THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story 最終話
THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story
最終話 手のひらの中の希望
霧島防御陣地から太宰府奪還までの道のりは決して楽な道のりではなかった
20日の内に太宰府を、そして九州を取り戻して見せると水澤さんは言い
僅か半月足らずで敵を追い落とした
その裏で、水澤さんはあるひとつの決断をしていたこと私も、まりあちゃんも知らなかった。
ーー太宰府半島派遣軍司令部ーー
水澤さんは西野詩音さんが居る執務室に来ていました。
詩音さんは『私は、出来ることなら貴方を元の民間人に戻してあげたい。』
その詩音さんの言葉に水澤さんは『俺はここで、降りるつもりはない』と答えて
『そう...わかったわ』と詩音さんは言い
傍に居た月島零さんは『水澤くん、本当に良いのか?』と問う
『ああ、かまわない。』
『そうか、なら自分は何も言わない。』と月島次官は答えて詩音さんを見る
詩音さんは頷いただけで
それ以上のことは言わなかったのです。
こうして、水澤さんは軍に残ることを選択したのでした。
というより、最新からそのつもりだったのだと私は思います。
――回想――
話は少しさかのぼりますけれど前哨戦基地だった学校でのこと
あの日、学校にて臨時応集という名の強制召集された人々に〝恨むなら自分自身を恨むか、生まれた時代を恨め〟と言った水澤さん
そして、ジョンデが送り込んで来た人物を斬り倒した時に言った『お前らは、何をそんなに恐れている?
人は生まれ、いずれは死ぬと前にも言ったろ
死を恐れすぎなんだよ、敵云々を問うなら、こいつら自身の中の弱さこそが敵だと俺は思うがな』
傍らに立っていた川中さんは
『人生なんざ元々、死ぬまでの悪あがきだろ〝誰かの為〟になんて死ぬんじゃねぇよ
残された〝誰かの痛み〟が解るなら尚更だろ?
お前が死んでも何も変わらない
だが、お前が生きて変わるものもある』この言葉は、彼らというより、悲しい過去を背負う榊さんにむけられた言葉だったのかも知れません
『"この世は悪だろうが何だろうが最後に残るのは生きる意志の強い奴だ"
だからこそ俺は俺の為に生きて俺の為だけに死ぬ、それが俺の誇りだ
だが生き延びるさ 胸張って死ぬ為に』
水澤さんはきっと、その時 こう思ってらしたのではないかと思います
【背負ってやるよ..てめぇらの分までな】
川中さんは、さらに言葉を続けられて
『どんなにこの手が赤く染まろうとも 血は洗い流せる そうやって生きて来たんだ 俺たちは!』
第二次半島統一戦争を生きぬくことが時代に打ち勝つ唯一の手段で彼らは彼らなりの正義を胸に立ち向かったのだと思います。
この狂った世界に恐れることもせず
自身のプライドと命とを賭けて
平和な時代に生きていたら知り得ることの出来なかった思いを、水澤さん達の姿に教えられた気がしました。
――久留米駐屯地――
私達は、鹿児島を軍の車両で福岡に向かい、久留米の陸軍駐屯地に着き、軍営舎内の広い講堂に集められました。
そこには、西野詩音さんと月島零参謀次官さんが居て
西野さんは『本日まで、どれ程の苦労や我慢をしてこられたか、私は痛い程にわかっているつもりです。
本日、ここに集まっていただいたのは、まず、軍属として軍に協力していただいた方達のことと、民間の皆様の今後について、お話をしなければならないからです。』と真剣な面持ちで、おっしゃり
こう言葉を続けられました
『あの日、軍属となり、尊い命が失われたことは、痛恨の極みで、どのような言葉を持ってしても償えないことだと思っております。
軍として、国家として出来る限りの補償をいたします。
そして、本日をもって軍属の皆様の除隊を命じます。これまで本当にありがとうございました!
また、今後についてですが、敵軍を追い払ったとはいえ、まだ残党が潜んでいる可能性もありますので
今しばらくは、我々軍が此処で皆様をお守りいたします。
情勢が落ち着き次第になりますが、安全が保障された時点で皆様、それぞれの
ご家庭にお戻りいただくこととなるでしょう。
なので、今しばらくは我慢下さい。』
そう言って深々と頭をさげた詩音さん
そして、顔をあげて私達の方を見る
『あなた達の大切なファンを、あと少しだけ貸してちょうだい
今の軍には、彼が必要なの
彼が力と知恵を尽くして勝ち取った勝利と奪い返した九州、そして、日本は彼なくして今日はあり得なかった。』
私は『それって水澤さんを軍人にするってことですか?』と問う
西野さんは『本当は、彼も除隊させてあげたかったけれど、これからを考えたら、やはり、必要だったの
これは私の我が儘でしかないことだから、ごめんなさいね。』そう言って謝る
本当のところは水澤さん自身の決断だったことを詩音さんは隠していた。
詩音さんがそうしたのは、あの日に水澤さんが矢面に立って詩音さんを庇って発言したこと、校舎裏でも同じように庇い
自身が憎まれ役を買って出たことへの詩音さんなりの恩返しだったのだと思います。
それをわかってはいたけれど私は『水澤さん自身が望んだことじゃなく、西野さんの我が儘なら許せません!』と強く言った
『正直に言わなくても、わかってくれると私は思ってるわ』
その西野さんの言葉に、やっぱり、水澤さん自身が望んだことなんだと私は納得したのです。
〝自身が戦争を終わらせる〟
水澤さんの強い意志は変わらない
そんな水澤さんの想いも意志も私とまりあちゃんは知ってる
『今、話したように本当なら除隊するべき方が今も戦いに身を投じてくれています。
それは何故か、皆様の〝手のひらの中の希望〟という未来を完全な形で渡す為です。
敵を追い払ったとはいっても戦争が終わったわけでありません
この戦争が終わった時に本当に光り輝く未来を皆様の手のひらに渡されることになるでしょう。』
そしてと前置きし『水澤くんが、皆様に辛く当たったり、暴言をはいたりしたのは、自身が嫌われ者となり、皆様の憎悪を一身に背負って、軍属になった皆さんの身代わりに、そして、その代表に自身がなる覚悟があったからです。
それに嫌われていれば、自身が死んでも悲しむ必要もない
むしろ、すっきりすることでしょう
彼は彼なりに考えての行動だったことを御理解下さい!』
月島次官が詩音さんの言葉を繋ぐように『水澤くんは、自身が民間人の皆さんの代表として、身を呈して皆様を守り抜いた事は、決して揺るがぬ事実であり、言葉とは裏腹に、いつも皆様のことを考えていたことも事実です。
水澤くんは〝皆様の命の恩人〟であることを忘れないでください。
そして、その手のひらの中に託された水澤くんの思いを決して無駄にせず今後を生きて下さい。』
『そして、最後に申し上げておきます。政府機能は麻痺状態ですが、軍は健在であります。
我々、軍は志願兵を募っておりますが、水澤くんが与えてくれた命を決して無駄にされないようお願い申し上げます。』
そう言って西野さんは講堂を出て行かれました。
私は西野さん、月島さんは、決して水澤さんを怨みの対象にしてはいけない
憎しみも、怨みも、全ては戦争が産んだモノで、その戦争を始めた人物こそが
本当に怨み憎む相手であることを私達に諭していたんだと思います。
水澤さんが命を賭けて与えてくれた手のひらの中の希望。
そして、いつの日か訪れるだろう輝かしい未来。
その目には見えない温かな温もり
水澤さんが今まで、そしてこれから〝自身の命を賭けて〟渡そうとしてる大切なモノ
私達は命拾いしたんじゃなく、命を繋いでくれた人がいたからこそ生きて今日を向かえられた。
私達は、水澤さんに繋いでもらった命と手のひらの中の希望を大切にしなければならないと思う。
そうすることが、私達から水澤さんへの恩返しになると私は思いました。
紅葉の季節に出逢い、桜の季節に離れ離れになっちゃったけれど、私は水澤さんの想いを、まりあちゃんと共に大切にして行きたいと思いました。
THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story
最終話 手のひらの中の希望
――おわり――
ーAnri dailyー
次回から、二人の物語が一つになり
THE LAST STORY>RELOAD<にて物語は進行して行きます。
新たなストーリーで皆様にお会いする日を楽しみにしております。
By 赤坂安莉
By 森下まりあ。
最後まで読んでいただき
心から御礼申し上げますm(__)m
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