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THE LAST STORY> B u r i a l <


榊と川中の二人の語られることのなかった埋葬された物語




THE LAST STORY> B u r i a l <


埋葬して来た過去がある。

瓦礫に消えたお前を俺達は忘れはしない。


挿絵(By みてみん)









―――――


ここに二枚の写真がある


一枚は時代に合わせた華美なブレザーを着た若者が咲き初めの桜の下で笑っている


彼らは、後世でこう呼ばれた『悲劇の世代』


もう一枚は、互いに背を合わせ腕組みしている二人の男性の前で中腰になり笑顔でピースサインをしている少女の写真


いずれの写真も『悲劇の世代』の年頃の人物




何故、悲劇の世代と呼ばれるのか...




第二次半島統一戦争において彼ら彼女らの世代は多くの命を散らして逝くことになる。


















第一次半島統一戦争(1950~1953)/(北韓名:祖国統一戦争)




202×年 第二次半島統一戦争勃発


北韓軍は再び38度線を越え南韓へ侵攻




電撃戦を開始し僅かひと月足らずで南韓の大半を占領


あまりの速さに在半島邦人の救出すら出来ず


政府は自衛隊の存在感の失墜と政権の失態を挽回すべく特例法をもって超法規的に自衛隊を国防軍に昇格させ半島への派兵を決定した




欧米各国は半島での有事に対し地域紛争とみなし不鮮明な対応をし


完全な型の核兵器を自国に使われた場合


相互確証破壊的破滅を呼ぶ為に交戦ではなく避難決議のみに止めていた




自衛隊の国軍化により日米間の安保条約は国内に外敵が侵攻して来た場合のみに変更され(後に廃止【米朝不戦中立条約が締結される】)


自国国力と日韓相互協力条約(軍事同盟ではない)の下で悲惨な闘い展開をしてゆく








圧力かけすぎて膨らんだ風船がどうなるかぐらいわからなかったのか!


制裁の結果が此れだ...参謀総長の佐藤優季 陸将は新聞を投げてよこす


ボリボリと頭を掻きながら....完全なモノを完成させていたのは知っていたが搭載能力まで手にしていたことは想像も想定もしてなかったなぁ...統合幕僚長の大田原康正 陸将は窓の外を流れる雲を見ながら言う




悠長なこと言ってる場合じゃないだろうと佐藤 陸将は机の上に拳銃をバンッと叩き置き




「このような時の為に鍛えて来た実力を無駄には出来ませんが しかし、あの日以来離隊する者があとをたたないのも事実です」




そう...佐藤の言うように開戦前も現在も離隊者が絶えない状態で


更には国軍化により離隊者の数が増え続けていた。








―――――




半島から一番近い立地にある福岡は第一波攻撃(開戦時)の攻撃以降も、二波、三波、四波と幾度も空襲を受け都市機能は低下


玄界原発に潜りこんだ北の工作員と交戦し全員を殺害






九州北部地方を管轄する第四師団は司令部を久留米に置き


半島派遣軍司令部を大宰府に置き


南韓の大邱へと、軍を派遣するも、大邱にたどり着けぬまま参謀総長戦死という結果だけを残した。




半島で北韓軍と交戦状態になった為


北韓軍は日本の港湾施設や、主要都市に対しミサイル攻撃と同時に宣戦布告なき悲惨極まりない一撃を列島に与えた


当時の政権は遺憾の意を強く言葉で表したが、それより在韓邦人の救出の失敗と遅れが日本国国民の政権支持離れを引き起こして安西内閣は総辞職し、新たに岸山内閣が発足




新内閣は超法規的措置で自衛隊の国軍化を行った前政権の方法踏襲しつつ、半島派遣軍の組織を防衛省に再度命じ


日本国は太平洋戦争以来の国難へ立ち向かうことになる。












―旅立ちの日に―


福岡のちょうど中央部に位置にある街にて...




卒業証書の入った筒を脇に挟み


晴れやかな表情で互いに写メをパシャパシャしながら和気あいあいと騒ぐ




その集団の中に、榊と川中は居た




榊と川中は、互いに背中を合わせ腕組みして、


ある少女と一緒に写真に収まる




榊淳也、川中陽二、共に18歳の春


本来なら、希望に満ちた春になるはずだった














― 大宰府訓練校―




榊と川中は志願兵として大宰府訓練校に入校




志願理由:国を救う為。




共に、ただ一言、そう書かれていた。






光りと乾いた風が、榊の頬を刺す。


榊は少し瞼を閉じる




瞼にあたった日光が瞼の内側を真っ赤に染める




あの日見た血の色のよう...志願を決めた日に自身の腕の中で消えた微笑みと温もり




福岡に対するミサイル攻撃


その日、榊と川中は福岡市内に居た。










―楢橋 香桜里 Kaori Narahashi―






騒々しい人の波をかき分け進む




けたたましいサイレンの音




いつも遅いんだよ!ミサイルが飛んで来た後に警報鳴らしても意味ねぇだろうが!




香桜里!俺から離れるなよ!




強く握った手を引き倒れた街路灯や電柱を乗り越え地下街の入り口に向かって走る




ゴォーーーーーッ!ヒューーーーーッ..ドッカーーーーン!








キャッ!






近い位置にミサイルが着弾し






繋いでいた手と手が離れる感覚












土煙が上がる、ガラスや壁の瓦礫が舞う












炎と陽光に照らされガラスの破片がキラキラと煌めき




それは鋭利な刃物となり降り注ぐ












香桜里!!












榊は自身の体に幾つかのガラスが刺さっていることを気にせず








榊は〝愛しき名〟を呼ぶ...








川中も土煙にむせながら立ち上がり


二人の名前を呼ぶ




榊は肩から手首の先へ血が伝う




点々と血の跡を残しながら榊は香桜里を探す




榊の姿を見つけ川中が駆け寄る




お前、大丈夫か?




自分のことより、香桜里をと榊は言う












ゴホッゴホッっと咳が聞こえる








榊と川中の視界に瓦礫に半分埋まる形で倒れて頭部から出血している香桜里の姿が見える






香桜里!






香桜里は少し苦し気に顔を声のする方へ向ける








今、助けるからな








香桜里の体に被さる瓦礫を取り除こうとする




小さな瓦礫だけじゃなく大きな塊のコンクリートに香桜の腰から下は埋まっていた




二人は力を込めて瓦礫を退かそうとするが、びくともしない




もういいよ...逃げて..お願い..香桜里は小さく震える声で言う






バカ言ってんじゃねぇよ!


二人はそう言い




二人で瓦礫をなんとか退かそうとする






その榊の腕に香桜里は手を伸ばし掴む




そして苦し気な表情を少し緩め微笑んだ






もういいよ...淳也... ありがとう。






香桜里の手が榊の腕から滑り落ち地に手が落ちる












――――




榊は閉じていた瞼を開く




自身の腕に感触だけが消えないまま






あの日を忘れることなどないだろう。







―楢橋志桜里 Shihori Narahashi―




香桜里の妹の志桜里です


高校ご卒業おめでとうございます!






榊!香桜里ちゃんの妹が来てるぞ




あの日、姉を最期まで見捨てずに居てくださり...ありがとうございました。




だけど、俺は助けれなかった。




志桜里は首を横に振る




もう良いんです




志桜里は微笑み榊と川中の腕を引き






写真を撮りましょうと言って自身の携帯を取り出す




近くの者に撮影を頼み






榊と川中は互いに背を合わせ腕組して立つ


志桜里は二人の前に中腰になりピースサインして微笑んだ。








お二人が志願した、あの日から数ヶ月








姉を空襲で失い、貴方達を兵士にした戦争は日々激化をたどり






私は今、アメリカ西海岸に居ます。




貴方達は今、何処に居るのですか?






運命とは、本当に厄介で、何処に答えを見つけたら納得できるのか、わからない旅路ですね。








THE LAST STORY> B u r i a l <




―おわり―



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― 新着の感想 ―
[良い点] 決して誰もが望まない別れを描いてしまう、 それが戦争というものではなかろうか
[良い点] そのような国際情勢でしたか。 現時点で米国が参戦していなさげなところを見るに、作中時間的にもう安保は廃止されているのでしょうか? 榊たちが被ってしまったような悲劇ばかり起こる日常となれば…
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