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THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story ⑩―5

挿絵(By みてみん)


THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story


第10話 Moonlight その⑤



泣き崩れた女性が落ち着きを取り戻したとき私は『さっきは少し言い過ぎて、ごめんね。

だけど、水澤さんが、これまでずっと私達を守ってくれてたのは事実だから言わずにはいれなかったの』

その私の言葉に小さく頷き女性はその場を離れて行きました。


戦争という非情で不条理な現実が在って

その女性自身も、その犠牲者にかわりないと思う

普通に暮らしてたのに、戦争という非日常が私達を否応なしに引き摺り込み

当たり前が当たり前でなくなり、普通だと思ってた日々が普通でなくなって

そして、近親者の命を奪い去って、その現実を受け入れることは本人にとって、凄く辛いことだと思う


だけど私達は、それでも、その現実を嫌でも受け入れなきゃならない


『自分が同じ立場だったら、やっぱり誰かを責めてしまっちゃうと思う。』と

まりあちゃんは言って女性の背中を見送る


『立場が違えば考え方だって違っちゃうものね。』そう私は答えて、まりあちゃんと共に寝泊まりしている体育館へと戻る


ガヤガヤと雑音めいた誰かと誰かの話声

此処に来てから耳にしてる、変わらない日々の光景


その光景が変わる出来事というか、突然の移動が第15中隊の隊長補佐、佐脇さんから告げられる


佐脇さんが言うには『本日、只今をもって、此処を離れ霧島方面へ移動するので荷物をまとめ校庭に集合していただきたい!』


なんで移動するのか?何故、最前線の霧島なのか?という疑問に



『此処は昨日の戦闘により、より一層危険度が増した

その為、霧島方面へ移動した後は鹿児島市内へと皆さんは移動することになります。

道中の安全確保は我々が護衛しますのでご安心を。』


そう告げると早く荷物をまとめるよう佐脇は()かす


そう言えば、さっき校舎裏で水澤さんは西野さんにミンスとか言う人が此処に向かっているって言ってたような

その敵が来るから安全な場所への移動なんだと私は思った。



私とまりあちゃん以外の、ここに居る民間人は佐脇に多少、噛みつきはしたものの荷物をまとめて


校庭へと向かう



挿絵(By みてみん)




――霧島へ――


校庭に集合すると、そこには、佐脇さん達が応援にか駆けつけて来た時のトラックの他に元々ここに残されていたトラックが整然と並び待機していました。

校庭に集合した私達に佐脇さんは矢継ぎ早にトラックに乗り込むよう言い、私達は言われるままに乗り込む

学校を出発する時にトラックに乗り込んだ時、私は水澤さんがグランドに居る姿を見つけ、私は水澤さんの名前を呼んだ

水澤さんは振り返ってはくれなかったけれど

その代わりに背を向けたまま拳を作った右手を高くあげて私の声に応えてくれた。


そして、一台、また一台と校庭を出て行く

あまり乗り心地の良いわけではないけれど、もっと安全な場所へ行ける安心感がありました。


私達を乗せたトラックは霧島の第15中隊の戦闘指揮所(ピスト)に着き、今度は車体の上部に機関銃を装備されている兵員輸送用の装甲車に乗り換えて、月島零(つきしまれい)参謀次官がその車列の先頭車両に乗り込み、更に南下して

私達は鹿児島中央会館という場所に避難することになりました。


そして、あの学校で兵士になった方達に『諸君らには此処の警備をお願いしたい』と月島次官は言い

彼らを警備隊とし、その指揮は月島次官が担当することになっていました。


私とまりあちゃんは、水澤さんの姿を探したけれど、水澤さんの姿は此処にはなく

たぶん学校に残ってミンスって人と戦うと思ってたけれど


私はあえて月島次官に、水澤さんが居ないことを告げると

月島次官は少し困った顔をして『水澤くんは、霧島防御陣地に残っている』と言ったので

私は、学校に残り敵と戦うものだと思っていて、それをわかっていながら聞いた答えが霧島防御陣地に居ると言う答えに少し混乱しました。


まりあちゃんは『何故?水澤さんだけ霧島に残らなきゃいけないんですか?』と月島次官に詰め寄る


『水澤くん自身の意思で残ったんです。』


それを聞いた時、私の脳裏に、ジョンデと戦う前に水澤さんが語った言葉を思い出す

水澤さんは、この戦争を終わらせたい。そう言っていた

私がうつむき、その場景を思い出してると


『水澤くんは、徴用された民間人の代表として、そして自身が、その事を推し進めた責任を全うしようとしている、そんな彼の気持ちをわかってやって欲しい。』と月島次官は私達に言って『彼を此処に連れ来れず申し訳ない』と言い頭を下げて謝罪してくださいました。


水澤さんの意思も想いも知る私にとって

例え誰が引き留めようとしても無理なことはわかってる

それぐらい、水澤さんの意思は強く固い


仕方ないと言う言葉と、それでも、やっぱり一緒に居て欲しかった思いが私の中で、ぐるぐると廻る


せめて、説明ぐらい自分でしてくれたら良いのに

他人の口を借りるなんてズルいよ...水澤さん。



挿絵(By みてみん)




――月灯りの下で――



『せめて何か言ってくれてたら良いのに...』


『言ったら言ったで、私やまりあちゃんが止めると思ったんじゃない?』


『それは、まあ、そうだけど。』


『だから、何も言わずに残ったんだと思う』


『うん。そうだね。』


『水澤さんの想いは、この前に話したけど、やっぱり一緒に此処にって思っちゃうよね』


『っていうか、一緒が良かった』


『だけど、水澤さんは〝この戦争〟が終わらない限り兵士として戦い続けるんだと思う』


『水澤さんには無事に戻って来て欲しい。』


『大丈夫!必ず戻って来てくれる!そう信じて待ってるしか出来ないけどね。』


『うん。私達は信じることと無事を祈ることぐらいしか出来ないもんね。』


そう言う、まりあちゃんは、どことなく寂しそうな表情をしてる


私も同じ気持ちだった。


だけど、水澤さんは霧島防御陣地に残り戦う道を進む


いつだったかなぁ、西野さんが言ってた 〝私が太陽で水澤さんは月のよう〟だと


私は太陽になんてなれないけれど、水澤さんが進む道を照らす太陽が在るなら

その道の先は、光り輝く未来で在って欲しいと思いました。



煌々と照らす太陽と、闇に迷わぬように夜道を照らす月


今、私達を照らすお月様は離れた場所に居る水澤さんの頭上にも、お月様は輝いているはず


例え離ればなれになっても、逢えなくても、姿が見えなくても同じ時代、同じ蒼空の下で生きてる


これまでずっと私達を守ってくれて、これから先も私達を守ってくれて、そして

いつの日か、この戦争が終わる時

水澤さんに私もまりあちゃんも笑顔で逢えると信じて

水澤さんに〝生かされた命〟を大切にしなきゃいけないと私は思いました。


たぶん、まりあちゃんも同じ思いだったと思います。




THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story


最終話 手のひらの中の希望 へ



――つづく――



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[良い点] 誰にだって本当の気持ちを表に出せない時がある、 しかしそれには理由があってその理由と一緒に全てが伝わる時もある
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