THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑪―2
誤字の訂正中にミスって消えてしまいましたので
再アップさせていただきました。
ご迷惑をおかけしてすみません。
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第11話 Death match ②
――作戦会議――
ミンスが此処へ向かっていることを知って
校長室だった部屋に水澤や詩音、佐脇、藤井、伊藤、榊、川中、黒木、森村、北見、三上ら主だったメンバーが集まり
対ミンスについて話し合う
『ミンスは戦車も伴って、此方に向かっています。』と伊藤が15中隊からの情報を話す
『何両の戦車が来てる?』と藤井中尉が聞き
『情報では、4両です。』と伊藤は答え
『戦車が4両に、ミンスの部隊員が800名....』と佐脇中尉が言い
『踏み込まれたら、ひとたまりもないな。』と藤井中尉が言う
『先制攻撃するしかない』と水澤が口を開く
『先制攻撃ですか?』と伊藤が聞き返す
『そうだ!先制攻撃するしかない!』
『今度ばかりは、数の劣勢を優位に働かせることは...』
『だからといって、手をこまねいていたら、踏み込まれて全滅するのがオチだろ』
伊藤と水澤のやり取りを聞いていた西野詩音が『何か策があるの?水澤くん』と水澤に聞く
『敵はジョンデの戦死を知り此方に兵を送り込んで来ている
敵にとって予想外の出来事だったはずだ』
『まあ確かにそうだな』と佐脇中尉は腕組みし言う
水澤は『ジョンデを殺られて頭に血がのぼってるなら一気に此方を踏み潰すつもりだろうが、俺がミンスなら此処には未知の部隊が居ると思って慎重に進む』と自身の意見を述べ
詩音は『ミンスはジョンデ以上に頭のきれる人物だから、その可能性は充分あり得るわ』と納得したように答え
『だからこそ、敵の攻撃態勢が整う前に先制攻撃を仕掛けて混乱させる』と水澤は言い
『戦車はどうする?』と藤井中尉が聞く
『藤井さんや佐脇さん達が援軍ついでに爆薬を此処に持って来てくれてる
その爆薬を仕掛けて足を止める』と答えたあと
『伊藤、ミンスが経って戦車を伴ってるなら、進むスピードはそんなに早くないよな?』
『おそらくはミンス本隊は戦車を先頭に進んでいると思いますが、前方に先兵を出して向かって来てると思います。』
『その先兵の数は少ないはずだ、本命のミンスさえ叩いてしまえれば後はなんとかなる。』
伊藤は少し思案したあと
『今朝、霧島を経って戦車を先頭に進んでるなら、本命の到着は遅くとも明日の明け方、早くても日付が変わるころには到着するかと』と答える
『あんまり時間がないな』と佐脇中尉が言う
水澤は『どのルートが最短で此処に来れる?』
『俺達が通って来たルートが最短だ』と言って佐脇中尉は地図を広げ指を差しながらルートをなぞる
『その途中にある)(のマークはトンネルか?』
『ああ、あまり広くも長くもないがな』
『そのトンネルを爆破して封鎖して、中に閉じ込めてしまえれば戦車だろうと何も出来ない』
伊藤は『もし、敵が違うルートを通った場合は封鎖出来るものがありませんよ?』と水澤に言う
『だったら、嫌でもトンネルに誘き寄せるしかない』
『誘き寄せるって言ってもどうやる』と藤井中尉が聞き
水澤は『追っ手がかかるなら適当に暴れてやればヤツらの方から姿を現すさ』と答える
『お前?まさか?』と佐脇中尉と藤井中尉が聞くと
『そのまさかだよ、俺が囮りになり敵の目をトンネル方向に引き付ける』
『ちょっと待って水澤くん、ミンスはジョンデとは違うわ
そんなに簡単に誘いに乗らないし、さっき貴方が言ってように慎重に進んでくるはずよ』と詩音が言うと
『なら、黙って殺られろってのか?』と水澤は言う
伊藤は『他の方法を考えましょう、ミンスは一筋縄ではいかない相手です。』
水澤は少し苛立ち『今こうして考えてる時間に刻一刻とミンスは近づいて来てんだぞ!トンネル誘致が無理なら、力技でぶつかるしかねぇだろうが!』と怒鳴る
『多勢に無勢な上に戦車相手に生身でぶつかるのは自殺行為です!』伊藤も苛立ちを隠さずに水澤に言う
『くそ!打つ手無しかよ!』と黙って聞いていた榊が言う
詩音な『だからといって、此処に敵を近寄らせるわけにはいかないわ。』と言って水澤を見る
その視線に気づいた水澤は『なら、ムカつくけど、これしかないな』
『何か他に良い策でも』と詩音が聞き返す
『策というより、撤退だ。』
『撤退?』と一同は驚いたように言う
水澤は『無駄に戦って消耗するぐらいなら、ここをもぬけの殻にして逃げるしかねぇだろ
勝ち目のない戦いに意味はねぇからな。』
水澤の本質的な部分は守る戦い
無謀な戦いは避けておきたい本音が出た瞬間だった。
水澤は『詩音さん、貴女は参謀総長の秘書官、そして今は、参謀総長の代理人、いわば名代のような存在だ
撤退命令を出して民間人もろとも霧島方面へ撤退させろ。それ以外に手はない』
伊藤は水澤の意見に賛成の意を示すように『悔しいですが、ここは戦いを避ける方が得策だと自分も思います。』
『逃げるが勝ちか。』と藤井中尉が言うと佐脇中尉は
『仕方ねぇさ、ミンスとやりあって勝つ見込みねぇならな』と少し残念そうに言う
佐脇、藤井両中尉は『西野秘書官、ご決断を。』と言って詩音を見る
詩音は頷き
『罪なき命を失わせる訳にはいかないわね
わかったわ、参謀総長に成り代わり命を下します!
総員、民間人を護衛し霧島方面へと移動を命じます!!』
『了解!』と言って佐脇中尉、藤井中尉らが詩音に敬礼し
それに詩音は返礼する
詩音の返礼を受け手を元に戻し、佐脇達は部屋を出て行く
『戦って叩き潰してやりたかったなぁ..まあ、でもタダで引き下がる気はねぇよ』と水澤は言い部屋を出て行く
タダで引き下がる気はない?
また何か企んでるのね?水澤くんは。
とはいえ、勝ち得ることが出来るなら戦いの選択をしたけれど
此処を危険にさらしてまで戦って負けることは許されないこと負けたら全てが終わる
そのことは、水澤くんが一番わかってることでしょう
今は我慢の時よと詩音は思う
〝無理に行った作戦は必ず失敗する〟
大邱へ辿り着けなかった詩音の教訓でもある
――出発――
ぞくぞくと荷物を抱えて民間人が校庭に集まり
佐脇に促され
トラックへと分乗してゆく
水澤はその光景をただ見ていた
すると『水澤さん!』と安莉の声が自身の後ろから聞こえる
水澤は振り返えらず、右手に握り拳を作り、上に高くあげて応える
その様子を見て『何かおっしゃらなくても良いんですか?』と伊藤が聞く
『別に良いんだよ何も言わなくても、わかってくれるさ』そう言って煙草に火をつけ『そんなことより、霧島に着いたらやるべきことがある』と伊藤に言い
『まあ、今生の別れにならないようにしないとですね』と、少し悪戯っぽい口調で言う
『こんな糞戦争で死んでたまるかよ!伊藤、お前も死ぬなよ!お前が居ないと困るんだからな!』と言い
伊藤の顔に、ふーっと煙草の煙を吐きかけ悪戯する
伊藤は煙を手で払い『死んでやるつもりはないので、ご心配なく!』と言い『一本貰えますか?』と水澤に言う
『煙草吸うのか?』と聞くと『たまにです。』と答え
水澤から煙草を受け取り火をつけてもらったあと
ふーっと水澤の顔に煙を吐きかける
『てめぇ!それが狙いだったのか!』と水澤が言うと『やられっぱなしじゃ格好悪いじゃないですか?』と言って笑う
こいつめっと水澤は思ったが、そういえばジョンデの件を詩音さんに聞かれた時に吹き出して笑い、詩音さんに怒られてたことを思い出し
伊藤ってヤツは意外に面白い可笑しい部分もあるんだなぁと思っていた。
水澤は、伊藤が言った【やられっぱなしは】の発言に
『なら、やられっぱなしにならないように少し手伝ってくれ。』と言い
佐脇達が援軍に来た時に持って来た爆薬を指差し
『何もせずに逃げんのも格好悪いだろ』と言い笑う
『確かに違いありませんねぇ~っ』と言い
榊、川中らと手分けして、校内にトラップを仕掛け
最後に出発するトラックに乗り込み
学校を中心にぐるりとまわり霧島へと向かう。
夕刻を過ぎ夜陰に紛れ静かになった校舎
ミンスは、もぬけの殻になっていることに気づいていない
詩音達はミンスの慎重さに懸け、最短ルートを選び南下した
ミンスはトンネルでの、待ち伏せ攻撃を避ける為に別なルートを辿っていた
ミンスの慎重さが、幸運を呼んだのだった。
そして、もぬけの殻の校舎にミンスは先遣隊を送り込み、その先遣隊は校舎に仕掛けられたトラップに掛かり校舎もろとも吹き飛ばされ、ほぼ全滅し、これを聞いたミンスは四方八方に偵察隊を出すも、水澤達の捕捉は出来ず
学校を中心に円陣状に仕掛けられたトラップ掛かり
多数の死者を出す結果になった
ミンスは、此処には日本軍は居ないことを悟り霧島へ引き上げるのだった。
ミンスに見つかれば、ひとたまりもない危険を回避し霧島防御陣地に詩音らが辿り付き
最前線の霧島に辿り着いた日に詩音は岡村田民間人を南下させる旨を伝えたが、岡村田は難色を示した
詩音は自分は参謀総長の名代であり、全戦線の指揮権ならびに命令権は自分にあると岡村田に言い
次官の月島零に命じ
更に南の鹿児島中央会館を避難所として開設させ民間人を移動させた。
霧島防御陣地の第15中隊には、軍属として水澤だけが残り
他の軍属になっていた民間人は鹿児島中央会館の警備という名目で移動させ
第15中隊長は、水澤と共に戦って来た榊達を自身の部隊員に編入し
第15中隊、第1小隊、第5分隊を編成
水澤は、その分隊員として霧島防御陣地で敵と対峙することになるのだった。
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――つづく――
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