THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑩―2
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
『__ためらうな』
『恐れるな__』
『___殺せ!』
第10話 Reload ②
ーー惨劇の後始末ーー
最初の亡骸が校舎前に転がされて5日目
第1小隊長の伊藤勇二の命令で講堂に集められた兵士にされた民間人達
帯刀をしている水澤を中心に、伊藤、北見、榊、川中、黒木、森村、三上ら壇上に立つ
この中に"北韓の犬"が潜り込んでいることに気づいている水澤達は
今回も同じように不寝番についていた者に立つように言い
一人、一人と水澤は近づいて殴り
殴って倒れた、例のヤツの前に立ち睨み付けながら胸ぐらを掴み上げ無理やり立たせる
お前だよ!
いきなり、お前だと言われ胸ぐらを掴まれたヤツは『何が自分なんすかぁ?つか、手を離してくれませんかねぇ』
その言葉を水澤は無視し胸ぐらを掴んだままヤツを壁際まで押す
ドンッとヤツの背中が壁にぶつかる
『お前、脱走の事件があった日に脱走した連中と行動してたよな?』
『なんすかぁ?いきなり?言い掛かりはやめてくれませんかねぇ?』 とヤツは言い胸ぐらを掴む水澤の手を振りほどこうとする
そのヤツの振りほどこうとする力に〝やっぱり、ただ者〟ではないなぁと思ったが水澤も負けじと力を込め離れないようにし
『お前が不寝番をしてた時
他のは寝てたのは..お前が飲ませた睡眠薬のせいだろ?違ったか?』
『脱走の話と言い何の話っすかねぇ?身に覚えがねぇすよぉ?』
『なら、何故お前は不寝番につかなければいけない日に稲葉軍医に睡眠薬をもらった?それは何故か?後ろめたい何かがあるからだろ!
だいたい、お前が不寝番してた時の行動は屋上から丸見えだったんだよ!その行動を見れば誰が脱走を手引きしたなんてわかるんだよ!
知った上でお前に今一度聞くぞ!』
ヤツは屋上から見ていたという言葉にヤツの顔に明らかに動揺が走る
それを見て水澤は胸ぐら掴んでいた手をヤツの首が締まるように
グイグイと力を更に込める
『脱走を手引きし、他の不寝番二人に睡眠薬を飲ませて、ぎょうらしく騒いで..』
そう言いかけた時
ヤツは力をより一層強め水澤の手を振りほどき拳銃をホルダーから抜き水澤に向け
『さすがすねぇ、まあ、不寝番を交代させんで続けさせられた時点で変だとは思ってたんすけどね』とヤツは開き直ったように言う
『言い残すことは、それだけか?』と水澤は聞く
『日本人はどいつもアホばかりだ お前ら全員イ・ジョンデ同志に殺されて死ぬんだよ!このチョッパリ(日本人を侮辱する時に使われる言葉)共!』
そう言いヤツが水澤に向け銃爪を引こうとした刹那
ドスッと鈍い音のあと..床に大量の血が流れる
『誰が..アホだって? アホはテメェだよ!』
水澤が抜き放った刀はドスッと鈍い音と共にヤツの腹部から背中まで貫き
刃を腹部から抜いた瞬間..膝から崩れるように自身の血の海に倒れる
それでも震えながら銃を水澤に向けようとする腕を踏みつけ水澤は言う
『日本人だの北韓人だの南韓人だの知るかよ!
俺は相手が誰であろうと"俺がコイツは危険"だと判断したら...躊躇なく"殺してやるよ"』
腕を踏まれヤツの手から落ちた銃を拾い
『俺を含めて 此処に居る"連中にとって最も危険なヤツはなぁ...』
『お前だ!』
ガウン!!
頭を撃ち抜かれヤツは絶命した。
何故、コイツが此所にまぎれ込んだのかは憶測に過ぎないが、キャンプ場での戦闘してるどさくさ紛れに紛れ込んだだろうと水澤は思っていた。
そして、ジョンデの命令を遂行する為に
コイツは機会を伺っていた
コイツは工作員としては、あまりにも粗末なヤツ
というより、ただの使い捨ての駒として利用されたんのだろうと思う
水澤の行動は、他の人間からみたら、あまりにも残忍な行いに見えたかも知れない
戦々恐々としている連中に『さっき言ったよな?"日本人だの北韓人だの南韓人だの関係なく"危険と判断したら殺すと
他の連中も忘れるな.."同じ日本人だからといって身を守れる"と勘違いするなよ
俺が敵とみなしたら "確実に殺してやる"
甘えは捨てろ!自分の身は自分で守れるぐらいにはなれ
自分を守れないヤツが自分以外の人間を守れるわけねぇだろうが!』
そう言い刀を上から下に振り刀に付いた血を払う
『いやはや、さすがですね』と伊藤は言う
『やっぱ、水澤さんは、すげぇわ!』と榊は目を輝かせて言い
『そうだよな!みんな!』と川中や黒木達に言うと
皆、水澤を褒め称える
そんな榊達を見て水澤は
『バカ言ってんじゃねぇよ、お前は此処の第2小隊長で、伊藤、お前が1小隊長で、ここの指揮官的な立場だろうが!お前達二人が自信持って統率しろよ俺の出る幕じゃないくらいな...。』
そして、水澤は床に広がる血を刀の切っ先で指し示し
『人は生まれ、いずれは死ぬ
それが早いか遅いか..それだけだ』
そう静かに言うと、伊藤や榊達以外の他の連中を見て
『"お前らは何を怖れている"あんまり、バカだと、この糞戦争で死ぬ羽目になるぞ!
お前達の弱さの根元は、未だに〝自分たちには関係ない〟という思いと、自分自身の中にある〝恐怖心〟だ!
自分に打ち勝てなければ、他者に打ち勝つことは出来ないし、自分自身を守れぬ者が自分以外の誰かを守ることなど出来ない
お前らは、何をそんなに恐れている?
人は生まれ、いずれは死ぬと前にも言ったろ
死を恐れすぎなんだよ、敵云々を問うなら、こいつら自身の中の弱さこそが敵だと俺は思うがな』
水澤の傍らに立っていた川中が『人生なんざ元々、死ぬまでの悪あがきだろ〝誰かの為〟になんて死ぬんじゃねぇよ
残された〝誰かの痛み〟が解るなら尚更だろ?
お前が死んでも何も変わらない
だが、お前が生きて変わるものもある』この言葉は、彼らというより、悲しい過去を背負う榊にむけられた言葉だったのかも知れない
川中は、さらに言葉を続け『どんなにこの手が赤く染まろうとも 血は洗い流せる。そうやって生きて来たんだ俺たちは!』
だからこそ、立ち止まる余裕も時間もない、戦争と言う狂気に立ち向かうことが必要なんだと川中は思っている
『"この世は悪だろうが何だろうが最後に残るのは生きる意志の強い奴だ"
だからこそ俺は俺の為に生きて俺の為だけに死ぬ、それが俺の誇りだ
だが生き延びるさ 胸張って死ぬ為に』
水澤はそう言って、片手でヤツの亡骸を引きずりながら講堂を出て行くと、それに続くように伊藤達も出て行く。
先ほどの水澤の行動を目の当たりにし、怯えた目で震える者、吐き気をもよおし吐く者等々、反応はバラバラだった。
そして、水澤の行動は彼らの中に水澤という底知れぬ存在への恐怖心が植え込まれた。
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ーつづくー
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