THE LAST STORY>Four-leaf clover< ⑨ー4
こちらでは新参の私の作品に
連日の三桁超えのPVありがとうございます!
また、星5の評価も御礼申し上げます!
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
第9話 It all for you その④
勝ち組、負け組という言葉がある
誰が言い始めたかは知らない
俺はその言葉が大嫌いだった
何故なら等しく平等なる死を持ち生きる者同士
同じ人間であることに変わりない
だが人は優越感に浸りたがる生き者
自身が優れていて自身以外は自身以下の生き者だと思いたがる
だいたい人を尊敬できてない奴ほど勝ち組だの負け組だの分けたがる
人の尊厳とは尊い命と共にあり
命とは時間だ
死に向かい一秒また一秒と歩み続ける
人の生き死にに勝ちも負けもない
生き方に勝ちも負けもない
ただの言葉でしかない勝ち組、負け組というバカげた言葉を吐くのは間違いだと俺は思う
だが、あえて‘’此処‘’では口にする
『お前逹は負け組だ』
何に負けたかって?
そんなもん言わなきゃわかんねぇのかよ?
‘ ’お前らは自分自身に負けてんだよ‘ ’
己に勝てぬ者が他者に勝てるわけがない
己を守れぬ者が他者を守れるわけがない
だから『お前らは負け組だ』
ーー直感ーー
夜中の交戦と翌日の失踪事件による死者と逃走者
あまりにも出来過ぎている茶番劇だと水澤は感じていた
先ず真夜中の交戦では指示待ちのはずの誰かが最初に発砲
そして、こちらに被害がなかったのに失踪し
近接で交戦し死傷者が出た
誰かの手のひらでころがされているように感じる
もしも、憶測に過ぎないがこの騒ぎは誰かの指示により引き起こされ
その誰かが此処に未だに潜んでいるのだとしたら
排除対象でしかないが、その対象者が今は掴めていない
だが、そのしっぽは必ず残っているはず
水澤は直感的にそう感じていた
伊藤逹の交戦騒ぎに校内は戦々恐々としていた
榊 淳也と川中陽二、黒木正人、森村賢二は校庭に行く
伊藤と北見をまだ追いかけて喧嘩する寸前の言い合い
相反する者同士といった感じで
どちらも引かない
そんな奴らを見かねた三上和寿伍長が間に割って入る
『お前らいい加減にしとけよ!今は仲間内で争ってる場合じゃねぇって水澤さんに言われただろ』
『だってよぉ気にくわねぇんだよなコイツら』
榊は尚も喰ってかかる
『俺も同じだぜ、コイツら訓練校時代から偉そうにしてただろ?
特に伊藤ってーのは、他の今村、中村、そして北見
志願第1期四天王だの抜かして威張ってやがったし
ちょっと人様より成績が良かったからって偉いんかよ?』
『そうそう、特にお偉方の腰巾着の伊藤はな、いつも人をバカした目で見てやがったろ?
三上だって同じように見られてただろうがよ』
『俺は別に四天王だの抜かしてんのってバカじゃねぇのってぐらいにしか思ってなかったゼ?』
『言っておきますが、僕らは別に見下したつもりはないんですが』と伊藤は苦笑いする
『西野秘書官に気に入られていい気になってだろうが!』今にも殴りかからないばかりの勢いで榊が言う
『とはいえ、今は水澤さんが秘書官様のお気にのようだけどな』そう言って森村は笑う
『違いねぇや!ザマーみろ
ボケカスが!』と続けて黒木が言うと
榊、川中、黒木、森村は嘲笑する
伊藤は『皆さんがどう思っていようと自分は自分の役割を果たすだけです』 と静かに言うが、その声色には明らかに怒りがこもっている
遠巻きに言い争いを見ていた水澤だったが
いい加減、争いを辞めさせなければと思い
彼らに近づく
『はい!終了!これ以上やるなら俺が相手になるが良いか?お前ら?』
『いや、だって...』言葉に詰まる川中と首を横にふる榊逹
『喧嘩は北韓軍とでしたよね?』と伊藤は水澤に聞く
『その通りだ、今は揉めてる場合じゃねぇし、喧嘩してる場合じゃねぇよ』
『今日の失態はお詫びしますが、この先は僕らはどうすれば良いでしょうか?』と伊藤は聞く
『今夜の不寝番も第1小隊が受け持ってもらう』
『それだけですか?』
『それ以上は何もねぇけど』
一瞬いぶかしげな顔をした伊藤だったが、騒ぎの罰と思い引き受けることにした
『あ、伊藤くん?』
『なんでしょう?』
『不寝番はお前逹以外にやらせろよ?』
伊藤は自分と北見が不寝番をやるものだと思っていたので驚いた顔をして聞きかえす
『だから、お前ら以外の人間にやらせろ
昨夜、1匹2匹殺したぐらいで威張ってた奴と、あとは...お前の人選で二人選んで不寝番やらせろ』
『昨夜、威張ってた方...名前は存じ上げませんが顔は覚えてますのでそうしますが
何故?その方を?』
『理由なんざ追々わかるさ、俺の勘が正しいならな』
『勘?』
その場の全員が不思議そうな顔をして水澤を見る
『とにかく、ソイツを不寝番につけろよ伊藤勇二
そして、お前らは寝とけ』
『水澤さん、そこは普通、ソイツとコイツらにやらせるべき..』
『良いんだよ、大将と副将様にはゆっくり休んでいただいて
とにかく、ソイツと適当に二人選んで不寝番にしとけよ』
『了解しました。』
ーー最初の生け贄ーー
水澤は今夜の不寝番の人選を一人指名し他は伊藤に任せた
その意図が何なのか、まだ誰もわからない
夕方を過ぎ、静かに暮れ行く
中央の不寝番の三名か見張りにつく頃
水澤は校庭を見下ろす屋上に上がり
中央を見張り続ける
新月の夜の翌日もまだ月明かりはなく
しっかり視認することができないが
水澤には自身の勘が正しいことを自信を持っている
必ず事がおきる
そう思っている
静かに日が昇る頃
水澤の目は確信に満ちていた
中央の不寝番の内、二人が寝ている
そして、ヤツは校内から中央の見張りに戻る
そして...
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
大きな悲鳴があがる
水澤はチッと舌打ちし『ぎょうぎょうしいんだよボケ!』と独り言を言い
中央の見張り場の先に目を凝らす
そこには....
真っ赤に染まっている何かが落ちている
その真っ赤な何かを見てヤツは悲鳴を上げたようだったが
少々芝居染みていると水澤は思っていた
ヤツの悲鳴が校内まで聞こえたらしく
何事かとぞろぞろと人が出てくる
そして、ヤツが手招きして真っ赤な何かを見た連中も悲鳴を上げた
面倒な連中だと水澤は内心思いながら屋上をあとにする
水澤が校内を抜け校庭につくより前に榊逹や伊藤逹が校庭から中央の見張り場に着いていた
『寝てただと?この糞ボケが!殺すぞ!』
『淳也くん?』
『水澤さん、コイツら見張り中に寝てやがったんすよ』
『あ、そう』
『あ、そうって良いんすか?それにアレ』
榊は真っ赤な何かを指差す
『やってくれたな。ソレって言ったら失礼かも知れないが、昨日、脱走し行方不明になってた奴だろ?伊藤くん?』
『たぶん、そうだと思います』
『やっぱり...』しっぽどころか胴体も掴んだと水澤は思った
『袋(死体袋)を』
水澤、落ち付いた声で言う
『誰か袋を持って来い!』
今度は強い口調で言い
それに応える形で森村が袋を取りに走る
榊と川中は不寝番中に寝てたという奴らを二人でシメ上げようとしている
『喧嘩は北韓軍とだ!』
水澤の声に二人が止まる
『でも、コイツら』
『良いから止めとけ、弱い者いじめする奴は昔から嫌いなんだよ俺は』
『弱い者いじめって..』
伊藤が軽く笑う
水澤の制止に二人は仕方なさそうに手を下ろす
本来ならキレられて当たり前の大失態だが
水澤は核心に触れたことで満足だった
『伊藤くん、今夜もソイツらに不寝番やらせろよ』
『よろしいので?』
『寝た罰だ』
『はぁ?まあ、そうおっしゃるなら、そうしますが..』
釈然としない顔の伊藤の傍により
伊藤だけが聞き取れる声で『訳がねぇと思ってんのかよ?』
その水澤の言葉に伊藤勇二の脳内に最悪のシナリオが浮かぶと同時に水澤の意図を理解した伊藤は『三名に命じます!今夜も不寝番の任務につくように!以上です。』
榊、川中、黒木、北見は不寝番自分たちがやると言う
『必要ない』
素っ気なく水澤は言い
共に校内に戻るように促す
『それにしても、お前?昨夜と今日とじゃえらく落差があるな?昨夜は北韓のヤツを確実に殺しただの
俺に良い格好させねぇだの息巻いてたくせに』
『こんなん見たら誰だって怖いに決まってんだろ』
『あ、そう、要するに、お前は昨夜は嘘ぶいてイキッてた訳だな?』
『違っ..違う!俺は確実に..』
『新月で真っ暗な中、ナイトゴーグルなしで敵を視認して撃ったのか?そうなら偉く目が良いんだなぁてめえは』
『近い位置で撃ったから見えてたんだよ』
『校舎の壁から2、3メートルは離れてたと思うが』
『それでもわかったんだ嘘じゃねぇ』
『あーはい、はい、とりあえずお前、今夜も無駄に良い目で見張りしとけよ!
じゃそう言うことで、お前の戯言に付きあうほど暇じゃねぇんだよ俺は』
そう言い、榊達を連れて校内へ戻る
ーー水澤の意図ーー
死体の処理を終えた森村も合流し
水澤は自分の意図を彼らに話す
『昨夜、俺は屋上でヤツらを見張ってた、まあ、新月でなんも見えなかったが、一つ見えたことがある
まず、他の二名は確実に寝てたが
あの野郎は明け方に校内から戻って来てズタズタに切り裂かれた遺体を見て悲鳴を上げた
おかしいと思わないか?何故ヤツは校内から出て来た?』
伊藤が口を開く『彼が言うにはトイレから戻ったら二人が寝ていて、その先に遺体があったと』
『要するに、あいつは見張りをしてなかったったってことですか?』と北見が聞く
『いや、見張りはしてたさ』
『なら、寝てるヤツ起こせば良いんじゃね?あの野郎、1人で見張りしてたと威張りたかったんじゃねぇだろうな』榊は今にも怒り殴りに行きそうな勢いだ
『違うよ、ヤツは周りの二人が起きてたら都合が悪いんだ』
『都合が悪い?』伊藤以外は驚いた様子で水澤を見る
『ヤツは何かを隠さなければならない、そして遺体の第一発見者でなければならない』
『刑事ドラマとかでも、よく言うじゃないですか?事件の第一発見者を疑えと』
伊藤は校庭で
訳がねぇわけねぇだろと言う水澤の言葉で何かあることを察していたし、その言葉で水澤の意図を汲みとっていた
『じゃ、ヤツが犯人ってことっすか?』
『まあ、直接ヤツの行動を見たのは校舎から出てくるとこだけだが、ヤツが一番怪しいのは確かだ
そして、ヤツ以外が寝てたのは、昨日の夕方に華ちゃん(稲葉軍医のこと)のとこにヤツが来ていたことだ』
『医務室に?』
『そう、医務室にな』
『野郎は何しに医務室に来てたんすか?』
『睡眠薬を貰いにさ』
『睡眠薬!?』
『なんかにおうだろう?不寝番につかないといけないヤツが睡眠薬なんざ貰いに来るなんてな』
その言葉に一同は驚きと同時に事の子細がわかって、心に怒りの炎が立つ
『という訳で今夜は俺達も屋上で徹夜するぞ!って言っても俺は夜通し見てて寝てないから今から寝るから皆も寝て夜に備えてくれ』
水澤はそう言い部屋を出て医務室に向かう
そこには赤坂安莉と森下まりあが居た
二人を見て見ぬふりをし水澤は二人の前を通りすぎる
何か言いたい表情の赤坂安莉は自身の手をぎゅっと強く握りしめる
二人の前を通りすぎた水澤は自身の寝床だと言って
以前、此処に運ばれて来た時に寝ていたベッドの中に入ると静かに目蓋を閉じ寝てしまった
『昨夜一晩中屋上で見張り続けていたから眠いんでしょう』
稲葉華凜軍医は言って『今日はやめときなさい』と安莉とまりあに言う
何故?見張りをと安莉とまりあは思った
『水澤くんなりに色々考えているのよ』と稲葉軍医は言い
『そうでしょう?』と寝ているふりの水澤に聞く
水澤は片目を少し開けてウィンクするような子供っぽい仕草をしたあと本格的に寝てしまった。
『いずれ、笑顔で語らい合う日が来るわよ、だから、二人ともそれまで、我慢なさいね
今は邪魔しちゃダメな時だから』
そう、これから始まる本当の悲劇を彼ら彼女らは乗り越えなきゃならない
それは長く辛い道のりかも知れないし、ひょっとしたら一瞬の出来事かも知れない
例え何があったとしても‘‘それぞれの生き様’’を貫くだけ
かの地まで遥か彼方
だけれど、きっと彼らは行くのでしょう
自分という名のプライドという旗を掲げて
THE LAST STORY>Four-leaf clover<
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――つづく――
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