THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑩―3
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第10話 Reload ③
紛れ込んでいた北韓が送り込んでいたヤツの亡骸を水澤は校庭の入り口に放置し
校内へ戻り
西野秘書官が使っていた部屋に向かう
そこには、赤坂安莉が居た。
水澤は安莉に近づいて『どうして此所に?』と聞く
安莉は『此所に来れば水澤さんに会えると思って』と答える
基本的に寝所は医務室、それ以外は、だいたい此所に居ることを安莉は知っていた。
『なら、ここから、さっき亡骸を置くのを見てたのかい?』と水澤は聞く
『見てたというか、窓の外を見てたらみたいな...』と安莉は少し戸惑いつつ答える
『俺のことが怖いかい』
『いいえ、怖くないです』
と答え安莉は言葉を続ける
『あの日、壇上で水澤さんが言ってた言葉
恨むなら自分を、そして戦争という時代を恨めと言った時、正直、なんでそんなこと言うんだろう?
なんで反対しないんだろうって思いました』
『まあ、そう思われても仕方ないけれど、今という時に
何に怒りや恨みをぶつけりゃ良いか?わからないだろう?』
『確かに、そうですね。』
『戦争なんか起こらなかったら、普通に生きて行けた連中だし
過去を思う時、太平洋戦争で生きたくても生きれなかった命が沢山失われた
生きていたなら、輝かしい人生を送ったかも知れない人々
そんな過去があって、今という時があって
同じように、生きてたら輝かしい未来を人生を送れるはずの人間が今、戦争に身を投じている
独りよがりかも知れないけど、俺はそんなヤツらに希望という輝かしい未来を残したいと思ってる
この糞戦争で生きれなかった命を少しでも減らしたいし
この戦いの終わり日に、赤坂さんや森下さんにも希望という未来を残してあげたい
そうすることが、俺の生き様だと思っている。』
水澤の本心を知った安莉は、言葉に詰まり何か言いかけた時
水澤はさらに自分の思いを話す
『この九州から敵を追い払いそして、半島へ行き
この糞戦争を終わらせる
それが、俺の役割で使命だと思ってる
戦争が始まるまで、糞みたいな人生だったし、自分は居ても居なくても、どうでも良い人間だと思ってた
だけど、貴女と出逢い、榊や川中達と出逢い
俺の中の何かが変わって行って今がある。』
貴女と出逢いという言葉に安莉は涙が溢れ頬を伝う
その涙を、水澤はそっと優しく拭い
『俺には俺の、そして安莉さんには安莉さんの人生がある
その人生が、必然か偶然かはわからないけど、あの日に交わり今があると思う
人は誰かの為にと、言いながら自分の為に生きてる』
水澤は、そっと優しく安莉を抱き寄せ
『せっかく拾った命だ、無駄にならないように、しっかり安莉さんの人生を生きて下さい。』
その言葉は、あの日、キャンプ場でも聞いた言葉
安莉はぎゅっと水澤を抱き返し
『死なないで、一緒に生きて下さい。』
そう言うと水澤の胸に自身の顔をうづめ泣きじゃくる
水澤は優しく安莉の頭を撫でながら
『この糞戦争で死ぬ気はないよ』と答えて
しばらくの間、二人は互いにぎゅっと抱きしめあっていた。
ーー校舎入り口ーー
『糞つまんねーなって顔に書いてあんぞ榊 』
入り口の壁にもたれながら川中が言う
そんな川中を見やりながら外を指差し
連中を見てると糞つまんねぇ気分にもなるだろ?と言い
かすかに風に乗り聞こえる雷鳴のような砲爆撃音に耳をすましつつ "15中隊の援軍"の方はどうなった?と川中に聞く
水澤さんが、上手く手配したさと答え
まあ、なにわともあれ援軍は望めそうだと言う
そうかと榊は答え
窓の外のにわか兵士を指差し連中より "まとも"なヤツがくる分なんとかなるだろ
と言い
川中も違いねぇやと答え笑う
ーー霧島防御陣地――
佐脇、藤井両中尉以下、戦闘員10名
看護官 5名 通信員 1名 の編成で霧島陣地を出発する
この事に対し岡村田から援軍の派遣はならないと言われたが、援軍という形がダメなら
"看護官の派遣の護衛" という名目で行けばば良いと言う
佐脇の発案で戦闘員の派遣に結びつけ、西野秘書官は、それを決定して自身も前哨戦基地に援軍に行く佐脇らに同行し向かうことにした。
ーー前哨戦基地ーー
佐脇中尉らの出発を知り
榊達は安堵したが、いつ敵が此処へ攻めてくるか?がわからない状況下であり
前日の水澤の行動により "スパイ" は処分したとはいえ
昨夜は水澤と榊、伊藤、川中の四人で校庭入り口付近を見張っていた
闇に紛れうごめく北韓軍兵士5名を見つけ攻撃し4名の敵を撃ち倒し、そのうちの1人にヤツの亡骸を引き取らせ、ソイツに手紙を渡しメッセンジャーとして生かして帰した
その時、その北韓軍兵士は〝カムサハムニダ〟(ありがとう)と言い来た道を戻って行った
『カムサハムニダねぇ、お礼言われたら野郎を殺しにくいじゃねぇかよ』と水澤は言って笑った
『まあ、でも、手紙の内容を読んだジョンデに殺されるかも知れませんけどね』と伊藤は言う
『また会うことがあったとしても、戦う以上は容赦はしねぇけどな』と水澤は言う
『あの手紙には、何を書いてあるんすか?』と榊が聞くと『ありったけの文句と、死にたくなけりゃ白旗上げて投降しろってこと書いてあるって言うか、韓国語で伊藤くんに書いてもらったけどな、俺は韓国語はわかんねぇからよ』と言って更に笑う
『自分もっすよ』と榊も言って笑う
ーー戦火の中へーー
霧島方面から風に乗り、かすかに聞こえる遠雷に似た砲声に耳をすましつつ
水澤は今朝仕掛けたトラップに敵がかかったら
例え15中隊が到着してなくても戦うぞ!
了解!と榊達は答え
あいつらは?と笑いながら窓の外の、にわか兵隊は?と聞く
良い子はおうちでお留守番
まあ、連中が良い子かどうかは知らんがなと答え水澤も笑う
違いねぇと榊は言い
窓の外を見つめていた。
ドッゴォーン!!
窓の向こうに響き渡る轟音と巻き上がる土煙り
『かかったか...』
『のようですね』と伊藤は答え
『行くぞ!野郎共!!』と水澤が言う
『了解!隊長!!』と榊が言うと
『隊長はお前だろ!』と川中が榊に突っ込みを入れる
『いや、隊長は伊藤上等軍曹だ』と水澤は言う
外から聞こえた轟音に目を覚ました 安莉が窓際に立つ 水澤の傍に寄る
安莉の顔を見つめ
心配すんな、すぐに終わらせて戻る
......安莉は無言のまま水澤の腕に自身の腕を絡める
その腕を振りほどき
安莉を真っ直ぐ見つめ
『俺を俺たちを信じろ!それだけで充分だ!わかったな?』
安莉は無言のまま小さく頷き
『水澤さん気をつけて..他のみなさんも...』
『了解!お姫様!』
と皆、同時言い
『行ってくるゼ!』
と水澤は安莉に言い水澤達は部屋を後にする
医務室に使っている部屋の廊下を通りすぎようとした時
医務室から
『どんな怪我だろうと私が治してやる!だから死ぬなよ!お前たち!』
という三崎軍医の声を背に受け
了解した!答え廊下を抜けグラウンドへと駆け抜ける
『俺達が万が一にも敵を撃ち漏らしたら、敵は此所に雪崩れ混んでくる
確実に敵の足を撃ち抜き動きを止めたら腹と頭に一発ずつ撃ち込み必ず仕留めろ!いいな!』と水澤は言う
了解!と全員が答える
水澤達はジープに乗り込み
敵軍が居るであろう場所へ向かっていく
『15中隊達が到着するまで持ちこたえるしかないですね』
と伊藤が言うと
なんなら15中隊の出番すら無くしてやろうか?と水澤は言う
『水澤さんらしいですね』
と伊藤は言い眼前に立ち上る土煙りとその奥に立ち上る炎を目に捉えていた。
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ーつづくー
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