THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑪―4
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第11話 Death match ④
傍らの通信機からの報告
15中隊通信隊主任
小山:313高地、敵軍に奪われました
『一夜にして奪い返されたか』
榊は不機嫌な声で言い
『高地?ただの土地だろ、もうほっとけ欲しいならくれてやれば良い』と奪われたことを水澤は気にもせず言う
『でも、313は要衝っすよ?』
『要らねぇよ、そんなモン』
『いらない?』
『水澤さんの目指すところは、この九州の奪還だからですよ』
『その通りだ、さすがは伊藤ちゃん、なら、そろそろ始めるか』
『そうですね、了解いたしました』
『なら、もう茶番は終わりってことっすね?』
『まあ、最後の茶番は、今から行く戦闘指揮所で最後さ』
通信主任 小山:あと朗報があります。チョ・ソンミンとヤン・ジヌ隊が半島へ引き上げた模様、長期間、我々と対峙し続けた為、休憩させる為に呼び戻されたと推測されます。
『ソンミンとヤン・ジヌが居なくなるなら、それこそ好機到来だな。敵は霧島を抜けなかったとはいえ、確実にこちらを侮り惰気を見せいる
主力級の2部隊を霧島から撤収させたなら、尚更に敵は隙だらけになっているはずだ。』
今こそ敵を追い払うチャンスだと水澤は思った
通信主任 小山:ご武運をお祈りします、お気をつけて。
水澤は通信機を置きテントから出て
空を見上げた
『綺麗な月だな。』と言って歩き出す
煌々と照らす月は、安莉さんやまりあさんも見ているだろうか?
同じ空の下、離れていようとも心は常に傍に居るよ
そう水澤は思いながら
15中隊の戦闘指揮所に入り
開口一番
『もう我慢なんねぇ!いつまでも夢みたいなこと言ってんじゃねぇよ!
寝言は寝て言え間抜け!隊長補佐ってのは、飾りか?』
『落ちつけ水澤!今は持久戦がベストだろ?』
『来もしないアメ公に期待し続けて引きこもり続けて
そして味方の死体増やし続けるしか出来ん無能に用はない!伊藤、榊、皆を集めろ!』
『待てって言ってんだろ!313さえ敵の手中にある、無謀だ!』
『313?、そんなに土地が大事か?この九州よりも、たかが高地のひとつやふたつにこだわり続ける気かよ』
『313は重要拠点だ』
『なら、わかった!その313も含めて取り返してやる
これなら文句ないよな佐脇中尉』
『俺が言ってるのは、そう言うことじゃなく...』
『あんたと問答するのは時間の無駄だ、失礼する』
此処での最後の茶番劇を演じ外へ出る
ーー高地奪還戦ーー
煌々と照らす月灯りの下
水澤を筆頭に約500名の兵士達は敵の勇躍する闇の中へ向かった
『孫子十三篇「軍争篇」
・名将は敵に鋭気がある時を避け、敵に惰気を見たら攻めるものである
・整然と進軍してくる敵や堂々とした陣を正面から相手に戦ってはならない』
と水澤は孫子の兵法の一説を皆に話す
その言葉の真意を理解した伊藤勇二は
『敵は今、この九州の大半を支配下に収め
我々が、わざと微弱な反攻を繰り返して来たことで
勝利は目前にあるものと思い込んで、我々を侮って士気が緩んでいます。
今この好機を逃したら我々は今後、二度と九州を日本国を取り戻すことは出来ないでしょう!今こそ、進むべき時です!』
『その通りだ!みんなよく聞いて欲しい
皆の知っての通り、この作戦には "俺の我が儘" も含まれている
にも関わらず、こうして集まってきてくれて、ありがとう。』
『俺達は水澤さんに何処までも付いて行く覚悟が出来てるっすよ?だから気にせんで下さい』と榊が言い
伊藤は『そうですよ、気にされないでください
我々は我々の意思で、貴方について行くと決めたんですから』とにこやかに答え
『そうか...なら、やることはひとつ!覚悟は良いか!野郎共!!総員突撃!!』
水澤達の部隊と伊藤が率いる部隊が、ふた手に別れて
闇に紛れ313高地の敵に夜襲をかける。
敵襲はないだろうと気が緩んでいた北韓軍の前に、いきなり現れた水澤達の奇襲に虚を突かれた北韓軍は混乱状態に陥り同士討ちになったりと乱れに乱れる
『勝機は俺達にある!!全力で進め!!』水澤の怒鳴り声
それに呼応するかのように高地奪還を目指し薄く照らす月灯りの下で
男たちの熱き思いと未来を切り開こうとする魂を込めた銃弾が敵をなぎ倒す
そして、銃声と怒号が交差し血で血を洗う白兵戦を展開
313は幾度となく奪い合いを演じた高地
地形と陣地構成は、だいたい頭に入っている
『川中は俺の後方、左から狙撃しながら進め!』
『了解!』
『榊は、三上と右前方より前進し敵を凪ぎ払え!』
『了解っす!』
『黒木、森村は俺を中心に扇形に、沢田は川中の援護にまわれ!』
水澤は矢継ぎ早に指示を出す
その指示をに従って彼らは動き敵を凪ぎ倒し進む
ドッドッドッドッっと機銃の音
『前方に重機銃!トーチカの中っす!』と榊が言う
皆、的にならないように尾根に張り付き身動きがとれなくなる
水澤は『こんなところで足踏みしてる場合じゃねぇんだよ!』と言うと『トーチカに向け手榴弾を一斉に投げろ!』
『ここからじゃトーチカの中まで届かねぇすよ』
『手榴弾を目眩ましにして俺が突入する!』
川中が『失敗したら...』
『そん時は俺が死ぬだけだ!四の五の言わずに、さっさと投げろ!』そう言って身を乗りだし水澤はトーチカに向かって走る
榊は『全員、全力で投げ込め!絶対に水澤さんを死なすな!!』
榊の合図で、皆が手榴弾を投げる
ドカンドカンとトーチカより離れ場所で爆発し土煙が立ち込める
土煙の中へと水澤は消えてゆく
ガウン!!
水澤が三崎軍医から譲り受けた突撃制圧銃の銃声
敵の重機の音がしなくなり
『よし!みんな!上がってこい!尾根の反対側で頑張ってる伊藤達に負けるなよ!行くぞ!』
トーチカを潰したあと、さらに上の指揮所がある場所へと敵を撃ち殺しながら登る
ギャァーと悲鳴に似た声で敵が掴みかかってくるのを水澤は詩音からもらった刀で切り伏せる
敵味方の距離感がベルトのバックルを掴める程に接近して掴み合いになったり
殴り倒したりと超接近戦になる。
川中は後方から狙撃し的確に敵を撃ち、敵味方の距離を離そうと懸命に撃ち続ける
乱打戦にもつれ込んだ榊や黒木、森村、三上は着剣した99式歩兵銃で刺し殺したり銃床で殴り倒したり奮戦する
水澤はひときわ鋭さを増して刀をふるい敵を切り倒しながら突撃制圧銃を撃つ
高地頂上付近に達した頃、肩口に装備してある無線から15中隊の藤井中尉の声
『高地奪還の援軍に来たぞ』
『心強い援軍に感謝申し上げます!』
『堅苦しい言い方はよせよ』
『なら、伊藤達の援護を頼む!回り込んで来る敵の横腹に突っ込んで阻止してくれ!』
『了解した!』
『総員かかれ!北韓野郎をぶちのめすぞ!』
藤井は自身の直属の歴戦の勇士のライフル隊を率いて高地戦に参加
詩音の命令を受けた第1中隊の池内隊も参戦し戦いは水澤らの優位に進む
バンバンバンバンと次々と川中は狙撃し前方にいる水澤に少しでも敵が寄り付かないよう撃ち続ける
その川中の援護を沢田が行いジリジリと敵の司令部壕へ前進して行く
あと少しで敵の心臓部に刃を突き付けられると思った水澤は『俺達が1番乗りして制圧するぞ!』そう言って頂上の司令部壕に突入する
司令部内には指揮官とおぼしき人物とその副官らしき人物が水澤の目に映る
血まみれの刀を指揮官らしき人物に切っ先を向け投げると同時に
ガウン!!
バンバンッ!!
と続け様に銃声がして
水澤の投げた刀が肩口に刺さり頭を撃ち抜かれて指揮官らしき人物は絶命し
榊、黒木の放った銃弾も胸部に命中
そして、副官らしき人物は川中の狙撃に頭部を撃ち抜かれ死んだ。
あらかた片付いたと思い
頂上から制圧完了の信号弾を撃つように沢田に指示し
沢田は外に出て
313高地頂上から鮮やかなレッドの信号弾が打ち上がる
奪還戦開始から僅か1時間程の出来事だった。
北韓軍、死者570名、高地が奪われて逃げ場をなくし投降した北韓兵330名
水澤達も少なからず死傷者を出したが、高地奪還は圧倒的勝利に終わった。
その日、霧島の大地も空も真っ赤に燃え上がっていた
男たちの魂の炎が....確かに燃えていたのだ。
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最終話 四つ葉のクローバー へと
――つづく――
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【お知らせ】
本日は、2本更新しましたが、まだ体調が万全でない為
今後の更新は週に1話、多くて2話程度の亀更新になると思いますが、御理解と御了承を下さいますよう
お願い申し上げますm(__)m