THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑪―3
現在更新済みのストーリーの挿し絵の表記と内容部分でおかしな表現と脱字の修正を行いました。
その為、改稿の表示がついておりすが
基本的なストーリーの流れは変わっておりませんので
予め御理解と御了承をお願い申し上げますm(__)m
9月16日(土) 廃音。
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第11話 Death match ③
霧島防御陣地に移ってから、最前線の第15中隊で水澤は時折、15中隊の衛生班のテントを訪れては
『奪っては奪い返すのに、いい加減飽きた』と
水澤は不機嫌そうに吐き捨てる
その言葉に『相変わらず我が儘なんだから』と里山星看護官は少し困った様子を伺わせながらも、いつものように優しく答える
慈悲と仁愛に満ちた柔らかな笑みをたたえ、白銀の雪のような真っ白で艶やかな肌
美形の三崎、稲葉両軍医に負けぬ優しさの滲む可愛らしさと美しさを兼ねた容貌が水澤の視界に入る
里山看護官の横から
『水澤君の我が儘はバンガローに居た時から変わってないわよ』と稲葉華凜軍医が
少し悪戯っぽい口調で言う
街を歩けば男が振り返る程の容姿を持つ稲葉軍医
美女とは?と問われたら華凜の名を上げる者も居るだろう
霧島防御陣地に移ってから変わらず続いている "ここでの日常" の風景は
水澤の我が儘に優しく里山看護官が答え、稲葉軍医が悪戯っぽい口調で答える
時折、それに三崎希望軍医が参加し笑顔の輪を作っていた。
水澤の主治医でもある三崎軍医は第1医務隊所属だったが、水澤の主治医として15中隊へ転属という形で此処に居る。
『失礼します』キリッとした顔つきで榊淳也が入ってくる
そして、水澤の側に行き何かを伝える
この光景も霧島防御陣地での日常風景だ
水澤は榊の報告に『そうか』とだけ答え
ありがとうと礼を言う
――中隊本部――
『いい加減、我慢の限界が近いかと..』
『だが、勝手な行動はするなよ伊藤』
『佐脇さん、僕じゃなく、水澤さんのことです』
『ああ、アイツか』
『ええ、だいぶ苛ついてらっしゃる様子ですし、彼に同調している方々も多いので』
『暴発するようには見えないがな』
『暴発というか、暴挙に出られる程、彼は愚かじゃないですよ』
『まあ、ヤツの言うことは、いちいち的を射ているからな...どうするよ?梶さん?』
梶原隊長は落ち着いた様子で
『"まだ時期尚早だ" それに、ここ最近の敵の動きは以前より活発化している』
第15中隊隊長 梶原大尉と副長の西野副長、隊長補佐の佐脇和馬、副長補佐の藤井一弥そして中隊第2小隊の第1分隊長の伊藤勇二は水澤の作戦の決行時期を思案していた。
ーー衛生隊舎ーー
『水澤、死んだか?』
いつも通りに、ふざけた様子で佐脇が来る
『もちろんッスよ中尉!』
『なんだ、生きてんじゃねぇかよ』
『生きてて悪かったな!』
『相変わらず元気そうで何よりだよ
あ、そうそう、そろそろ本気出せよ、俺を含め伊藤達も待ってっからさ』
『ああ、わかってる』
『あらかた人数は揃えたし、伊藤にも人を集めてもらった』
『伊藤勇二ね、あれは頭が良いからな、役に立つ』
『まあ、西野秘書官のお気にだからな、アイツを見てると時々目の前にお前が居るのかと錯覚する』
『俺は眼鏡はかけてねぇぞ』
『冗談に決まってんだろ!お前と伊藤とでは、似ても似つかなねぇし
お前は前に出るタイプだが、伊藤は密かに裏で動く縁の下の力持ち的タイプだからな』
『あれは、かなりの策士だよ佐脇中尉』
『ああ、ウチの副長にもひけはとらない才覚がある』
佐脇と会話しながら水澤は、ここに来た初日のことを思い返していた
最前線の霧島防御陣地に3万人近い戦力、さらに後方に5万人
8万の戦力を有しながら何故、反攻に転じないのかを水澤は梶原大尉に詰めより
梶原大尉や佐脇中尉らは、戦力対比を考えても、敵の方が上回っていて、悔しいが今は持久戦をし、敵の数を減らし
時期を見て反攻に転じるべきであると主張した
それに対し水澤は『そんな弱腰だから敵にいいようにされ九州を蹂躙されてんだろうが!』と言い怒鳴る
実のところ、このやり取りは、ここに来てから幾度か繰り返されている〝茶番劇〟だった。
此処には、岡村田中将が送り込んで来た軍監が居る
それに、以前、前哨戦基地に援軍を送ろうとした時に
岡村田の横やりが入った経験をふまえて
水澤達は、あえて言いあいを演じたり、苛立ったふりをしたりし、本命の作戦については語らないようにして、岡村田に悟られないようにしていた。
〝あの作戦〟を岡村田に知らては邪魔される可能性がある上に、一歩間違えればヤツの手柄にすり替えられる可能性があったからだ。
あくまでも、あの作戦は参謀部主導の作戦として、期を伺い
一大反攻作戦に出る算段でいる
そして、西野詩音秘書官の手柄とし参謀部の復権を狙う目的もある
それゆえに、作戦が悟られぬように茶番劇を演じて来た。
話は遡るが水澤は密かにジョンデの亡骸を引き取った詩音と月島零参謀次官に同行し
詩音が安莉達民間人の安全を確保することを後方の岡村田に提案し、その提案に岡村田は難色を示したが
詩音は〝自分は参謀総長の名代〟で指揮権及び決定権は私にあると岡村田を怒鳴りつけ、見事に詩音は民間人の安全と移動を実現させた。
水澤が詩音に同行した目的は自身の目で岡村田という男がどのような人物かを見定めたかったのだ
水澤から見た、岡村田という男は、伊藤が以前に言っていた小心者ではなく
何かを密かに企む老獪な人間に見えた
その為に15中隊で言い合いしたりと茶番を続けている
水澤が15中隊で茶番劇をしている間
詩音は霧島防御陣地の司令部で、反撃の狼煙があがるのを待ち続けていた。
【西野詩音イメージver2】
ーー米国、日本戦時政府公館ーー
日本に核を使われたという事実
米国のホワイトハウスは北韓人民共和国に、日米安保に元ずき報復核攻撃を考えたが、自国に被害が出ていないし、駐日米軍にも被害が出ていない
完全なる核兵器を持つ国同士が戦争になれば核の応酬になり、相互確証破壊は目に見えている
米軍の血を流さずに日本より撤収しグアム、サイパンに戦力の駐留をさせている
自国民の支持は得られない戦争は、ヘイデン大統領は望んではいない。
そのため、密かにホワイトハウスは自国の危険を回避するため独自に密約を交わしたのだ。
仮に、この戦争に参戦しても得る物は無い
自国民の生命を危険にさらす道より国益になるモノ
それは、軍事介入しない代わりに、日本国に武器を提供するというビジネスを考えている。
日本側としては、米軍の参戦を熱望し続けたが、結実には至らず
国連に告発しても、常任理事国であり、北韓を支援している、中、露の反対で国連軍の派遣すら実現不可能な状況だった。
そんな中、岸本首相は、危険度は増しても米国からの武器提供を拒み続けていた。
そのように自国民を危険にさらしてまで意固地になり続けたのは
ヘイデン大統領への当てつけのつもりだったが、正しい選択でないことは岸本自身もわかっている
岸本は『前大頭領のクランプ氏だったならと思うがね』と懐かしむような感じの言い方をした
山口喜久参謀総長は『クランプ氏は米国では、一定の支持を今も保っておりますからね。』言い
確かに、クランプなら核の暴挙を許さずに、速やかかつダイナミックな決断をしただろう
いや、クランプ政権が続いていたなら、彼を恐れるキム・ウンジョンは戦争に踏み切らなかったかも知れない
『ヘイデン大統領になって米国は腑抜ふぬけたよ
アフガンせよ、ウクライナにせよ
ダイナミックかつ大胆な行動はせず、自身の保身だけを考えている』
『私も同感であります。もし、クランプ氏だったらと考えたことは幾度かあります。』
『今まで、米軍の参戦を望んで交渉して来たが、どうにもならん。』
『我が軍としましては、先日の限定的勝利とはいえ、反攻の足掛かりになる事象をきっかけに、今までの方針の転換を総理大臣閣下にお願いしたく思います。』
『方針の転換か...』
『総理大臣閣下!迷っている、1分、1秒の間に我が国の国民の尊い命が失われております!ご決断を!!』
山口参謀総長は強い口調で決断を迫る
『背に腹は代えられぬ。わかった。』
『では、私の案を進めてもよろしいですか?』
『致し方ないだろう、貴官に全て任せる』
『ご英断に感謝申し上げます閣下。では、準備がありますので、これで失礼します。』
山口参謀総長も本命は米国の参戦だったが、日本国に残る戦力が日に日にすり減り消耗しきる前に
なんとしても、武器弾薬を携え国に戻らねばならない
山口参謀総長は心の中で待っていろ、我が同胞達よ
生きていてくれよ、西野秘書官、月島次官
私は必ず君たちの元に戻る。と思いながら、米国防大臣との交渉を開始
米国側は、待ってましたと言わんばかりの歓迎ぶりに
やはり、米国は国益優先の死の商人国家だと、山口参謀総長は感じた。
『まったく馬鹿げた話ですね閣下』と第二秘書官の永嶺優華が言う
『この期に及んでは仕方ないことだよ』と山口参謀総長は答え
『戦争をビジネスとし、人命軽視にも程があります!日米安保の一方的な破棄に近い、北韓との密約と言い
米国は真に同盟国とは思えません!』普段は物静かな永嶺は怒りを露にし『日本が潰れた場合、次の目標にされるのは米国だと言う危機感もない!』
『核兵器の保有国同士が戦争に踏み出しては、日本どころか世界が滅ぶよ。』
『ですが閣下!』
『今は武器弾薬を日本に持ち帰ることだけを考えようではないか。』
もうそれ以上言うなと言った感じの言葉に永嶺は、自国は自身の手で守るのは国家として当たり前のことで
米国をあてにして防衛力の抜本的改革が行われなかったツケが今回の戦争に影響していると言いたかったが
その言葉を飲み込み
『空路での日本への帰還は危険が伴う為、※21式特殊潜水艦、翼竜、祥竜の2艦にて武器弾薬を積載して帰国する方がより安全でしょう。』
【※日本国が秘密裏に開発した超大型潜水艦で、最大深度は他国の潜水艦より深く潜ることが出来き潜航航行も米国西海岸から日本までなら軽くやってのける長大な航続距離を持ち、世界最速とも言えるスピードを誇る特殊潜水艦】
『そのようにしよう。』
太平洋戦争での敗戦後の統治が米国だったからこそ繁栄をみた
だがしかし、今回の戦争に負けてしまえば、我が国の国民は北韓の奴隷として惨めな未来しか残らない
経緯はどうであれ、この戦争に負けるわけにはいかない
山口参謀総長は、そう思いながら、米軍から寄与される武器弾薬の日本への手配等に忙殺される日々をおくる。
その頃、霧島防御陣地では、反攻に向け着々と準備が整いつつあった。
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――つづく――
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