THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story ⑩―2
THE LAST STORY >Moon crisis< 赤坂 安莉 Anri Akasaka Story
第10話 Moonlight その②
朝方に水澤さん達が敵と戦う為に仕掛けたトラップが爆発し
水澤さん達が敵と戦う為に外へ出て行ってから私は水澤さんとのやり取りを思い返していました。
水澤さんは、命を賭けて、この戦争に立ち向かってる
此所に居る人達の命を守る為に、そして、私やまりあちゃんを守る為に
先ほどのやり取りで、水澤の本心を知って止めどない涙と共に〝何故?水澤さんじゃなきゃならないの?〟という疑問が生まれる
戦争さえなければ普通に生きて行くはずだったのに
普通に生きれたのに
これまでのことを思うと、出逢ったその日から水澤さんの戦いは始まっていたんだと私は思った
水澤さんが言った『戦争さえなければ、輝かしい未来を送っただろう命』
それは、水澤さんだって同じだと私は思う
だけど、残酷にも運命は水澤さんを戦場へと向かわせてしまってる
私のせいなのかも知れない。
あの日、あの場所で出逢いさえしなければ、違う未来が在ったはず
だけど、過ぎ去った時間を巻き戻すことなんて誰にも出来ない
if もしも そんな問いは無意味だってわかってても考えてしまう
そんな風に思っている思考を吹き飛ばすように
最初の爆発音とは違う別な音が
ズーンッゴゴーッと響く
そしてカッカッカッカッカッと甲高い金属音
爆風でカタカタカタと窓枠が振動が鳴る
私は窓の向こうに立ち上る土煙りを瞬きするのを忘れたように目を見開き見つめ続けてました。
ーー願いーー
水澤さん達が校舎を出てから、どれくらいの時間が経っただろう
未だに鳴り止まぬ銃声と爆発音が聞こえてる
ふと校庭に佇む兵士でありながら戦闘不参加者達の方に視線を移すと
!?
校庭の向こう側の通りから数日前に此処を出て行った
見覚えのあるトラックが近づいて来て校庭内へと入ってくる
校舎の出入り口に近い場所に停まったトラックの荷台から数人の軍服を着た人物が降りて来て
校庭に居る兵士に何かを尋ねているよう
尋ねられた兵士が校庭の外を指差し、何事かを告げると再びトラックへと乗り込む
そして、あわただしくトラックが出て行った後
降りて来たトラックには乗り込まなかった漆黒の軍服を着た兵士が校舎内へと入って行く
その姿に、私は見覚えがあった霧島防御陣地に向かった西野詩音さん
カッカッカッカッとヒールが廊下を鳴らす足音が私の居る部屋の前で止まる
そして、扉を開き入ってくる
『あら?こんなに所で何をしてるの?』と西野さんが私に訪ねてくる
私は、水澤さん達が出て行く前の経緯を話すと『そう、わかったわ』と言って椅子を窓側に向け座る
『こんな時に、私はじっと待ってなきゃならないなんて歯がゆいわ』と言った
私にというより独り言に近い言葉にも聞こえたけれど
私もですと私は西野さんに言う
『あなたは、兵士じゃないんだから当たり前でしょう
あなたも戦うなんて言い出したら、彼が水澤くんが困るというより怒るわよ。』
きっと、そうだと私も思う
水澤さんは〝自身の命と引き換えになる〟かも知れない未来を私やまりあちゃん、そして此所に居る全ての人に残そうと戦っているのだから私は待つことしか今は出来ない
『そんなとこに立ってないで座りなさい。15中隊の隊長補佐の佐脇くんと副長補佐の藤井くんが、自身の小隊から力のある兵士を率いて援軍に来たんだから、心配いらないわよ』西野さんは落ち着いた口調で言い
ソファーを指差して私に座るように促す
15中隊からの援軍が、イ・ジョンデとの戦いに加わったとしても、私は例え姿が見えなくても、窓の向こうで戦う彼らを見守っていたいと思って
ここで待ちますと答えて窓の向こうの轟音と炎、土煙の中に居る水澤さん達が無事に戻ることを願っていました。
そんな私の雰囲気を察したかのように、西野さんは無言で私の隣に立ち
同じように窓の外を見つめる
ーー命の手綱ーー
陽が高く昇る頃合い
阿鼻叫喚の中で敵味方が入り乱れた乱戦が続いている
まだ鳴り止まない銃声や爆発音が戦いの激しさを物語っているように感じる
どうか神様、私の元に、私達の元に水澤さんを戦っている彼らを無事に返してください
私はそう願い祈り続けました。
命の手綱を握る運命が、手綱を離さすにつなぎ止めてくれることを信じて
私も西野さんも無言のままで立ち続けていました。
水澤さん達にとって、この戦いは、まだ序盤戦にすぎない
この先には、もっと激しい攻防戦が待ち構えていることを、この時の私にはわかりませんでした。
この時、私は、ただひたすらに無事を信じて祈っていました。
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ーつづくー
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