THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑩ ー 5
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第10話 Reload ⑤
ーー山口喜久参謀総長ーー
水澤達はイ・ジョンデとの戦闘を終え、ジョンデの遺体をトラックの荷台に収用し学校へと戻る帰路に着く。
>>>米国サンフランシスコ
米国の偵察衛星の画像と、その説明が米国戦争戦略研究所から、ある一報が山口参謀総長の元に届けられる
参謀部付け、第二秘書官の永嶺優華は慌ただしく書類を抱えて、山口参謀総長の元に向かう
コンコンと扉を叩き『永嶺、入ります』と言うと、扉の向こうから『許可する!入りたまえ』と返答があり
永嶺は部屋に入り敬礼をした
その敬礼に返礼を山口参謀総長は行い『どうかしたのかね?』と永嶺に聞く
『米国戦争戦略研究所より、情報が来ました』と言うと、山口参謀総長の前に書類を差し出す
山口参謀総長は書類を受け取り目を通す
内容と添付されている写真を山口参謀総長は目を見開き確認する
『この情報は、間違いない情報か?』と永嶺第二秘書官に問う
『米国は、今回の戦争に関与する気は依然としてないですが、我々に提供してくれてる
情報は確かなモノだと思います。』
『そうか。』と山口参謀総長は言い
これまでの日々で明らかに挙げた効果はない自分に腹を立てていた。
米国は密かに北韓と不戦条約を結んでおり
国連安保理に日本側が提出した国連軍の派遣に一応の賛成票を投じてはいたが
ワシントンの動きは不活発で、北韓側を裏で支援している、中、露への働きかけは皆無に等しかった
その為、常任理事国でもある二国は反対票を投じて
武力介入の阻止を続けている
米国にいる山口参謀総長と大田原康貴統合幕僚長は、有効打を打てず苦々しい日々を送っていた。
本国に残った自身の第一秘書官の西野詩音と参謀次官の月島零の動向は脊振山の戦い以降、掴めてなかった不安や焦りも苛立ちの原因だ
だか、米国戦争戦略研究所からの情報提供は、しばしば受けており
いままでは、日本側の苦戦の情報が多かったが今回の情報は、これまでとは確実に違っていた。
チョ・ソンミンの片腕とも言える、イ・ジョンデの戦死
その戦闘に勝利した場所と衛星画像による米国側の見解が記された書類
山口参謀総長は席を立ち、大田原統合幕僚長の居る部屋へ永嶺秘書官を伴い向かう
『参謀総長、山口、入ります』
『同じく、第二秘書官、永嶺、入ります』
『許可いたします、お入り下さい』と優しく柔らかな声と同時に扉が開く
『お二人して何事かしら?』と大田原統合幕僚の第二秘書官の井上香織が開く
『米国戦争戦略研究所より新たな情報です』と永嶺が言うと『どうせ私達日本側の苦戦の情報でしょう』と井上秘書官とは別の女性が言う
彼女の名は、赤城彩花という人物で主席秘書官という秘書官の中でトップに居る人物だ
大田原統合幕僚長は『とにかく聞かせてもらおう』と言うと山口参謀総長に座るように言う
山口参謀総長は『とりあえず、こちらに目をお通しください』と言って書類を渡す
大田原統合幕僚長は書類を受け取り内容を読むやいなや『なんたる快挙』と言うと『快挙?』と井上、赤城両秘書官は尋ねる
『あのイ・ジョンデが死んだ』と山口参謀総長が言う
イ・ジョンデは、前任の参謀総長を死に追いやった憎き相手
そのジョンデの戦死は限定的な戦果とは言え
参謀部、統合部、共に事の重要性は認識している
北の使える刃の1つが無くなったことは霧島防御陣地の戦局に影響を及ぼす
『あのジョンデがねえ...』と赤城秘書官は言い
『詩音の作戦?』と井上秘書官は聞く
『誰が策を練り、ジョンデを討ったか?わからないが、おそらく西野君と月島次官が関与していることは間違いないだろう』と大田原統合幕僚長は言い
山口参謀総長を見る
『西野秘書官は前任の佐藤閣下の懐刀でありましたから、おそらくは彼女の発案かと』
『それに詩音は私達と同じようにレンジャーの訓練を受けてもおります』と主席秘書官の赤城が言う
大田原統合幕僚長は『佐藤君の無念を晴らしたか』と静かに言い立ち上がる
『こののちは、今回の勝利を足掛かりとして必ず不利な状況をくつがえし、我が軍は勝利するであろう』と力強く言い
今一度、ワシントンに掛け合うと言う
『ワシントンに掛け合うだけ無駄です閣下!そんなことより、やるべきことがあります!』と主席秘書官の赤城が言う
『まあ、こうなったからには、赤字覚悟で買うしかないわね』と井上秘書官が続け様に言い
『なんの支援もしない国から買うのは、ちょっと腹が立つけれど仕方ない』と永嶺秘書官も言う
『ならば、自分が岸本総理の尻を叩いてまいります!』と山口参謀総長は言い
『戦争はビジネスチャンスでもあり、米国にとって自国の利益に繋がる...致し方なかろう。』と大田原統合幕僚長は言って、山口参謀総長に『頼んだぞ、山口君』
『重々承知しております。では、さっそく』そう言って永嶺秘書官と共に部屋をあとにする。
渡米して無駄骨に終わったら西野秘書官に何を言われても仕方ないが、キミが命懸けで国を守ろうと戦い
ジョンデを討ったことを無駄にはしないと山口参謀総長は心に誓っていた。
ーー次への1歩ーー
ジョンデを倒した水澤達を
チョソンミン隊のリョ・ミンスという人物が霧島防御陣地から前哨戦基地へと向かい移動を開始
その敵の動きを察知した15中隊と1中隊はミンスの足を止めようと待ち伏せをする
それをミンスも察知し、待ち伏せている1、15中隊に少数の部隊を差し向け
自身の本隊は監視の網をすり抜けて前哨戦基地方面へ向かっていた。
ジョンデを倒した水澤達は、学校の入り口を通り抜けグラウンドにトラックを止めて、順次、トラック降りる
榊達が降りると校舎から誰かが飛び出してくるのが見える
走って来ていたのは、赤坂安莉、そして、その後ろから西野秘書官と三崎軍医の姿も見える
赤坂安莉は水澤が降りて来たのを見た瞬間に水澤の名前を呼び近寄ろうとする
水澤は『近寄るな、血で汚れる』と言いながらも安莉に笑顔を見せる
水澤の体には敵兵の血を浴びた為に、ところどころ血まみれになっている
そんな水澤の姿を心配して安莉は大丈夫ですか?と尋ね
水澤は敵を返り討ちにした時に付いたモノで自身はむきずだからと言い笑う
そのやり取り中に西野詩音は水澤の名前を呼び、その後ろから、今度は三崎軍医が、怪我人は居ないかと尋ねてくる
水澤に代わり佐脇中尉が怪我人も死人も居ないと答え
いや、怪我人なら居ると藤井中尉が言って水澤の手首を持ち上げた時
ジョンデのゴツいツラを殴ってこうなったと佐脇中尉が説明する
その手を見た安莉が、もう一度『本当に大丈夫なの?』と聞くと、大したことじゃないよと水澤は答え
水澤は、殴ってる間にジョンデが勝手に死んだと言い
榊と川中に、なあ?と言った感じで話しかけ
榊は、まさかの展開だったと言い
川中は、水澤がジョンデに斬りかかり、自身ごと狙撃しろという水澤の指示に躊躇したことを謝る
そんな川中に水澤は気にするな、結果オーライだと言い
西野秘書官は伊藤に事の子細を聞くと、伊藤は殴り倒されたジョンデの死に様が可笑しかったらしく
思わず吹き出してしまい、西野秘書官に怒られている
水澤の手を見たら一目瞭然だと、伊藤に代わり藤井が答え
それを聞いた水澤は、西野に向かって手をフリフリして見せて笑う
三崎軍医は、水澤の手を捕まえ、手に付いた血を拭いながら、医務室に行くよう水澤を促す
水澤はそれに応えるように歩き出し、西野秘書官の隣で一旦、足を止め
『これで終わりじゃないけれど、前任の参謀総長の仇は討てたかな?』とし、に聞く
『仇どころか、それ以上の価値があるわ』と答える
『向こうの荷台の中にジョンデのバカが乗ってる、まあ、くたばってるけど
煮るなり焼くなりご自由に』と悪戯っぽく笑いながら言い校内へと向かう。
詩音は、とりあえず確認しようと思い、もう一台のトラックへと歩き出す。
ジョンデの遺体とおぼしきモノがあるが、水澤に酷く殴られた為に顔の判別が出来ない
だが、詩音は『次は佐藤閣下に殴られるなさいジョンデ』と言い
少ない戦力で勝利して見せた校内へと入って行く水澤の背中を見つめる。
確かに水澤君の言うように、これで終わりじゃない
この勝利を足掛かりに次を始めなければならないし、この国から、九州から敵を追い落とす、大きな第一歩になったと詩音は思っていた。
この戦いを制した彼ら
今までは、ただ、がむしゃらに、ぶっ放すだけなら直に弾は尽きてしまう
本気の魂を込めた弾丸を、再び心に再装填し直し、更なる戦いへと彼らは立ち向かう
こじ開けろ!ブチ壊せ!
其処に何が在るか?言ってみな?
約束もない保証すらない
其処に在るのは【自分と言う名のPRIDE】
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第11話 Death match へ
ーつづくー