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THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story ②

挿絵(By みてみん)

頭上をモノレールが駆けてゆく見慣れた街

かつて私が暮らした街


漆黒の服を着た自分の姿がショーウィンドウに映る


栗色の髪をかきあげ耳にかける



空を駆けるジェット機の音


そっと瞳を閉じる

あの日の音が声が耳の中にこだまする


私は私の運命を生き

彼や彼らは自身の運命を....生きて..そして...



THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story


第二話 目蓋の憂鬱



幾つもの記憶、幾つもの月日


そしてそれは私が私であった歴史



3年目の夏..小さな薔薇が咲いて、そして幾重にも重なる折り鶴


祈りと願い


捧げられたモノ


数多くある中のひとつであり多数の中の1人


私の仕事は必然的に人の目に触れる

それが為、多種多様な想いを受け取りもする


褒め言葉も忌み言葉も...


言葉の重みは自身の職業柄理解してるつもり

発言側と受け取り側、伝えることと伝わることの違い


発言意図が受け取り側の解釈で別なモノになってしまうことも...


私が3年かけて積み重ねて来たモノ


それを..あの戦争が奪い去った



 ̄ ̄ ̄ ̄>逃避<____


北韓軍は韓半島全域の制圧を完了した後



韓半島南端の都市にて、在韓邦人の救出に向かった自衛隊との衝突が私達の国からの無警告の攻撃であると北韓国は主張し

私達の国に対し..宣戦布告なきミサイル波状攻撃と核攻撃を行った後..


私達の国に対し海峡を越え侵攻を開始した。



韓半島の制圧、そして海峡を越えての侵攻は想像の遥か上を行く速度だった


こうして私達の平和な時間は過ぎ去り消えた。


敵の侵攻速度が速すぎて新北九州空港も福岡空港も避難民であふれ

両空港ともに、敵の空爆により機能を喪失した。



私は自身の産まれた故郷を目指し逃げようと思った

南九州へ

だけれど、鉄道は寸断され道路は車両の渋滞が起き

自衛隊から国軍となったはずの私達を守る盾は脆く

国を司る政治屋さん達や、上級国民と揶揄される方々は

私達、一般国民を見捨て国外へと逃亡した。



道を失い、明日さえわからない

そんな極限状態に置かれた私は...共に逃げて来た同僚の森下さんと山中へ身を隠した




非常用に持ち出して来た僅かばかりの食糧も水も底を尽きかけていた


『もう歩けない。』


『まりあちゃん..しっかりして..頑張ろ。』


そう声をかける私自身も限界に近かった

だけれど、諦めたらいけないと思った


薄く軽くなった非常用リュックの中に、そっと忍ばせておいた封書と枯れない小さな薔薇


心が弱りそうな時、いつも読み返したモノ

友達や私を応援してくれてた方からの手紙


" 私は負けない " どんなに辛くても苦しかったとしても


私は必ず..


" またあの場所へ帰る!私を待っている人達の為に "


私を突き動かす原動力と共に生きる為の闘い


挫けそうになっても...


___> 狂 気 < ̄ ̄ ̄


吐く息が白く曇る

凍えそうな手足と身体を私達は寄せ合いながら


私達は " その時を覚悟 " した


その覚悟とは...このままだったら確実に訪れるであろう


" 死 "



私も森下さんも、静かに瞳を閉じたまま身体を寄せ合い じっとしていた。




パキッパキッ ジャリッ ジャリッと誰かが地を踏み歩く音が聞こえた


最初は幻聴かと思った

そう思ってしまうぐらい私達は随分と疲れきっていた


パキッパキッ ジャリッ ジャリッと言う音が次第に大きくなり近づいてくる


閉じていた瞳をゆっくりと開ける



私は自分の目を疑った


幻聴の次は幻覚?




でもそれは幻聴でも幻覚でもなく


くすんだグリーンの迷彩に肩口に日の丸


それを見た時、北韓軍じゃなかったことに安堵した


" 助けてください " 絞り出すように森下さんが声を出し


その声に日の丸を付けた兵隊達が私達の方に近づいてくる


4、5人の兵隊


彼らは私達の側に寄り声をかける


「大丈夫ですか?どこか怪我はありませんか?」


そんな優しい問いかけに良かった、これで助かる

本気で私達は思った



『怪我はありません..でも..食べ物も飲み物もなくて...』


私が言葉を続けようとした時


彼らのリーダーらしき人物は私と森下さんを見て息禍々しい程の笑みを浮かべ

こう言い放った


「助けた礼をしてくれるなら、水も食糧も与えてやろう」


助けた礼...


私は眉をひそめた


" 人の弱みに付け入るなんて..."


御礼とは?何をしたらよろしいのですか?


私はわかっていながら、敢えて問いかけた


「決まっているだろ?女なんだから」


そう言って顎をしゃくり仲間の兵隊に私達の身体を無理やり引っ張り上げ立たせる


私も森下さんも、抵抗する体力さえなくなっていて

されるがままに...そう..




なすがままになるしかない







そう思った。







最後の抵抗を声にした




『誰か助けて!!』


誰か誰か誰か誰か誰か誰か


お願い....







私の上にのし掛かる兵隊が急に空へ舞上がる



漆黒の服に身を包んだ人の鮮やかな金糸の髪が私の瞳に映る



金糸の髪の彼は少し私の方を振り返り小さく微笑み


4、5人の兵隊達に立ち向かう



森下さんは兵隊ではない別な男性に救出されていた




骨がぶつかり合い軋む鈍い音


滴る血


怒号




最初は優勢だった彼らは次第に押されて行く


鍛え上げられた兵隊と素人とでは天と地以上の差がある



私の声に反応し駆けつけてくれた彼らは...


ひとり、またひとりと地に倒れて行く



私はただ森下さんと互いに抱きしめ合い見ているしかなかった



私を助けてくれた金糸の髪の彼だけが最後まで抵抗し続けてくれた



そして...彼もまた地に倒れた


けれど、彼は立ち上がろうとした


地を這う蟻を踏み潰すように兵士は彼の背中を踏みつけにし


仰向けになるように蹴り


彼が仰向けになった時


今迄で一番大きな鈍く酷く汚れた音がした


兵士は彼の..あばら骨を踏みつけて折ったのです



ひときわ大きな悲鳴に似た叫び声


私は怯えながら森下さんと泣くしか出来なかった




彼らが地に倒れ




そして、再び兵隊達は私達の方に近づいてくる



もう逃げようがない...










ガウン!









寒空に1発の銃声が鳴り響く



銃声のした方角に新たな兵隊達が現れる

その中心に銃を撃ったであろう人物が左手に銃を持ち


ガウン!


もう1発、寒空へ銃を撃つ



それを合図にしたかのように、その兵隊達は私達の方に駆けてくる



こんな人数が居たら逃げられない


そう諦めかけた時


後から現れた兵隊達は私達ではなく


最初に現れた兵隊へ向かい怒号をあげ殴りかかる


何故だかわからないけれど日本兵同士が争い始めたのです



後から現れた兵隊達の中心で銃を撃った人物が私の方に近づいてくる



『もう大丈夫よ。安心して』


優しい笑みで彼女はそう言って私と森下さんの手を握ってくれた


『ごめんなさいね、紛いなりにも国民を守るはずの兵士が、あなた達 "国民"を襲うなんて』

そう言ってグレーの軍服を来た彼女は地に倒れている彼らの方へ行く


『華!手当てを!』


『華って呼ばないの、稲葉軍医って呼んでよ?詩音』


『あなたこそ、詩音って呼び捨てしないでよね』


クスッと笑いながら、華こと稲葉軍医は地に倒れている彼らの手当てをする為

様子を見てまわる


私は怒号の中 金糸の髪の彼の元に行き

『どうか神様...彼に慈悲を..』そう願ってた

ひょっとしたら声に出していたかも知れない



稲葉軍医は私が金糸の髪の彼の元に居るのを見て近づいてくる

詩音と呼ばれた女性兵士も


『これは酷いわね..』


『西野詩音 特務少佐殿 彼は

一番酷くやられてる..おそらくは..打撲傷だけじゃなく骨折してるかも知れない』


『簡易担架で彼を運びましょう』


『他の人達は?』


『ただのびてるだけで打撲傷だけよ』



『それにしても、何処もかしこも...この有り様...』








気付いたら

後から現れた兵隊達が最初に現れた兵隊達を組伏せ縄と手錠で身柄を拘束していた。




『あなた達の荷物と彼らの荷物は?』


『私達のは此処にあります、だけど...彼らのは..わかりません。』


『一緒に行動してたんじゃないの?』


私も森下さんも首を横に振る



彼らは、何処からともなく現れ "私達を助けようとしてくれた"




そう..ただ救おうとしてくれたのでした。





THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story


第三話 Four-leaf clover へ


 ̄ ̄つづく__


※この物語はフィクションです。登場する人物、団体は実際の人物、団体とは何ら関係ありません。





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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは! Xからやってきました。 独特の世界観と文章がよくマッチしてますね。 小説でもあり、ややポエム調なところも良いです。 面白かったので、ブクマさせて頂きました。
[良い点] 目に浮かぶように克明に描写される末期的な戦況に、主人公らしき赤坂と水澤。 彼らはこの絶望的な状況に、どのようにかかわるのでしょうか。 まともに末端部隊の統率も取れず、上級国民は逃げ出すとは…
[一言] 開始直後から、物語は絶望的な状況…。 読みながら、詩音たちの登場は一点の光のようにも感じました。 この先の展開が気になりますಠωಠ
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