案
大邱同様にスウォンの北側に影平大隊を移動させ、京城を狙うと見せかけ敵の目を北に
そして、敵軍が影平隊を追う行動に出た時に陸、空合同で徹底的に北韓軍を叩くことを提案
これに参謀部は同意し、陽動と攻略の戦いが始まる
北韓軍は水澤の罠にはまり
チョソンミン隊が影平隊を追う
スウォンに残ったヤンドングン隊とハンガイン隊は空襲砲撃に曝され身動きがとれなくなり
影平隊を追ったチョソンミン隊は神州攻撃戦闘機の空からの攻撃に曝され混乱状態になった所を回頭して来た影平隊に襲われ大打撃を受け戦線を離脱
スウォンのヤンドングン、ハンガイン隊も同じように大打撃を受けスウォンを放棄し壊走途中にスウォンに戻る影平隊と遭遇し壊滅状態になり
38度線を越え本国へと逃げ去った。
北韓軍のスウォン放棄に伴いスウォン攻略は終了
半島派遣軍は、ほぼ無傷なまま戦力を保ち
次の目的地、ソウルへと進軍する。
ーーソウル攻略戦ーー
日韓相互協力協定に基づき南韓軍司令ユ・ソンジェは光州を出て大田の北でスウォンとの中間にあたる安東に指揮所を置き
カン大尉らと合流
半島派遣軍はソウルを包囲
南韓軍の到着を待った
その間、水澤は伊藤達と共に密かにソウル市内へ潜伏し日韓合同のソウル攻略戦の始まりを待っていた。
チョソンミン、ヤンドングン、ハンガインは戦力補充の為に北韓本国に在り
ソウルの防衛には、あの日に戦いを避けたリョミンス隊が居た。
そして、開城から南下し始めたキムユシン隊、半島東部、大邱の北の栄州に配置されていたヤン・ジヌ隊がソウルへと進軍
半島派遣軍と北韓軍の主力部隊の激突が始まったが
南韓軍のソンジェは、一向に動かずに静観を続けている。
ソウル市内に潜伏している水澤達がソウルの中心部にたどり着いた時
空を切り裂く音と共に無数のミサイルが落下してくる
相手がミサイルだと対する対抗手段を水澤達は持たない
そして、ソウル包囲中の派遣軍は包囲を解き
各部隊に別れ各個撃破の戦いになり
そのうち影平隊と衝突したユシン隊は影平隊の真ん中を切り裂くように進軍しソウルへと向かう
影平隊は、そうはさせまいと追撃するが北韓国内からのミサイル攻撃に阻まれ追撃を断念し
各部隊の戦況把握と、その救援に部隊を移動させる
その頃、15中隊本隊とヤンジヌ隊が衝突し激戦を展開していた。
ーー孤立無援ーー
一方的なミサイル攻撃を逃れる為、水澤達は地下鉄の構内に居た。
地下身を隠したとは言え、完全にアウェイのソウルで孤立無援状態である
『まさか、味方が居るにも関わらずミサイルを降らせてくるとはな』
『この分だとやはり』
『居ないだろな』
『もしくは、ミサイル攻撃は目眩ましでということも』
『どちらにせよ、あの刈り上げ糞野郎はソウルにいねぇってことさ』
『でしょうね』
水澤と伊藤がソウル攻略に先んじてソウルに潜伏した真の目的はキム・ウンジョンを生け捕りに出来ない場合は殺害し、北韓の降伏を促し戦争の早期解決を狙って潜伏したが事態は思わぬ方向に向かい
今や敵の真ん中に孤立するという事態になってしまった。
『せめて、コレだけでも南大門か東大門に掲げてやろうか』
そう言って水澤は旗を取り出す
『残念ですが、今、外に出たら骨も残りませんよ』と伊藤は言い
『その旗はなんすか?』と榊が聞く
水澤は旗を広げる
真ん中に韓半島の形が印刷されている
『半島統一旗だよ』
『なんでまたそんな旗を』
『普通は日の丸だと思いますよねぇ』
『俺達は侵略者じゃねぇからな!統一旗さまを掲げて南韓の奴らにも希望を持たせたいんだよ』
『水澤さんらしいっす!』
『おっしゃ!ここは1発かましてやりましょうぜ!』
『今、外にでたら逆に一方的にかまされるだけだろ』
『なら、ミサイルが止んでからで』
『無線機を使いたいとこだが、位置が敵にバレたらヤバいしな』
『北見!どっちに行けば南側に出れる?』
北見は磁石を取り出し、こっちだと指さす
『1度来た方向に下がってから、中隊本隊と合流してからソウルを取るぞ』
この時はまだ水澤達は周りの状況を掴めておらず
ミサイル攻撃が始まる以前にリョミンス隊はソウルから仁川に移動して仁川側からの日本軍の上陸を待ち構えていたが
日本側は仁川上陸はプランに入っていない
北韓側は第一次祖国統一戦争の時、米軍のクロマイト作戦で手痛い打撃を受けた過去からインチョンの防衛を重視しソウルはミサイルで日本側のソウル奪還を阻止しながら、ソウルを包囲している日本軍に攻勢をかけて奪還させないようにしている。
ヤンジヌ隊の猛攻に押され15中隊本隊は後退し南下を余儀なくされ
一旦、下がり15中隊本隊では、損害の把握と戦える者を水澤達の救出に回す手配を始めていた。
ユシン隊の来襲を知ったソンジェはソウルには進軍せず大田に引き上げ
その急報が大邱の司令部にもたらされる
桜井満理奈司令部付け専任将校が参謀総長の居る部屋に駆け込んで来てソウルの急報を伝える
山口喜久参謀総長は『南韓側が引き下がっただと?』
『それだけではなく、ソウルを包囲していた我が軍が各部隊ごとにバラバラにされ連携がとれなくなり敗走を開始している部隊も出ております。』
西野詩音秘書官は『15中隊は?』
『15中隊はヤンジヌ隊に襲われ...』
『ヤンジヌに襲われて何?』
『敗走したとのこと...』
『あの梶原隊が..信じられん。』と山口参謀総長は
ぽつりとつぶやいた。
詩音はバンと壁を叩き
『15中隊、及び、各隊の現状と現在地を調べて参ります!』
『なら、この通信機を使ってください』
桜井満理奈が持って着た通信機は高度化に暗号化された通信機能を有し各通信隊に繋がるよう出来ている
詩音は、満理奈から通信機を受けとり、先ず派遣軍指揮官の影平隊に連絡をとる
影平隊は自部隊を盾として各隊の退却の時間稼ぎをしていた
そして、15中隊はソウル突入の隙を探りながら敵軍と戦い続けていた。
それを知った詩音は派遣軍の全体的な大邱への撤退を命令
だが、15中隊だけは従わなかった。
水澤達を救出するまでは死んでも大邱には戻らないと佐脇は言い
戦える者を藤井と共に率いて突入経路を探り続けている
突入させないようにユシン隊、ヤンジヌ隊は円形の防御陣を敷き隙ひとつない状態にしていた。
水澤達がソウルに居るということを知った詩音は自身が15中隊に出向くと言って支度を始める
山口参謀総長は此処で待てと言って止める
永嶺秘書官も同様に詩音を引き止めようとする
だが詩音は水澤達を死なせるわけにはいかないと言って部屋を出て行く
山口参謀総長は永嶺秘書官に『仕方ない。前線視察だ』と言って自身も移動することにした。
『では、自分もコレを持参して同行致します。』
満理奈は自身が持って来た通信機を抱え、参謀総長らに同行する。
ーー決死の覚悟ーー
15中隊が退却していないことを知った影平大隊長は15中隊に退却するよう促す
15中隊長の梶原は『部下がまだソウル市内に残っている!退くわけにはいかん!』と言って退却命令を無視
それに対して影平大隊長は我が隊も貴官の部隊を置き去りには出来ぬと言って再度ソウル方面に部隊を移動させる
その頃、水澤達は北見のナビゲートで何とか漢江を越えソウル中心部から市街地の外れまで来ていた
自身の後方には瞬く間に瓦礫の山となり燃えるソウル市街が見える
『なんとかミサイルの雨から脱出出来たようですね』
『そのようだな、だが..』
ガウン!ガウン!ガウン!と水澤は発砲し『敵襲!各員散開し迎え撃て!』
ソウルを輪形に包囲しているユシン隊の一部と戦闘状態に入る
遠くに聞きなれた突撃制圧銃の銃声に佐脇と藤井は反応し、こっちだ!行くぞ!と言って兵員輸送装甲車を全速力で走らせる
佐脇達の前にユシン隊の防御部隊が立ちはだかる
佐脇は装甲車の機関銃で敵を撃ち突破口を開こうとするが北韓軍の自走砲の攻撃に阻まれ進めない
佐脇達の距離と水澤達の距離は、互いの銃声が聞こえる距離で敵軍との戦闘を続ける
そんなに離れていないはずだが、なかなか突破出来ない
かつて、大邱戦で前任の参謀総長が突破出来なかった時も同じように幾重にも張り巡らされた防衛線
それに阻まれ消耗し最終的に前任の参謀総長は戦死している
その時のことが佐脇と藤井の脳裏をかすめる
水澤達も佐脇達の存在に気付き無線封止を解除し連絡を取る
「伊藤です!」
「佐脇だ!お前達大丈夫か!」
「今のところは全員無事です!」
「突破口を開きたいが、北韓野郎の壁が厚い」
「こちらも突破を試みてますが押し返されて...」
ガウン!バンバンバン!と無線の向こうからも銃声が聞こえる
「すみません、一度切ります!」と言って伊藤は無線を切る
相当数の敵と水澤達は戦闘を繰り広げながらギリギリの状態まで追い詰められつつある
佐脇、藤井達も敵に押し返されて進めない
打つ手なし
前哨戦基地でミンスとの戦いを避けた
その言葉が今また脳裏をよぎる
『もう!弾がない!!』と狙撃手の川中が叫ぶ
『建物を盾に後退しろ!』と水澤が指示を出す
川中だけじゃなく、皆、残弾が無くなり始める
ジリジリ追い詰められる水澤達
このまま全滅するしかないのか?いや、手はまだあると水澤は思って
『伊藤!しばらく踏ん張ってくれ!』そう言って水澤は敵に向かって走り出す
『危険です!戻ってください!』
『心配すんな!すぐに戻る!』
『此処の位置を敵に知られたら大変ですので、コレを』と桜井満理奈は詩音に通信機を渡す
桜井が司令部に、そして15中隊本隊に持ち込んだ通信機は桜井自身がカスタマイズしたモノである。
詩音は桜井から通信機を受け取り
「西野より、水澤君達へ状況を知らせて」
伊藤の無線に詩音の声
「こちら伊藤、敵軍に囲まれ身動きがとれず、弾薬も尽きかけています。」
「みんな無事なの?水澤君は?」
「今のところ全員無事ですが、水澤さんは敵の中に突入されました。」
「独りで突入したの?何故止めなかったの!」
「止めようとしましたが、すぐに戻ると言って」
「何を考えてるのよ...」
ひょっとしたら自分を囮にして敵をひきつけ伊藤達を逃がそうとしているのかも知れないと詩音は思った
伊藤も同じように考えていたようで
「...すみません。自分に力がないせいで..」
「謝る必要はないわ、水澤君は囮になったとしても彼自身も戻ってくるはず
あの子達の為にも死ぬ気はないはずよ?」
「ですが、もう銃声ひとつしなくなりました。おそらくは...」
最悪のシナリオが頭に浮かぶ
「....。」
伊藤は意を決したように
「志願以来、秘書官殿には大変お世話になりましたが、何の恩返しも出来ず申し訳ありません。」
「伊藤君、貴方まで何を言ってるの...」
「もしもに備えて、もう一手の作戦を僕と水澤さんで考えてあります
その作戦を書いた紙は僕の荷物の中にありますから
どうか、それでお許しください。」
「伊藤君!諦めないで!考えるのよ!貴方なら考えつくはず!」
「僕は水澤さん程の才は持ち合わせてませんよ
では、これで失礼いたします。どうか、最後の一手が日本の未来を開く道になることを祈ります」
「伊藤君!伊藤君!」
伊藤は無線を切り立ち上がり
『この中の誰か1人でもかまいません』と言って半島統一旗を取り出す
『来た道なら安全なはずです。ですが地下を抜けたら外が安全とは言えません
水澤さんが掲げた〝未来を繋ぐたすき〟だと思ってコレをナンデムンなりトンデムンなりに掲げてください!』
『信じられっかよ!水澤さんが死んだなんて誰が信じられっかよ!』
『あの人は死なねぇし、死なせるわけにゃいかねえんだよ!』
『糞の北韓野郎が!まとめて叩き殺してやる!』
まだ不確かとはいえ、水澤の銃声も敵の銃声も聞こえない
そんな状況下で重厚な防御に囲まれて退路が塞がれ弾薬すら尽きかけている
絶体絶命の危機に瀕し、ソウル市再突入を決意した伊藤達は立ちはだかる敵を道連れにし最後の抵抗をしようとしていた。
ーー日本国、久留米市ーー
Anri_diary
軍が日本を取り返し、半島派遣軍が再び半島再上陸を果たしたとは言え
まだまだ、不安定な情勢にあって、日本国内に戻って来たのは、軍の上層部ぐらいで国民の日本帰還は、まだ始ませんでした。
内地防衛部隊を編成組織し軍は逃げ遅れた残敵の掃討作戦と平行して投降を促しながら作戦行動を展開していて
私達は軍の庇護下で、軍からあてがわれたホテルで、まりあちゃんと共に暮らしていました。
私は窓の外を見つめながら『水澤さんは今、どの辺に居るんだろう?』
『軍の人に聞いても守秘義務があるって言って、教えてもらえないものね。』
『敵がまだ残ってる状態ぐらいしか教えてくれないし〝戦争が終る〟まで水澤さんの存在すら黙ってろって言ってたし...』
九州奪還、日本国の復活の立役者でもある水澤さんの存在は、北韓に知られた場合、北韓の工作員が活動し水澤自身のみならず、その家族に被害が及ぶ可能性がある為
戦争終結まで口外禁止と月島次官から言われている
いわゆる軍の最高機密事項に該当するので
もし、口外した場合は軍法に照らして身柄の拘束し戦争終結まで牢に入れられる可能性があるのです。
『軍の庇護下という軟禁状態だもん。』
『早く戦争が終れば良いのに。』
『三崎軍医や稲葉軍医、里山看護官さん達も半島に行っちゃったし、残された私達は待つしか出来ないもの。』
どうか、水澤さんや皆さんが無事に帰って来ることを私とまりあちゃんは願っていました。
水澤さん達が危機に瀕していることも知らずに。
THE LAST STORY>RELOAD<
第4話 決死の脱出。
へと
ーつづくー
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